人工知能/機械学習

人工知能が社会を変える ~人工知能と機械学習の挑戦

濱上知樹先生 横浜国立大学 理工学部 数物・電子情報系学科/工学研究院 物理情報工学専攻

第13回 人間の脳を超えるか?~いま最もホットな最新人工知能研究 ビッグデータ+ディープラーニング

ディープラーニングとは何でしょう。機械学習の一種で、ニューラルネットワークを何層も重ねたディープ・ニューラルネットワークを駆使し、より正確で効率的な判断を実現させる人工知能の技術のことです。

 

1960年代以来、人間の脳細胞(ニューロン)を手本に、人工的に人間に匹敵する神経回路を作ろうとしたニューラルネットワークの研究は、急速に進化してきました。それまでの信号が1対1でつながるとする単純ニューラルネットワークモデルから、より多層ニューラルネットワークへ。そしてさらに最近、より人間の脳にように深いニューラルネットワークを作り、これを学習する方法がわかってきた。それをディープ・ニューラルネットワークと呼びます。そしてそれを実現するのがディープラーニングです。人工知能研究の進展の結果、人間の脳ネットワークの思考を再現する方法がようやくわかってきたのです。

 

言い方を変えると、ディープラーニングは、私たちが人を瞬時に識別するときの視覚・聴覚などを総動員する脳におけるパターン認識と非常に似ているといえます。人を認識する際、人間は視覚や聴覚などを総動員して人を識別します。つまり(視覚)や(聴覚)といった複数の入力値を元に、階層的に人の全体像(身長や体格)を見て細部(目つきや声)を認識し、細部を見てはまた全体を認識しなおすというような、階層的で深いパターン認識のアプローチを採用している。その点が、従来のニューラルネットワークモデルと大きく異なると言えるでしょう。

 

とても重要なことは、ディープラーニングによって、人工知能の最大の問題「フレーム」問題を克服し、本当に脳に匹敵する人工知能ができる可能性が開かれたことです。これまでの人工知能は、学習の前提となるフレーム(思考の枠組み)は人が与えました。ディープラーニングではもはや人からの教育は必要ない。それどころか人が気づいていないことまで見つけてくる。無数の情報の中から意味や概念を自分で作り上げるのです。言い換えれば、機械は自らフレームを創り始めたといえます。人工知能は、人と機械の境界を越えようとしているのかもしれません。

 

この成果を支えたのが、今最もホットな学問、ビッグデータ+ディープラーニングです。膨大なデータを読み込み、自ら自律的に判断し、答を導き出す。ディープラーニングは、まさしくビッグデータ時代だからこそできた人工知能技術と言えるでしょう。

 

ビッグデータ+ディープラーニングは様々な事象の予測・判断・最適化に使えるでしょう。例えば、やがて膨大な情報を処理し、画期的な創薬を短時間で開発できるようになるかもしれません。アナリストに代わって市場経済の予測・制御ができるようになるだろうし、変電所・配電ネットワークの制御のように複雑な協調行動の学習にも利用できます。

 

そう遠くない将来できるだろうものに自動運転の車が考えられます。人間が行ってきた仕事の代行に使える用途は尽きそうにありません。そうなったとき人は何をすればいいのでしょうか。人工知能はどこまで進化するのでしょうか。

 

アメリカの数学者ヴァーナー・ヴィジンが提唱する未来思想にこんな言葉があります。「これからコンピュータが加速度的に進化し、機械はいずれ人間以上の知能に加え、人間の意識まで持つようになる」。

 

動画で知る「人工知能/機械学習」

◆ディープラーニングと濱上研究室で開発の救急搬送トリアージシステム

◆人工知能って何だろう?

◆人工知能の歴史

◆人工知能の未来

動画はこちらから

人工知能/機械学習の研究者・学べる大学

興味がわいたら

『人工知能は私たちを滅ぼすのか―計算機が神になる100年の物語』

児玉哲彦(ダイヤモンド社)

2030年に暮らす女子大生のマリが、卒業論文を書くために、アシスタント知能デバイス(A.I.D.)のピートと一緒に、AIの開発史を調べる旅という設定。第二次世界大戦中のナチスの暗号装置エニグマの解読機であるチューリングマシンから、パーソナルコンピューター、スマートフォン、クラウド、IoTを経て、人工知能が一般化する2030年までの100年の物語。進化の行きつく先は?

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『脳・心・人工知能―数理で脳を解き明かす』

甘利俊一(講談社ブルーバックス)

「人工知能が人間の知能を凌駕し、社会に大変革が起こる技術的特異点が2045年頃に訪れるという説があり、脳の研究者もこれを他人事とみるわけにはいかない。脳研究は、いまや社会全体の関心事である」と語る数理脳科学の第一人者・甘利先生が、脳の誕生、その働き、さらに心や文明、人工知能についてなど、脳の世界を解き明かします。

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『知能の謎 ~認知発達ロボティクスの挑戦』 

けいはんな社会的知能発生学研究会 (著)(講談社ブルーバックス)

目に見えない「知能」を、ロボットを介して目に見える形でとらえ、これを明らかにしようとする「認知発達ロボティクス」という分野の入門書です。身体を持ったロボットが外界と係わり合いながら知的な振る舞いを獲得(学習など)していく様子からは、単なるプログラムの振る舞いという以上の知能の本質に迫る様々な可能性がみえてきます。→続きを読む

『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』

フィリップ・K・ディック(ハヤカワ文庫)

古い小説ですが、人工知能についていまなお多くの示唆を含むSFです。人造とそうでないものの違いはなにか、意識や心、生命とはという根源的な課題を問いかけてきます。この小説が原作である映画「ブレードランナー」もおすすめです。

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『ミンスキー博士の脳の探検 ―常識・感情・自己とは―』

マーヴィン・ミンスキー (共立出版)

高校生向けの専門分野の入門的な書物。人工知能の父、ミンスキーの著作です。濱上先生がこの分野に入るきっかけとなったのは、同著者による『心の社会』。『心の社会』は高校生にはやや少し難しいかもしれませんが、この本は、かなり高い本にはなりますが、比較的平易で読みやすいです。今こうして考えている自分とはなんであるのか、誰しもが一度は持つ疑問に、人工知能の立場から答えてくれます。

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◆ここからは、直接、機械学習分野ではありませんが、関連するものとして紹介◆

『ポスト・ヒューマン誕生―コンピュータが人類の知性を超えるとき』

レイ・カーツワイル(NHK出版)

2045年、コンピュータの計算能力が全人類の知能を超えるという説がある。その先の急激に進展する未来を描く全米ベストセラーの邦訳版。遺伝子工学、ナノテクノロジー、ロボット工学の技術革命が鍵だと言う。600ページを超える大著、価格も高めだが、著者のレイ・カーツワイルは技術的特異点などで知られるフィーチャリストで、AI(人工知能)も含めて幅広い技術の進歩と未来について知ることができる。

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『2045年問題 コンピュータが人類を超える日』

松田卓也(廣済堂新書)

上記、ベストセラー『ポスト・ヒューマン誕生』の内容を一般読者向けの解説書として最近の話題までを含めて書かれた新書。著者は日本を代表する宇宙物理学者。

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濱上知樹先生プロフィール

1966年生まれ。セコム(株)IS研究所研究員などを経て、現職。現在の研究課題は、分散電源の知的制御、社会システムの進化とそのシミュレーション技術、認知障害者のためのグローバルコミュニケーションツールなど。

※神奈川県立柏陽高校サイエンスワークショップより