ソフトウェア

仮想化技術<オペレーティングシステム>

OSを手玉に取る仮想化ソフトウェア~実用化され、東大内でも使用

品川高廣 先生

東京大学 情報基盤センター 情報メディア教育研究部門 

OSと言えば、コンピュータを動かす縁の下の力持ちです。WindowsやMacのOSは、世界を席巻しています。このOSの下に入って、OSを手玉に取り、いろいろな新しい機能を付加できる、純国産の仮想化ソフトウェアが誕生しました! 仮想化ソフトって、よく聞くけど、要は1台のマシンであたかも複数のOSがあるかのように“仮想化”するってこと。でも品川先生たちの開発した仮想化ソフトは、従来のそれとはちょっと違う特徴を持っています。

 

OSを手玉に取る仮想化ソフトウェア~実用化され、東大内でも使用

BitVisor(ビットバイザー)という私たちの開発した新しい仮想化ソフトで、WindowsのようなOSを手玉にとるという話をしたいと思います。

 

WindowsとかMac OSなどのOSは、みなさんよくご存知ですね。OSがないと、アプリケーションは機能せず、パソコンを使うことはできません。OSは、あなたのパソコンに1つ入っていますね。でも別のOSも使いたい。そこで、仮想化ソフトウェアを使うと、例えばWindowsとMac OSといった異なる複数のOSを1台のPCで動かすことができるようになります。ここに今までの仮想化ソフトウェアの最大の目的がありました。

 

これに対して我々が作っている仮想化ソフトウェアのBitVisorはどういうものか。

BitVisorは仮想化技術を活用してセキュリティやシステム管理など新たな機能をOSに依存せずに実現することを目的としています。仮想化するOSは1個だけです。こうすることによって、非常に軽快に動作することができるようになりました。

 

 

セキュリティに関しては、仮想化技術を使って、非常に強力な壁というか、ある意味、保護機構を作ることができます。ですから、例えOSがウイルスに乗っ取られたとしても、非常に強力なセキュリティを実現することができるんです。

 

もう1つのメリットは、ハードウェアの機能向上ができることです。非常にたくさんのマシンのある環境や大学の計算機センターのような所で、1台1台のマシンのディスクを管理して回るのはとっても大変です。例えばディスクを更新したとき、その更新内容をすべてのマシンにコピーして配らなきゃいけない。コピーはすごく遅いですし、その間、マシンは使えません。そこでBitVisorを使って、各マシンを使える状態にしたままネットワークで更新内容を各マシンに振り分けてやる。このようにBitVisorを使えば、簡単に一元管理ができるのです。

 

 

すでにBitVisorは、VThrii(ブイスリー)という名で商品化され、東大の計算機センターに導入しています。こうした仮想化ソフトのような、ディープなシステムソフトウェア研究は、ハードウェアの全権を掌握できることに面白さがあるのじゃないかと思っています。

 

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