倫理学・日本思想
伊藤益先生インタビュー
日本の浄土教思想史の核心に迫るべく、今後は法然を精細に研究したい
伊藤益先生 筑波大学 人文・文化学群 人文学類 哲学主専攻 倫理学コース/人文社会科学研究科 哲学・思想専攻

◆先生は、今後、研究をどのように発展させようとしていますか。
法然(親鸞の師)の生涯と思想に関して、精細に研究したいと考えています。法然と親鸞について研究することは、日本の浄土教思想史の核心に迫ることを意味します。法然や親鸞がもし現代社会を見たとすれば、彼らはどのような考えを持つのか。それを問うところに、私の研究の社会的な意味があると思います。
◆先生が指導されている学生の研究テーマ・卒論テーマ、大学院生の研究テーマを教えてください。
・宮沢賢治研究
・本居宣長研究
・埴谷雄高研究
・新渡戸稲造研究
・老子研究
など
◆先生のゼミや研究室の卒業生は、どんな就職先で、どんな仕事をされていますか。
高専や大学で哲学・倫理学を教えている修了生が多い。仕事の内容は講義(授業)をすることと、論文・著書を書くことが主です。
◆研究室やゼミ、授業(講義)では、どのような指導を講義をされていますか。
講義は様々なジョークなどを交えながら、面白おかしく、かつは真剣に行うように心がけています。ゼミはすべて学生・院生の自主性にまかせ、余計な口出しはしない方針。自主的・主体的に勉学・研究する学生・院生が私の分野には向いています。
◆先生は研究テーマにどのように出会いましたか。
私はもともと西洋哲学を研究していたが、30代前半に大病をした際、入院中に歎異抄を読みました。それがきっかけとなり、人間にとって救いとは何かを真剣に考えるようになり、現在の研究テーマで研究を進めるようになりました。
◆この分野に関心を持った高校生にアドバイスをいただけますか。
人間は生きて在るかぎり、悪をまぬがれえない存在である。悪とは何か。どうすればその悪に向き合うことができるのか。日常的な視点から考えてみよう。
◆高校時代は、どのように学んでいましたか。何に熱中していましたか。
できるだけ哲学関係の著作を読むようにしていました。小説(とくに高橋和巳の作品)も数多く読みました。学校の勉強、受験勉強はほとんどしませんでした。
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わかっちゃいるけどやめられない悪人こそ救われる~『親鸞~悪の思想』を読んでみた!
~栃木県立宇都宮高校オーサービジット
伊藤益先生 筑波大学 人文・文化学群 人文学類 哲学主専攻 倫理学コース/人文社会科学研究科 哲学・思想専攻
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『私釈親鸞』
伊藤益(北樹出版)
初期仏教から親鸞に至るまでの仏教思想史を通史的に捉えた上で、親鸞思想の核心に迫る。大学の講義録で高校生にもすすめることができる。
親鸞の思想は、悪の問題を主題として展開されている。親鸞にとって悪とは道徳的・倫理的な意味での悪ではない。それは人間の存在そのもの(生きて在るということ自体)にまつわる悪である。自著ながら、このことを明確にした点で、学問的に重要な意味を持つ書と考える。
歎異抄第三条には「善人なほもつて往生を遂ぐ。いはんや、悪人をや」ということばがある。本書はこのことばを、人間が他の生命体や他の人間を排除する在りようを「悪」と捉えるものと解する。特にこの点を読んでほしい。
倫理学は人間の善悪の判断について、その基範を問う学であるが、本書を通じて、悪が相対的なものにとどまらず、絶対性を以て人間に迫ってくることが明らかになる。すると、いままでのように、善悪の問題に相対化してとらえる倫理学の研究が、その根底からゆるがされることになる。
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『法然と親鸞の信仰』
倉田百三(講談社学術文庫)
法然の『一枚起請文』と親鸞の『口伝歎異抄』というわかりやすい二つの古典を分析することによって浄土教の本質に迫まっている。宗教に関心のある高校生にすすめられる。
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