ヒューマンエージェントインタラクション(HAI)

「ロボット・キャラクターが友達になる社会」をまじめに考える~外見的なヒトらしさ、内面的な人らしさの研究

大澤博隆先生 筑波大学 システム情報系 知能機能工学域

筑波大学の大澤先生は、近い将来必ず訪れるであろう人間とロボット・キャラクターの共存する未来に思いを巡らせます。それも外面的なヒトらしさと、コミュニケーション知能を持った内面的な人間らしさの両方の視点から、将来、ロボット・キャラクターとどうやってつきあっていくべきなのか、鋭く迫ります。

私の研究はヒューマンエージェントインタラクション(HAI)という研究。簡単に言うと、「ロボット・キャラクターが友達になる社会」をまじめに考える学問です。

 

みなさんはスマホとロボットはどう違うと思いますか。スマホは人間のこうしたいという機能を拡張したもの。ロボットは人間とは別人格だとユーザーが感じ、彼らとインタラクション(双方向の交流)を取りながら問題を解決していく存在です。ロボット・キャラクターをまとめて、専門的にはエージェントと呼んでいます。

 

人工知能は大きく発達しましたが、今のところ人間より賢いエージェントは存在しません。でもペッパーのようなコミュニケーションロボットは、賢くなくてもユーザーの心を癒すという形で人間とインタラクションを取ることができます。

 

私たちの研究は、(1)外見的なヒトらしさ(擬人化)と、(2)内面的な人間らしさ(コミュニケーション知能)の2つを行っています。

 

外面的ヒトらしさの研究では、例えば家電製品に目・手を付けキャラクターとして説明するなどがあります。実は人間が説明するより、ユーザーに機能をよく理解してもらえるなどの効果があることが研究からわかっています。

 

一方、内面的な人間らしさの研究とはどんなものでしょう。まず私が実演してみましょう。

 

(くるっと後ろ向きになると大澤先生の背中に「バカ」の文字が貼ってあって、場内から笑い声)背中の文字は僕には見えませんが、みなさんの反応から、僕、なんかおかしいなってわかります。相手の反応を見て自分を理解するというのは、結構高度な知能を要するんです。

 

こういうことをどう理解していくか、Hanabiというコミュニケーションゲームを使って、これを解くAIを作りました。このゲームは、自分のカードは自分以外の人に見せ、他人のカードを見ながら、一緒にカードを並べていくゲームです。人間は他人の反応や場の空気を読んでやるわけですが、AIを用いることによってより良い成績がでることがわかりました。

 

3者以上の複雑な人間関係の中での、内面的な人間らしさの研究も行いました。「人狼ゲーム」を知っていますか。メンバーの中に人を食い殺す人狼が紛れ込み、カードを配りコミュニケーションを取りながら、その人狼を発見するゲームです。人狼を発見する側と、ばれないようにする人狼側のコミュニケーションのせめぎ合いの中でゲームが進行していくので、これを用いて内面的な人間らしさ(コミュニケーション知能)について分析するには有用でした。

 

将来訪れる、外面的なヒトらしさと内面的な人間らしさを持ち合わせたエージェントが人間と一緒にいる社会とはどのような社会になるかを、考えていきたいと思っています。

 

司会者・竹川佳成先生×森勢将雅先生の一言

 

竹川先生――今はまだ人間はコンピュータより賢いんですが、だんだん機械が追いついてきて家電なんかももっと賢くなって、何か人間のサポートをしてもらうとか、一緒にクリエーティブなことをするとか、そういう時代が来ると思います。

森勢先生――そういう時代が来ると思うとワクワクしますね。 

 

さらにヒューマンエージェントインタラクションを知る

興味がわいたら

『人工知能の見る夢は AIショートショート集』

新井素子、宮内悠介他 人工知能学会:編(文春文庫)

この本は、もともと人工知能学会の学会誌「人工知能」に掲載されたショートショートをまとめたものです。人工知能がどのように発展するか、人工知能をテーマにSF作家に書いてもらい、それを学会でテーマごとにまとめた上で、第一級の研究者に解説を依頼しました。小説に興味がある人にも、最新の人工知能の動向について調べてみたい人にも、どちらにもおすすめです。「ステレオタイプな人工知能」ではない人工知能の可能性、どのような使われ方が存在しうるか、ぜひ考えながら読んでほしいなと思います。

