ソフトウェア工学(リポジトリマイニング)

「プログラム作成のミスをなくしたい」から研究テーマを発掘

肥後芳樹先生インタビュー

大阪大学 基礎工学部 情報科学科 ソフトウェア科学コース/情報科学研究科 コンピュータサイエンス専攻

◆先生の研究分野である、ソフトウェア工学の中の「リポジトリマイニング」について説明してください。

 

過去のソフトウェア開発で蓄積されたデータ(英語でリポジトリ(repository)と言います)を掘り起こして分析することにより(英語でマイニング(mining)と言います)、今後のソフトウェア開発で有用な知見を得るための研究です。高校生の皆さんは「おむつとビール」の話を聞いたことがあるかもしれません。これはPOSデータ(物品販売の売上実績を品目単位で集計したデータ)を分析することによって、男性が紙おむつとビールを一緒に買う傾向にあることがわかったため、店の中で紙おむつとビールを近い位置に置くことによりさらに売上を伸ばすことができた、という話です。リポジトリマイニングでは、例えば開発履歴を分析することによりファイルAとファイルBが何度も同時に変更されていたことがわかった場合に、将来の変更において開発者がファイルAを変更すると、ファイルBも変更したほうがいいよ、と推薦してあげることができます。

 

◆先生の研究は、どのような社会的な意味や成果になっていくのでしょうか。

 

社会のあらゆるところでソフトウェアが使われています。ソフトウェアの不具合が人命に関わったり、莫大な経済的損失を出したりすることもあります。ソフトウェアが不具合を起こしてしまうのは人間がソフトウェアを作成する過程でミスをしてしまうからです。私の研究はそのようなミスを未然に防いだり、起こってしまったミスを被害が発生する前に開発者に知らせたりする技術を生み出すことです。さらには自動でソフトウェアが生成できるような技術を生み出すことが長期的な研究の目標です。

 

◆先生は研究テーマをどのように見つけたのかを教えてください。

 

自分自身がプログラムを作成していてミスをしてしまうことが多く、どのようにすれば改善できるかを考えること自体が研究テーマの発掘につながりました。

 

◆この分野に関心を持った高校生に、具体的なアドバイスをいただけますか。

 

大学の研究室への訪問を歓迎しています。ウェブページに連絡先を公開していますので、まずはメール等で連絡ください。

 

◆高校時代は、何に熱中していましたか。

 

TVゲームばかりしていました。高校3年生になってからは勉強しないとまずいと思ったので、ゲームをやめて勉強を頑張るようになりました。

 

◆先生の研究室の卒業生は、どのような就職先で、どのような仕事をされていますか。

 

8割以上の学生が大学院に進学します。大学院修了後は大手の電機メーカーやシステムインテグレーターに就職して、情報システムの設計、開発、運用を行う仕事に携わる人が多数です。ベンチャー企業に就職してウェブ系のシステムを開発している人もいます。

 

◆研究室では、どのような指導をされていますか。

 

各学生には個別の研究テーマに取り組んでもらっています。取り組んだ研究テーマそれ自体が就職後に役立つことは多くないと思いますが、研究活動を通じて、自ら考える能力、他人と議論する能力、きちんとした日本語の文章を記述する能力、プレゼンテーション能力を身につけてもらうことに重点を置いています。また、海外での英語発表を励行しており、英語による文章の記述やスライド作成、口頭発表の経験も学生時代に経験してほしいと思っています。

 

先生の研究室HPはこちら

研究室のHP(ソフトウェア設計学講座 楠本研究室)

肥後先生のページ

 

◆下記は、私が大学院生時代に所属研究室が取材されたときのものです。私へのインタビューも少しですが載っています。

「らぼなび! 第3回 大阪大学大学院 情報科学研究科 井上研究室の巻」

https://www.ogis-ri.co.jp/otc/hiroba/others/Labonavi/interview3.html

 

興味がわいたら

『ずっと受けたかったソフトウェア・エンジニアリングの授業1(増補改訂版)』

鶴保征城、駒谷昇一(翔泳社)

本書は大学生を対象としたソフトウェア工学の教科書ですが、読みやすい語り口調で書かれていますし、導入部が非常に優しく書かれていますので、高校生でも十分に理解できると思います。ソフトウェアを開発するとはどんなことなのか、実際の開発現場ではどんな問題が起こり、それらに対応するためにどんな方法が考えられているのか等を楽しみながら知ることができるのではないかと思います。

[出版社のサイトへ]

『イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密』

イギリスの数学者アラン・チューリングを題材にした映画です。チューリングは、チューリングマシンという現在のコンピュータを作る上での重要な理論を考案した人物です。チューリング賞(計算機科学分野のノーベル賞と言われている)は彼の名にちなんでいます。この映画は、彼がエニグマ(第二次世界大戦中にドイツ軍が使用した暗号機)を解読する部分に焦点を当てて描かれています。

『プロジェクトX 挑戦者たち「100万座席への苦闘 ~みどりの窓口・世界初 鉄道システム~」』

NHKのTV番組でDVD化されています。旧国鉄(現在のJR)が開発したオンライン発券システムの開発を紹介したドキュメンタリー番組です。システム開発の苦労や完成したときの感動を知ることができると思います。プロジェクトXの「家電革命 トロンの衝撃」や「国産コンピューター ゼロからの大逆転」もコンピュータを扱っており、オススメです。

 

こちらも中高生におすすめ

『Q.E.D.証明終了』

加藤元浩(講談社)

知的好奇心をくすぐられるコミックです。同じ作家の『C.M.B.森羅博物館の事件目録』もおススメです。

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『インベスターZ』

三田紀房(講談社)

株式投資学園マンガ。中高生のころからお金の知識もある程度あると良いと思います。

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弱いものが自然淘汰されるソフトウェア自動進化への挑戦

肥後芳樹先生

大阪大学 基礎工学部 情報科学科 ソフトウェア科学コース/情報科学研究科 コンピュータサイエンス専攻