商法学

なんでお母さんが株式会社の会議に出るの? ~会社組織の法

三浦治先生 中央大学 法学部

第2回 株主になるといいことあるの?

株主総会へ参加できる

 

株主になるとできることは、大きく分けて3つあります。まず、株主が集まる会議(株主総会)に参加して意見を表明する、投票することができます。株式会社では、その会社のもっとも大事なことがらを株主総会で決めることになっています。「返さなくてもいいよ」といってお金を出している人(出資者つまり株主)が、会社の運命を決めることができるのです。会社の経営者(とりあえず「取締役」といっておきましょう)と呼ばれる人たちは、株主総会で選ばれます。誰を取締役にするのかも株主総会が決めるのです。

 

株主総会という会議は1年に1回しか開かれないのがふつうです。株主は1年に1回開かれる株主総会に出席して、場合によっては質問したりしながら、最終的には投票をして、その会社における大事なことがらを決めるのです(取締役を選ぶほか、直近の1年間のビジネスの成果を承認したり、あるいは合併を認めるなど)。

 

株式会社にもいろいろあって、たとえばNTT株式会社(通称)にはおよそ80~90万人の株主がいます。ただ、実際には株主総会の会場に来ない(欠席する)人も多いので、1000人も集まれば多いといえましょう。株主が株主総会に出席するかどうかは自由です。

 

先に、「出資をした金額に応じた数の「株式(または簡単に株)」というものを与えられる」と書きました。いくら出資をするかによって、何株の株主になるかがちがってくるわけです。株主総会では、1人1票ではなく、1株1票です。その会社に対して多くの出資をした人の発言権が大きいのです。今回の大村家具の株主総会は、親の側の株主たちと娘の側の株主たち(それぞれ多数の株式を持っている)が真っ二つだから、少数の株式しか持っていない株主の投票行動が影響してくるわけです。

 

配当をもらえる

 

株主になるとできること、その2は、配当をもらえることです。会社のビジネスによってもうけが出ていたら、もうけ分からお金の配当を受け取ることができます。ふつう、もうけ分の全部を配当してしまうことはせず、これからのビジネスに使う分も残しておきます。もうけが出たらその分け前にあずかる、ということも出資の目的の1つなのです。

 

株式を売却できる

 

株主になるとできること、その3は、自分が持っている株式を他人に売ることです。

 

東京証券取引所(略して東証)ということばを聞いたことがありますか。大村家具の株式が東証で取り扱われているとすると、その株式は、毎日毎時毎分毎秒、東証の市場(マーケット)で取引されています。大村家具という会社の価値、ひいて株式の価値がいくらくらいかを計算しているたくさんの会社による評価を中心に、会社経営のことをあまり分かっていない多くの人たちの売り買いも含め、大村家具の株式の値段(つまり株価)が決められていきます。毎秒変わっているわけです。

 

株式を売り買いしたい人は、証券会社を通じてですが、東証の市場で売買します。株価が安いときに買った株式を、株価が上がったときに売れば、差額分の利益が出ます。

 

ちなみに、日経平均株価というのは、東証で取り扱われている株式のうちの225社の株価に一定の操作を加えて算出されています。日本経済の現況・動向(日本の企業が元気かどうか)を測る重要な指標として使われています。一つひとつの会社の株式に株価がつくわけですが、それを総合して、日本経済の元気度を測るために、日経平均株価が使われているわけです。会社の将来に対する期待が高まればその会社の株式を買おうとする人が多くなり(株価がこれからどんどん上がっていくぞ)、株価が上がるはずです。

 

<前回の記事を読む>

第1回 株主って誰?

 

『高校生からの法学入門』執筆者・三浦先生よりメッセージ

◆三浦先生執筆

「第7章 なんでお母さんが株式会社の会議に出るの?

本書の第7章では、株式会社の組織に対する私法による規制(会社法)を題材にしました。そして、私たちのまわりにはこれだけ多くの株式会社があるのに、たとえば「株式って何?」という疑問をもっている人が多いのではないかと思い、株式会社のしくみのうちもっとも根本的なところ、つまり「株主って誰?」をテーマにしました。

 

まず、伝統的な私法の目からみると株主が会社の実質的所有者と捉えられることを、示しています。株主が株主総会で経営者を選ぶことなどを通じて、会社を支配するのが株主であること、そのしくみがわかります。しかし株主もいろいろですから(100万人も株主がいると、様々な人がいるはずです)、株主たちが絶対的な支配者であっても困ります。株式会社は、それ自体、法人として社会において活動し、多くの人たちに影響を与える存在であるからです。社会全体で、会社の活動をチェックしていくしくみも必要です。社会が変われば、チェックのしかたも変わっていかざるをえません(たとえば、メインバンクの影響力の変化、「ある種の多数株主」(これは機関投資家を意味しています)への期待)。

 

株主を会社の実質的所有者と捉えつつ、株式会社の活動が、適法に、また社会全体にとっても望ましい方向で行われるようなしくみを整えていくことが大事です。そのような中で、株主を会社の実質的所有者と捉えるというもっとも根本的なところにも見直しが必要になってくるかもしれないとも書きました(それは、上記の「伝統的な私法の目」というものに修正を加えていくことでもあります)。

 

法は社会とともにありますし、他の学問領域とも関連します。法を勉強するということは、よりよい社会をつくっていくために、ひとりよがりの考えに陥ることなく社会に対する見方を育んでいくための、一つの重要な方法だということでしょう。

 

※尚、本記事は、先生の執筆記事からの一部紹介です。

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