インターネットと運用技術<知能情報学>

自らを管理できる、生命のように見えるインターネット技術の研究開発に挑む

松本亮介先生インタビュー

ペパボ研究所 主席研究員兼シニア・プリンシパルエンジニア

◆先生の研究分野である「インターネットと運用技術」はどのような分野でしょうか。

 

当たり前のように使われているインターネットやWebサービスは、人々にはなくてはならない存在になりつつあります。しかし、その快適さや、裏でシステムを支えているのもまた人間であり、インターネットの普及と複雑化・巨大化によって、それを支える人々の負担はますます大きくなっていくでしょう。インターネットの快適さがさらに期待され、今以上に大規模なシステムになった時、それらを裏で支える新たな技術が必要になります。知能情報学の「インターネットと運用技術」研究分野では、そういったインターネットの基盤技術を影で支える人々をいかに楽にさせるか、さらには、人の認識や知覚を機械が持ち、自らシステムを管理する世界の実現に向けて、日々研究しています。高度に複雑化されたシステムと、それを自らの意思を持つかのように管理する機械は、もはや生命のように見える時代がくるかもしれません。

 

 

◆先生が、発展させようとしている研究とその方向性は、どのようなものですか。

 

おそらくインターネットへのさらなる要求と大規模化の速度に対して、インターネットそのものを運用・管理する技術がついていくことができず、全体として進化の速度を低減させることになるはずです。そこで、インターネットの進化の速度を維持するために、人々の認識や知覚、さらには、生命の特徴を保持し、まるで人やコミュニティが成長しつつも、自ら自律管理しているかのように振る舞うシステムを実現する必要があります。そのために、インターネットを生命の観点から解釈し、システムとして自律管理できる、まるで、これを読んでいるあなた自身のような独立した人間のようであり、生命のようにも見えるようなインターネット技術の研究開発に取り組んでいきます。

 

◆先生はどのようにして今の研究に至ったのでしょうか。

 

インターネット技術が大好きで、その技術を深く学んでいるうちに、裏で支えているシステムやそれを管理する人間の技術に興味がわきました。そして、実際にそういうシステムを持つ現場で働いているうちに、そのシステムの課題、特に運用技術についてより深く学びたいと思いました。今ではシステムの自動化のみならず、人間のように独立した自律管理可能なシステムを、インターネットやWebサービスなど巨大なシステムの裏側を支えるシステムに適用することが、将来的には超大規模なシステムの高度化とその運用管理のコスト低減に寄与できると信じています。

 

◆高校時代は、何に熱中していたかを教えてください。

 

ゲームとスポーツ。とにかくやり始めて面白いと思ったことは、全国、あるいは、世界で取り組んでいる人たちのレベルに負けないように、継続的に取り組み、とにかく努力していました。それがそのまま、やれなければいけないことに没頭し、集中して、継続的に努力する癖がついたと思います。ゲームが自分の研究や技術に対する考え方を育てたと思っています。

 

◆この分野に関心を持った高校生がどうしたらよいか、アドバイスやメッセージをいただけますか。

 

●私が所属するペパボ研究所では、「なめらかなシステム」というコンセプトを元に、システムの最適化やインターネット基盤技術の研究開発を行っております。いつでもお気軽にお問い合わせください。 

※松本先生のアドレス:matsumotory(at)pepabo.com

 

●研究所のサイトにより詳細な研究テーマについても書いておりますので、ご一読ください。

http://rand.pepabo.com/

 

●私が博士課程に所属していた京都大学大学院情報学研究科の岡部研究室では、幅広くインターネットの研究が可能です。下記サイトから連絡の上、訪問していただけるとよいかと思います。

https://www.net.ist.i.kyoto-u.ac.jp/ja/

 

●情報処理学会のインターネットと運用技術研究会は、自分の研究生活において多大なる影響と学術的知見を与えてくださった素晴らしい研究会です。ざっくばらんな研究発表会では、常に厳しさと優しさが共存しており、その理由は、皆が研究者を育てたいと考えておられるからだと感じました。是非、高校生であっても、私までご連絡頂ければ、私も現在は運営委員を拝命されておりますので、研究会の見学なども歓迎します。

http://www.iot.ipsj.or.jp/

 

興味がわいたら

『生物と無生物のあいだ』

福岡伸一(講談社現代新書)

インターネットのような巨大なシステムを裏で支える人たちを楽にするために、システムの運用管理をどう自動化するかを考えた時に、独立して自動的に自身を管理できている生命はどうなっているのかというアプローチに至りました。その生命たる所以の答えがこの本には書かれており、その生命の特徴を応用して、生命のように振る舞うシステムの研究開発を行っています。機械と生命、相反するような存在が、実は長い時間を経て再び同じ方向に収束しつつある、と考えており、それを実現するにはどうしたらいいかという点に興味をお持ちの方は楽しめると思います。

 

生命の定義について非常にわかりやすく書かれています。生命は自己を自動で管理して生き延びる事ができる、機械では到底実現できないような特徴を持っているシステム、といえます。ではそのシステムを、インターネットのような機械で構成された大きなシステムに適用することはできるでしょうか。それは可能だと思わされるような内容になっています。インターネットがどのようなシステムとして構成されているかを知っていれば、それと生命の定義を照らし合わせながら読むことができて、より楽しめると思います。

 

巨大なシステムの自動化を生命の観点から実現しようとしたときに、生命の定義とは?生命とは一体なんなのか?ということに対する理解が必要になります。それを最も簡潔に、かつ、面白く解説している本だと思います。なにより、著者の福岡先生が研究者として取り組んできたことが中心テーマとしてノンフィクションで描かれているので、研究者としてどういう人生を送ってきたか、研究者とは、という点でも非常に興味深い内容になっています。

 

[出版社のサイトへ]

 

松本先生のおススメ

KOF98(THE KING OF FIGHTERS '98)

SNKが発売した対戦型格闘ゲーム。ゲームバランスが良く研究しがいがある。リリースされてから20年近く立つが、今でも毎年全国大会が開かれている。ゲームをやり込むことで、自分が興味を持ったことについて、分析して解決し、そのために日々練習して努力する力がつくので、ゲームをやり込むことは好きな研究や技術に没頭することと近い。スポーツとも近い。好きな技は大門の払い。

 

Pokemon GO

NIANTEC社開発。研究や技術は好きでも、没頭していると体も精神も疲れる。散歩しながら遊べつつも、ポケモンのタイプや攻撃のタイプ、個体値などの兼ね合い、収集欲を掻き立てるゲーム性、今後もさらにゲーム性に改善が加わっていくであろうスピードが魅力。研究や技術の勉強と平行して軽く運動にもなるこのゲームは、研究ととても相性が良い。ゲームの将来性も含めて継続的に取り組んでも良いという期待感を感じさせる。また、ゲームは簡単に風景を変える、ということを体現したという点でも非常に価値が高い。

 

『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』

マット・デイモン主演の映画。自分がこれまでにやったことのない何かをはじめようとするときは怖い。その恐怖や不安によって、自分がわかる範囲で行動をしてしまいがちである。この映画では、友人や家族、尊敬する人たちとの複雑な人間関係を描く中で、聴衆に一歩踏み出す勇気を与えてくれるはず。僕自身、会社をやめてまで研究をするために無収入で大学院に入り直したが、この映画が自分の行動指針に大きく影響を与え、一歩踏み出すことができたと言っても過言ではない。

 

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