刑法学

井田先生インタビュー

まずは自分で考える。読書を通して問題意識を醸成させ、それから人に聞き、また考える

井田 良(まこと)先生

中央大学大学院法務研究科

◆先生の専門分野である、「刑事法学」、特に「刑法学」を説明してください。

 

広く「刑事法学」といえば、犯罪と刑罰に関わる法(「罪と罰の法」)のあり方を研究する学問分野であり、その中にも、どのような行為が犯罪となり、それに対してどのような刑罰が科せられるかについて定める刑法を研究の対象とするのが「刑法学」です。具体的には、例えば、故意とは何か、過失とどのように区別されるか、放火罪はどのような場合に成立するか、窃盗と詐欺罪とはどのように区別されるか等のテーマについて検討します。

 

◆先生は、何をめざして研究されていますか。

 

刑法という法をより深く・より正しく理解したい。それに成功すれば、現在の刑法をより良きものに変えていくことに寄与できると考えています。

 

◆先生は研究テーマをどのように見つけたのかを教えてください。

 

そこには多分に偶然が作用しています。最初は自分が好きで考えていたことが、国内外の良き恩師に出会うことができ、いろいろと教わり、また議論する中で自分の頭でも考え、何十年もするうちに次第に出来上がってきたのが自分の今の考えです。

 

高校生にアドバイスできることがあるとすれば、自分の頭で考え、人の言うことに真摯に耳を傾け、わからなくてもしばらく放っておいて、また考えてみて・・・ということをくり返すことが大事だということです。

 

すぐに人から聞こうというのではなく、まずは自分で考えることが大事です。社会科学の分野では、「本を読めるようになること」がいちばん大事であり、読書を通して問題意識を醸成させ、それを熟させた段階で先達(プロ)に疑問をぶつけるというのが一番有効だと思います。もし、専門家を訪問して話を聞きたいならば、自分なりに準備して、問題意識を持ち、専門家からの話を受け止められるまでに成熟している必要だと思います。

 

◆高校時代は、どのように学んでいたか、何に熱中していたかを教えてください。

 

高校時代には、背伸びをして難しい本を読んでいました。高橋和巳や廣松渉といった著者のものが好きでした。難しい本を読んでそれに慣れていたことは、大学での勉強の際にとても役立ったという記憶があります。

 

◆先生のゼミの卒業生は、どんな就職先で、どんな仕事をされていますか。

 

多くは法曹界に入り、弁護士、裁判官、検察官などとして活躍しています。もちろん一般企業に入り社長になった人や、医師、弁理士、テレビアナウンサー、大学教授になった人もいます。

 

◆関連記事

Anti-conspiracy legislation fights terrorism and organized crime(japantimes)

英語ですが、やさしい文章で書いたものなので高校生にも理解できると思います。

 

興味がわいたら ~本と映画の紹介

『死刑 究極の罰の真実』

読売新聞社会部(中公文庫)

はじめて刑法の問題を考えるときには、死刑の問題から入るのが1つの有効なやり方だと思われます。死刑制度について論じるためには、刑罰の本質や目的に関する理論、死刑制度の現状と実際、犯罪の原因とその対策等々に知らなければなりません。何も材料を持たずにいきなり死刑の存廃を論じるというわけにはいかないのです。死刑の持ついろいろな側面について詳しく触れているという点で本書をお薦めしたい。

 

まずは本書に書かれていることをきちんと理解し頭に入れた上で、死刑についての自分の考えを決めてほしいと思います。死刑を廃止しようとする側の言い分にも、またそれを維持すべきだとする側の言い分にもそれぞれかなり理由があることを、本書から読み取ることができるでしょう。対立側の言い分を無視して自分の考えだけを述べ立てても、それは学問的な主張にはなりません。両方の言い分を踏まえて、双方が納得できるような主張こそが学問的に価値のある主張です。そのような自説を構築することは決してやさしいことではありません。そうしたことを本書から学んでください。

 

本書を注意深く読めば、犯罪と刑罰の理論、刑罰の本質と目的、刑事裁判のあり方などについて学ぶことができる点で、刑事法学入門(特に刑法学入門)として適しています。

[出版社のサイトへ]

映画『それでもボクはやってない』

周防正行監督作品。現実に忠実な形で刑事裁判を描いた作品であり、裁判のこわさ・難しさを知るには好適の映画。高校生が最初に見る映画としてお薦めできます。

 

映画『ショーシャンクの空に』

スティーブン・キング原作、フランク・ダラボン監督。犯罪と刑罰に関する映画の中で最高の名作でしょう。キーワードは「希望」であり、刑事政策と犯罪者処遇の本質に触れる作品です。

 

刑法学を知る

死刑廃止やテロ等準備罪を考える〜社会の変化と刑法の変化

井田 良(まこと)先生

中央大学大学院法務研究科