憲法学

偶然の出会いも大切に。大学4年生、夏の合宿で与えられた研究テーマが今につながる

橋本基弘先生インタビュー

中央大学 法学部

◆「憲法学」とは、どのような学問でしょうか。

 

憲法のテーマは、「誰が何をどこまですることができるのか、できないのか」です。そのために、基本的人権(国家個人にしていいことといけないこと)が定められ、国家の機関(国会、内閣、裁判所など)が何をどこまで決めて実行できるかが定められています。このテーマを歴史や理論を通して解明し、現実の社会生活の中で生かしていくお手伝いをするのが憲法学の役割です。

 

◆先生のご研究とその社会的な意味合いを教えてください。

 

これまでは、表現の自由や結社の自由の問題を通じて、個人が自分を表現する自由について考えてきました。その中で、実際の裁判にも関わったこともたくさんあります。また、自治体の審議会の委員や条例作りのお手伝いをしてきました。法律学に限ったことではありませんが、学び研究したことと現実の社会との関連を意識しないと学問は無意味なものとなります。多くの人の役には立たなくても、誰かの役に立てたらいいなと思いながら憲法の研究を続け、教壇に立っています。

 

◆先生が指導されている学生の研究テーマ・卒論テーマ、大学院生の研究テーマを教えてください。

 

代理母と子どもを持つ自由、プライバシーの権利、受刑者の自己決定権、納税の権利と義務、国家緊急事態と憲法 など

 

◆先生のゼミの卒業生は、どんな就職先で、どんな仕事をされていますか。

 

ゼミの卒業生は、法曹、公務員、民間企業にそれぞれ3分の1ずつ進みます。ゼミは、決まった進路の人たちだけを採用するのではなく、様々な分野に進む人を採用します。その方がゼミに多様性が生まれ、活力が出るからです。航空機のパイロットやキャビンアテンダントになった人もいますよ。落語家やミュージシャンになる人が出てこないかと期待していますが、どの分野に進むにしても、「法的に物事を考える力」を共通に身につけていると思います。

 

◆ゼミや授業(講義)では、どのような指導をされていますか。

 

専門用語に頼り切り、日常用語で説明できない学問は無力だと思います。講義では、かみ砕き、具体例を用いながら(少々冗長になっても)丁寧に説明することを心がけています。

 

ゼミでは、学生の自由な活動に任せています。自分で問題を探し、考え、説明する力は、卒業してどの分野に進むにしても必須の能力ですから、これをゼミで身につけてもらえるよう、学生の主体性を大事にしています。

 

◆先生は、研究テーマをどのように見つけたのか教えてください。

 

大学4年生の憲法ゼミで、夏休み、日光に合宿に行きました。そこで割り当てられたテーマが法人の人権とコマーシャル表現の自由についてでした。結局これが修士論文となり、博士論文になりました。テーマと出会いは、人との出会いと同じく偶然によるところが大きいようです。その偶然の出会いを大切にできるかどうかが重要かもしれません。

 

それ以降、たくさんの原稿を書いてきましたが、結局それらは、大学4年生の合宿で出会ったテーマに回帰します。若い頃に出会ったテーマを大切にしながら、これらを綿密に考えることで次のテーマが生まれ、思いもよらなかったテーマに遭遇することがあります。与えられたテーマに真剣に向き合い、徹底的に考えると、自分なりの考え方のスタイルが生まれてきます。それがアンテナになり、おもしろいテーマを探し当てることにつながると思います。

 

 

◆高校生が授業や課外活動などで研究するとして、考えられる身近なテーマはありますか。

 

こんなテーマで考えてみましょう。

・もし、あなたが市議や県議会の議員に立候補するとしたらどんな準備をしたらいいでしょうか。

・ニュースなどで社会的に非難され、糾弾されている人がいたとしたら、その人の立場で弁護してみましょう。

 

◆この分野に関心を持った高校生が、先生の研究室にお伺いすることはできますか。

 

研究室訪問については、大学の法学部事務室か入学センターにお問い合わせください。予め申し込めば、講義に参加してもらうことも可能です。

 

◆高校時代は、何に熱中していたかを教えてください。

 

高校時代は、吹奏楽部に3年間を費やしましました。主将を務めていたので、部のマネジメントや部員たちの苦情受付係をしていました。3年の定期演奏で指揮棒を振り、大学入試も棒に振りました。たくさんのクラスメートに恵まれ、またたくさん本を読みました。その1冊が、紹介しました、『憲法と裁判官』(鵜飼信成著)です。

 

 

『高校生からの法学入門』執筆者・橋本先生よりメッセージ

『高校生からの法学入門』

中央大学法学部:編(中央大学出版部)

 

◆橋本先生執筆

「第3章 他人の悪口をいうことは自由なの?」

ネット右翼とか炎上という言葉を知らない人はいないと思います。インターネットが普及して、SNSがあたりまえのコミュニケーション手段として利用されている現代では、自分のつぶやきが全世界を駆け巡ります。これまでとは違い、何気ない一言が特定の人を貶める危険性が増しているのです。その中で、自分が言いたいことを言える自由はどこまで保障されるのでしょうか。誰かを傷つける危険性があるということで、好きなことを話す自由が規制されていいのでしょうか。表現の自由は、ネット社会において難しい問題に直面しています。

 

高校生の皆さんには、ネット社会での表現行為が様々なリスクを持っていることを理解した上で、好きなことを話す自由の大切さやそれに伴う責任の重さについても考えてほしいと思います。

 

※尚、本記事は、先生の執筆記事からの一部紹介です。

[出版社のサイトへ] 

 

興味がわいたら

『憲法と裁判官 ―自由の証人たち』

鵜飼信成(日本評論社)

自由を守るということがいかに努力を要するかが理解できる。

[出版社のサイトへ]

『明治国家をつくった人びと』

瀧井一博(講談社現代新書)

日本の立憲主義は長い歴史を持っているということがわかる本。

[出版社のサイトへ]

 

『最高裁の違憲判決 ―「伝家の宝刀」をなぜ抜かないのか』

山田隆司(光文社新書)

憲法問題が現実の生活といかに結びついているのかが平易に説かれている。[出版社のサイトへ]

橋本先生の記事を読む