プライバシー保護<計算機科学>

知られたくない情報を、使える情報に変えるプライバシー保護術~秘密計算のしくみとは?

濱田浩気先生 日本電信電話株式会社 NTTセキュアプラットフォーム研究所

ビッグデータの氾濫するIT社会の最重要課題の1つに、プライバシー保護があります。データを誰にも見られないまま、知りたい情報だけがわかるように処理する究極のプライバシー保護技術――秘密計算について紹介しましょう。

昨晩、私の発表が楽しみで眠れなかった人はいますか? いませんね(笑い)。きっと恥ずかしくて手を挙げられなかったのでしょうね。でも、ご安心ください。今からご紹介するプライバシー保護技術=秘密計算を使えば、知られたくない情報を、使える情報に変えることができます。

秘密計算とは、データを見ないで(隠したまま)、知りたい結果だけがわかるように処理する技術です。

例えば、テストの平均点を知りたい場合、次のようにして各々の点数を秘密にしながら計算することができます。下図をご覧ください。

まず、各点数を、足すと元の点数になるようなでたらめな2つの数に分け、2つの数を別々のコンピュータに送ります。それぞれのコンピュータは、受け取った数の平均値を計算します。最後に2つのコンピュータから平均値を集めて足し合わせます。すると、元のテストの点数の平均点が計算できています。この計算過程では誰も点数を見ていないことがポイントです。

 

これは比較的やさしい、秘密計算の足し算の例でした。もう少し頑張って計算をすると、秘密計算の掛け算もできるようになります。これは実はすごいことで、足し算と掛け算をうまく組み合わせることで、プライバシーを守りつつ、あらゆる計算ができます!

ただし、計算に時間がかかりすぎるという問題があります。それは、プライバシー保護のために、ごちゃごちゃと、とても大変な計算をする必要があるからです。

計算時間の問題を解決するアイディアとして、この例では、各々の点数を封筒に入れた後、シャッフルすればよいということがわかりました。

私は、このような秘密計算の高速化に取り組んでいます。知られたくない情報を安心して使える情報にできるように、そしてみなさんにも安心して「濱田の発表が楽しみ」と言っていただけるように、これからも秘密計算の研究を続けたいと思います。(笑い)

 

司会者・落合陽一先生×竹川佳成先生の一言

 

竹川先生――暗号化された状態で、プライバシーを守りながら、足し算、引き算を計算できるってすごいですね

落合先生――ほんとはとても難しい研究発表なんですけど、こんなに噛み砕いて説明していただき、感動的に思います。これから、ヘルスケアが問題になると思いますけど、そこで秘密計算って、ものすごく重要な技術になると思います。秘密計算が、生活のいたるところで使われるようになった時、濱田さんの顔を思い浮かべていただければと(笑い)。

竹川先生――そうですね。

 

興味がわいたら

『はじめて出会うコンピュータ科学シリーズ』

徳田雄洋、村井宗二:イラスト(岩波書店)

コンピュータ科学の世界で出てくる題材を、小学生でもわかるくらいに簡単に説明した絵本です。コンピュータ科学に興味を持つきっかけになるのではと思います。大人も楽しめます。

[出版社のサイトへ]

 

プライバシー保護<計算機科学>でリードする大学・研究者

※情報処理学会第78回大会 IPSJ-ONE講演より

<慶應義塾大学日吉キャンパス協生館藤原洋記念ホールにて>

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⇒先生のプレゼンが見られます(IPSJ-ONEのページへ)

http://ipsj-one.org/2016/videos/23_hamada_fs.mp4