インタラクション<情報学>

不便な製品・システムがないか観察することは、インタラクションの第一歩

宮田章裕先生インタビュー

日本大学 文理学部 情報科学科

(講演時:NTTレゾナント株式会社 スマートナビゲーション事業部)

 

◆先生のご研究分野である「インタラクション」とはどのような研究でしょうか。

 

インタラクションとは、「コンピュータがどのように振る舞えば、ユーザメリットを最大化できるか」を考える研究領域です。

 

インタラクションについて、図1でもう少し深く考えてみましょう。例えば、図1が「調査員がPCで市場動向を調べる」シーンだとします。この場合、コンピュータへの入力手段は、短時間で多くの文字が打てるキーボードが適しているでしょう。コンピュータからの出力は、図や文字を使って細かい情報を表示する画面が良いでしょう。しかし、図1が「運転中に最寄りのガソリンスタンドを調べる」シーンだとしたらどうでしょうか?運転中にキーボードは打てないので、入力はマイクを使った音声入力が適しているでしょう。同様に、運転中に画面は見られないので、出力はガソリンスタンドの情報をスピーカから音声で通知するのが良いと思います。このように、状況に応じた適切な入力・出力を考えることがインタラクションの研究の基本です。 

図1. インタラクションの研究対象

◆先生は、研究として目指しているものは、どのようなものですか。

 

私は、人にやさしいコンピュータの実現を目指しています。これは、ユーザが努力しなくても使える、理想的には使っていることさえ意識しないコンピュータをイメージしています。これが実現できると、コンピュータが得意でない人でもICTのメリットを享受できるはずです。特に、必要な情報にアクセスできずに損をしている人、体が不自由でやりたいことができない人にも、暮らしやすい世の中を実現できたら、社会的にも意味がある研究になると考えています。

 

◆先生は研究テーマをどのようにして、たどりついたのでしょうか。

 

以前、書籍位置特定技術Kappanを商用化する際に、学習塾の方と連携させていただいたことがあります。そこで、子どもたちがKappanを使って簡単に教育情報にアクセスしている様子を拝見した際、私がやりたかった研究はこれなんだと気付きました。つまり、コンピュータを上手に使いこなせる人のためではなく、苦手であるが故に損・苦労をしている人を助けることができたら、それは研究者としてやりがいがあると思ったのです。

 

 

◆この分野に関心を持った高校生にアドバイスをいただけますか。

 

私は家の中で、職場で、街の中で、不便でユーザを苦しめている製品・システムはないか探しています。観察のポイントは、「思考停止せず、目の前の製品すべてを一旦疑ってみること」です。すると、不便な製品・システムは世の中に溢れており、しかも、そうなってしまった理由は技術的困難さによるものではなく、製作者側の都合・無配慮によることが多いこともわかると思います。この観察は、みなさんも今日から始められますので、ぜひやってみてください。これが楽しく感じられたら、インタラクション研究者に向いているかもしれませんね。

 

もし私の研究室に興味をお持ちでしたら、研究室のWebサイトをご覧ください。研究内容や連絡方法等を記載しています。

 

宮田研Webサイト http://miyata.is.chs.nihon-u.ac.jp

 

興味がわいたら

『誰のためのデザイン?―認知科学者のデザイン原論』

D.A.ノーマン 岡本明、安村通晃、伊賀聡一郎、野島久雄:訳(新曜社)

ある製品やシステムを上手く使えないとき、悪いのはユーザではなく、それを設計したデザイナであることを説いています。同時に、人を困らせないような、使いやすい製品・システムをデザインするための考え方を教えてくれます。社会の役に立つモノを作りたいと考えている人にお勧めです。

 

ノーマンは冒頭で、「日本は技術においては先を走っています。しかしながらユーザの必要とするものを考慮するという点においては、ヨーロッパやアメリカの扇動的なメーカーに比べ、はるかに遅れています。」と語っています。これからの日本を背負って立つみなさんは、本当にユーザの幸せに繋がるものを作るんだというマインドを、若いうちから育ててほしいと思います。

 

本書からは、インタラクション研究に取り組む上で重要な、「どうすればユーザメリットを最大化できるか?」という考え方の基礎を学ぶことができます。この本の良いところは、世の中に実在する悪い例を紹介した上で、それはなぜ悪いのか、どうすれば良くなるのかを順序立てて説明している点です。そして、具体例から導出される汎用的な考え方も示してくれているので、ユーザが直接手に取る製品・システムを作る仕事に就きたい人は、ぜひ一読することをお勧めします。

[出版社のサイトへ] 

『アイデアのつくり方』

ェームス・W・ヤング 今井茂雄:訳(CCCメディアハウス)

運や偶然に頼らずに、創造的なアイデアを生み出すための方法論をわずか数十ページで教えてくれる名著です。企画力を求められる仕事に就きたいと思う人にお勧めです。

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『発想する会社!ー世界最高のデザイン・ファームIDEOに学ぶイノベーションの技法』

トム・ケリー、ジョナサン・リットマン 鈴木主税:訳(早川書房)

社会や日常に潜む問題をクリエイティブに解決していくデザイン・ファームIDEOのアプローチを、実例を交えながらわかりやすく紹介してくれます。自分がいかに固定観念に縛られているかを気付かせてくれるのではないでしょうか。将来、クリエイティブな仕事をしたいと思う人にお勧めです。

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『Prototyping Lab―「作りながら考える」ためのArduino実践レシピ

小林茂(オライリー・ジャパン)

日常世界をハックするためのアイデアと実践方法がわかりやすく書かれています。冒頭のメディアアーティストによる作品集を眺めているだけでも楽しい気持ちになれます。普及しつつあるIoTの基本的な考え方を楽しく学びたい人にお勧めです。

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