パーベイシブ・ユビキタスコンピューティング<情報学>
ウェアラブルセンサーを使ってアスリートの疲労度を予測~情報技術でメダリストを生み出そう
内山彰先生 大阪大学 基礎工学部 情報科学科
/情報科学研究科 情報ネットワーク学専攻

サッカー、野球を見るまでもなく、ITを使ったフォーメーション・戦術研究は、世界中で盛んになりました。これは1人1人のアスリートにつけるウェアラブルセンサーの進化が大きなポイントです。内山先生は、情報技術でスポーツを支援、メダリストを作る夢を熱く語りました。
いろんなセンサーが普及してきました。中でも私が注目するのは、センサーでスポーツを支援することです。例えば、サッカー。選手1人1人にセンサーをつけることで、選手の動きを詳細に把握したり、あるいはフィールドにカメラを設置した状態でいろんなデータを取ることで、戦術理解に使ったりすることができます。スポーツで勝つには、今や情報技術は絶対不可欠です。世界中で戦いは始まっています。
動画提供:(株)日立製作所
でもまだできていないこともあります。その1つが、怪我の予防です。というのは、限界ギリギリのトレーニングが必要となるアスリートたちは、そのトレーニングが行き過ぎると怪我につながってしまいます。一方、コーチはどこまでやっていいか見極めが難しい。
そこで、私の、ウェアラブルセンサーを使った、深部体温測定技術の研究を用いて、疲労度を測ることができないか。そんな声が現場のチームからかかりました。

深部体温とは、体の中枢の体温です。機械でいうと、エンジン部分の温度です。この深部体温を測るのには、体の中心や鼓膜の温度を計測することになりますが、そういう方法では運動中は計測できません。じゃあどうするか。私の研究では、腕時計型のデバイスを身につけます。加速度や心拍数などを測り、どれくらい熱が発生するか予測します。

さらにこれだけでなく環境中にもセンサーを配置します。例えば太陽がどれくらい照射しているのか、温度・湿度はどうなのかをリアルタイムで抽出することによって、体から熱がどれくらい出ていったか予測します。これらをトータルに考えることによって、深部体温がどう変わっていくのか推定することができるのです。
アスリートたちの深部体温が推定できれば、疲労度はどのようにわかるようになるでしょうか。例えば1日目と2日目とで深部体温に大きな差があったとします。同じトレーニングをしたのに、なんで差があるんだろうということから、疲労度を推定できることになるんじゃないか。まだ課題はありますが、この研究が情報技術でスポーツを支援する第1歩だと思っています。

私が今かかわっているものに「スポーツ研究イノベーション拠点形成プロジェクト(SRIP)」があります。医・工学・情報研究者が結集しアスリートと一緒になってメダルを取るという研究をしています。もしかしたら未来のなでしこジャパン、第2第3の錦織圭がこのプロジェクトから誕生するかもしれません。

司会者・落合陽一先生×竹川佳成先生の一言
竹川先生――スポーツ器具にはもうセンサーがどんどん付けられ、データが取れるようになってきましたからね。
落合先生――やがてロボットとかもスポーツに入ってくると思う。コンピュータロマンみたいなところを、東京五輪とかで、見せつけてやりたいですね。
竹川先生――そういう技術を使って東京五輪でメダルを取ることができたらすごいですね。
興味がわいたら
『スポーツ データ・コロシアム』(NHK BS1の番組)
データを使ってサッカーや野球など、プロ選手の強さのヒミツを徹底解析!情報技術が進んだから実現できた番組。
サッカーでは、GPSや画像解析により選手一人一人の位置を追跡したり、姿勢を把握。そのデータを分析することで、なぜあの場面でゴールが決まったのか、そのとき選手は何を考え、どのように身体を使っていたのか、これまで感覚でしか伝えてこられなかった強さのヒミツを、データにより明らかに示してくれました。ガンバ大阪の遠藤選手 vs. 横浜Fマリノスの中村選手の司令塔対決の分析、車椅子テニスの国枝選手の強さのヒミツなどが放送されました。見る機会があれば、どうやってデータを取得しているのか、そのデータをどのようにして分析しているか、に注目して見て欲しいです。
内山先生インタビュー
パーベイシブ・ユビキタスコンピューティングをリードする大学・研究者
※情報処理学会第78回大会 IPSJ-ONE講演より
<慶應義塾大学日吉キャンパス協生館藤原洋記念ホールにて>
⇒先生のプレゼンが見られます(IPSJ-ONEのページへ)
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