 

ヒューマンエージェントインタラクションの研究では、「他人から見た時に、そこに他者がいると感じるか」という視点を重視しています。「人工知能は『心』を持つのでしょうか」という疑問をいろいろな人からいただきますが、心を持っているかどうかの判定を客観的に行うことは、非常に難しいのです(原理的に不可能だという方も多いです)。ヒューマンエージェントインタラクションの研究では、人間が心を持っていると誤解しやすい、という傾向がよく挙げられています。また、性別や人種に対する偏見が、そのままエージェントに投影されてしまうことも多く、その倫理的課題が問題となっています。どのような未来社会を作っていけばよいのか、読みながら想像し続けてください。

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『人工知能は人間を超えるか ディープラーニングの先にあるもの』

松尾豊(角川EPUB選書)

人工知能について非常に多くの情報が溢れていますが、この本は人工知能学会編集長であった松尾豊先生によって書かれており、現状の技術について正確かつ誠実な記述になっています。人工知能や人間らしいキャラクターに興味があるなら、まず、この本で現状を押さえておくのがよいと思います。

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『AIと人類は共存できるか? 人工知能SFアンソロジー』

藤井太洋、長谷敏司他 人工知能学会:編(早川書房)

人工知能が社会を変化させる様子を、「倫理」「社会」「政治」「信仰」「芸術」の5つのキーワードでまとめ、小説家と研究者がそれぞれ小説/解説を行った本です。ヒューマンエージェントインタラクションについて、吉上亮先生の小説を元に、私が解説を行っており、HAIの歴史を概観する上ではおすすめです。値段が少々高いですが、読み応えはあります。

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『人狼知能 だます・見破る・説得する人工知能』

鳥海不二夫、片上大輔、大澤博隆、稲葉通将、篠田孝祐、狩野芳伸(森北出版)

コミュニケーションゲーム「人狼」を人工知能で解く研究プロジェクト「人狼知能」について解説を行った本です。専門書ですが、このゲームに興味がある人は、飛ばし読みでもよいので、読んでみると面白いかもしれません。

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『国立博物館物語』

岡崎二郎(小学館ビッグコミックス)

国立博物館で働く女性研究者を主人公にした漫画で、恐竜時代をシミュレートするスーパーコンピュータに沿って話が進みます。最終話では、人工知能時代が生むシンギュラリティについて、議論がされています。私が人工知能に関わる研究者を志したきっかけの漫画の一つです。

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『AIの遺電子』

山田胡瓜(秋田書店)

ロボット・ヒューマノイド・人間が混在する未来社会で、ヒューマノイドを修理する技術を持った「医者」を対象とした短編漫画集です。社会に新しいAI技術・自動化技術が導入された際の、人々の受け取り方の変化が繊細に描かれています。作者は元インターネットニュースの記者の方であり、技術について深い造詣を持っています。大変読みやすいと思います。

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『ロボットからの倫理学入門』

久木田水生、神崎宣次、佐々木拓(名古屋大学出版会)

ロボット・AIが人間と接する際に発生する倫理的課題を網羅した本です。入門としておすすめします。

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『人とロボットの<間>をデザインする』

山田誠二:監著、中野有紀子、大澤博隆、寺田和憲他:著(東京電機大学出版局)

2007年に発刊されたHAIに関する初めてのまとまった解説書です。今となっては10年前の知見ですが、事例が多く、また読みやすい書籍となっていますので、おすすめです。

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『お世辞を言う機械はお好き?~コンピュータから学ぶ対人関係の心理学~』

クリフォード・ナス、コリーナ・イェン 細馬宏通:監訳、成田啓行:訳(福村出版)

クリフォード・ナスが行った、“人はコンピュータを人のように扱う”のを明らかにした実験は有名です。その法則をもとに、コンピュータを用いた対人関係の実験を紹介しています。2017年出版。

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※情報処理学会第79回大会 IPSJ-ONE講演より

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