商法学

商法学って何?

三浦治先生 中央大学 法学部

商法は私法の一分野です。そして、企業の組織に関して、または企業どおしの取引や、企業と私たちとの取引に関して私法上の問題が生じたとき、まず商法の問題になり、商法に規制がなければ民法が適用されます(それに対して、企業が絡まない取引については、商法は我関せずで、ただちに民法が適用されます)。私たちが電車やバスに乗るとき、ラーメン屋さんでラーメンをいただくとき、デパートやスーパーでお買い物をするとき、相手は会社(企業)ですので、すべて上記の関係になります。実は、商法は私たちにとっても身近にある法なのです。

 

商法の対象は広く、個人商人を対象とする部分、会社の組織を対象とする部分(これが会社法)、企業が絡む取引を対象とする部分、その際に使われることも多い手形や小切手を対象とする部分などのほか、企業の会計を規制する部分(会社法に含まれます)や保険を対象とする部分などに分かれます。「商法」という法律のほか、「会社法」や「手形法」「保険法」などの法律が組み合わさって(これらの法律は、かつては「商法」という法律の中に含まれていた部分が、独立した法律になったものです)、「商法という法分野」が形成されています。

 

最近では、東証の市場で株式が取り扱われている会社に適用される金融商品取引法(本質的には私法には属しません)とも関連し、企業買収・M&Aが行われる際に生じてくる法律問題をめぐる議論が盛んです。

 

こちらの記事も

『高校生からの法学入門』執筆者・三浦先生よりメッセージ

◆三浦先生執筆

「第7章 なんでお母さんが株式会社の会議に出るの?

本書の第7章では、株式会社の組織に対する私法による規制(会社法)を題材にしました。そして、私たちのまわりにはこれだけ多くの株式会社があるのに、たとえば「株式って何?」という疑問をもっている人が多いのではないかと思い、株式会社のしくみのうちもっとも根本的なところ、つまり「株主って誰?」をテーマにしました。

 

まず、伝統的な私法の目からみると株主が会社の実質的所有者と捉えられることを、示しています。株主が株主総会で経営者を選ぶことなどを通じて、会社を支配するのが株主であること、そのしくみがわかります。しかし株主もいろいろですから(100万人も株主がいると、様々な人がいるはずです)、株主たちが絶対的な支配者であっても困ります。株式会社は、それ自体、法人として社会において活動し、多くの人たちに影響を与える存在であるからです。社会全体で、会社の活動をチェックしていくしくみも必要です。社会が変われば、チェックのしかたも変わっていかざるをえません(たとえば、メインバンクの影響力の変化、「ある種の多数株主」(これは機関投資家を意味しています)への期待)。

 

株主を会社の実質的所有者と捉えつつ、株式会社の活動が、適法に、また社会全体にとっても望ましい方向で行われるようなしくみを整えていくことが大事です。そのような中で、株主を会社の実質的所有者と捉えるというもっとも根本的なところにも見直しが必要になってくるかもしれないとも書きました(それは、上記の「伝統的な私法の目」というものに修正を加えていくことでもあります)。

 

法は社会とともにありますし、他の学問領域とも関連します。法を勉強するということは、よりよい社会をつくっていくために、ひとりよがりの考えに陥ることなく社会に対する見方を育んでいくための、一つの重要な方法だということでしょう。

 

※尚、本記事は、先生の執筆記事からの一部紹介です。

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興味がわいたら

『さおだけ屋はなぜ潰れないのか? -身近な疑問からはじめる会計学』

山田真哉(光文社新書)

商法・会社法も多面的であり、企業会計についての法も定めています。本書は10年以上前の新書で、当時のベストセラー。直接には会計を学ぶことを念頭に置いている入門書ですが、登場するストーリーが様々な事業経営のからくりを教えてくれる点は、商法や会社法への入門を助けてくれる書と言えます。

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『シリコンバレー・アドベンチャー ザ・起業物語』

ジェリー・カプラン、仁平和夫:訳(日経BP社)

これもずいぶん以前に刊行された書ですが、著者がITの聖地シリコンバレーで企業を立ち上げ、会社の売却に至るまでの実録物語。おもしろさはいろいろな点に見いだせますが、重厚長大産業における会社像と異なる会社のイメージを、臨場感をもって沸き立たせてくれる点も興味深いと思います。

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『人間ドラマから手形法入門』

奥島孝康・高田晴仁:編(日本評論社)

商法の一分野として、手形法・小切手法も含まれます。本書は、マンガ『ナニワ金融道』や小説『沈め屋と引揚げ屋』などを題材にした、異色の手形法入門書です。『人間ドラマから会社法入門』という続編もあります(こちらは新しい)。

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『基本テキスト 会社法』

三浦治(中央経済社)

会社法のテキストです。読みやすく、わかりやすくを心がけました。

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