都市計画

ヒューマンスケールの街を取り戻せ

中島直人先生 東京大学大学院 工学系研究科 都市工学専攻

工学部 都市工学科

1960年代の高度成長期に計画された超高層ビル街である新宿を含め、いま、世界各地で都市の在り方が見直されつつあります。将来の超高齢化社会や持続可能性をも意識する中で、都市にも「人間性の恢復」が必要だといわれています。歩いていて楽しい街とはどのような空間でしょうか。一緒に考えてみましょう。

おススメ本はこれからの都市計画を考える本

『白熱講義 これからの日本に都市計画は必要ですか』

蓑原敬、饗庭伸、姥浦道生、中島直人、野澤千絵、日埜直彦、藤村龍至、村上暁信(学芸出版社)

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第1回 “新宿”なのに、なぜにぎわっていないの? 

~1960年代の都市計画

東京都庁をご存知ですか。新宿駅の西側、西新宿の超高層ビル街にあります。新宿駅は1日に約300万の人が乗り降りする巨大な駅なのですが、その西側、西新宿を活性化し、賑わいを生み出そうという活動が始まった、という記事が新聞に載りました(2014年7月8日、日本経済新聞)。このエリアは、“新宿”なのに、なぜ賑わっていないのでしょうか。

 

超高層ビル街になる前の新宿の西口、西新宿には浄水場があり、その移転に伴い跡地が超高層のビル街につくり替えられました。ちょうど日本が経済的に一番右肩上がりの時代です。

 

1969年当時の最終的な西新宿=新宿副都心の開発計画図。黒っぽいところが広場や公園
1969年当時の最終的な西新宿=新宿副都心の開発計画図。黒っぽいところが広場や公園

1969年当時の最終的な西新宿=新宿副都心の開発計画図を見てみると、1つ1つの街区(道路と道路で囲まれたところ)が大きいことがわかります。かつ、スペースの使い方がポイントで、大きな公園や広場、歩行者デッキを広く取り、建物は細くしています。このように空間を使うことで、太陽が燦々と地面に降り注ぎ、緑豊かでとても楽しい街、生き生きとしたヒューマンスペースが創造されると、45年前は考えたわけですね。

 

※出典:勝田三良(監修)・河村茂『新宿街づくり物語―誕生から新都心まで300年』、鹿島出版会、1999年の142頁

 

ところが、このような空間をつくってみてわかったのは、全く楽しくない、ということです。大きな街区間を移動するためには、横断歩道を渡るしかなく、また、超高層ビルは街区の少し奥まった位置に建てられているため、道沿いには緑地だけで店舗などがありません。歩いても歩いても、緑地があるだけです。 

新宿副都心・都庁の周辺
新宿副都心・都庁の周辺

では、こちらの写真を見てください。

神楽坂のヒューマンスケールの街並み
神楽坂のヒューマンスケールの街並み

同じく東京の神楽坂というエリアです。一見してわかる大きな違いは、沿道の用途とスケールです。通り沿いに小さな建物が所狭しと並び、多様な店舗が入っているので、歩いているといくつかは面白い店に出会える、という楽しみがあります。


対する西新宿では、普段は全く人がいない、ただ空間があるだけです。ものすごく大きくつくれば、開放的で、人々は自由になり、とても楽しい空間になると考えたのですが、実は人間は広い空間をあまりうまく使えないのです。また、広場というのは、そこに面している周りに何があるかというのと合わせて1つの広場を構成しているのです。その意味で、例えば、都庁前広場の周りにあるのは議会棟ですから、一般の人々にとってはアクティビティが何もないのと同じなのです。

 

人が集まり、賑わう街とはどのようなものか、このような点から、これからの都市づくり、まちづくりを考えたいと思います。

 

興味がわいたら

都市計画について考える本

『白熱講義 これからの日本に都市計画は必要ですか』

蓑原敬、饗庭伸、姥浦道生、中島直人、野澤千絵、日埜直彦、藤村龍至、村上暁信(学芸出版社)

1930年代生まれのベテラン都市プランナーと、1970年代生まれの若手が、3年半にわたり、ほぼ隔月集まり、都市計画、都市とは何かについて、議論を重ねてきた、その記録。建築学を志す若い人へ。

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公共空間について考える本

『パブリックライフ学入門』

ヤン・ゲール、ビアギッテ・スヴァア:著 鈴木俊治、高松誠治、武田重昭、中島直人:訳(鹿島出版会)

コペンハーゲンやニューヨークで魅力的な公共空間を手掛けるなど、世界的都市プランナー、ヤン・ゲールらによる著書。50年にわたる実践で培った調査とデザインのノウハウを公開。都市を観察する楽しさに満ち溢れたリサーチの最良の手引き。

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ユニークな東京再生論

『新・都市論TOKYO』

隈研吾、清野由美(集英社新書)

新国立競技場の設計者、建築家・隈研吾が、汐留、丸の内、六本木ヒルズ、代官山、町田の大規模再開発の現場を歩き、「都市再開発」の有り様を語り合う。また、下北沢、高円寺、秋葉原を歩き、「人が安心して生きていける共同体」を「ムラ」と呼び、都会にも「ムラ」は存在するべきと語る『新・ムラ論TOKYO』も。
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都市計画の歴史

『都市計画の世界史』

日端康雄(講談社現代新書)

都市の歴史は、人類の叡智の歴史そのもの。古代メソポタミアから現代の巨大都市まで、ヨーロッパから、イスラム圏、日本の都市まで、時代とともに変化する都市の歴史の全体像がつかめる。

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都市計画について考える本

『東京都市計画の遺産防災・復興・オリンピック』

越沢明(ちくま新書)

関東大震災や太平洋戦争など後の復興都市計画や、1964年のオリンピックに向けた都市整備を振り返り、今後の東京に必要な都市政策として、来るべき首都地震に備えた防災まちづくりを提言する。

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都市景観の美しさを問う本

『美しい都市・醜い都市―現代景観論』

五十嵐太郎(中公新書ラクレ)

計画的で新しい街並みは「美」で、雑然として古い街並みは「醜」か。都市の「美」とは何かを考え、秋葉原、渋谷からソウル、上海、ディズニーランド、さらに平壌への取材旅行から映画やアニメ作品中の未来都市像に至るまで、都市の事例を紹介。

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※慶応大湘南藤沢キャンパスでのオープンキャンパスの模擬講義より