論理学・分析哲学・言語哲学

20世紀の大哲学者ウィトゲンシュタインの「哲学と一致させた人生」の謎に迫る

六甲学院中学・高等学校オーサービジット

『ウィトゲンシュタインはこう考えた』を読む

鬼界彰夫先生 筑波大学 人文・文化学群 比較文化学類 現代思想コース/人文社会科学研究科 哲学・思想専攻

 

第3回 『論理哲学論考』の2つ目のテーマ「神・信仰・倫理問題」~語りえないことには沈黙しなければならない

『論考』の2つ目のテーマは、神・信仰・倫理の問題です。言い換えると、言語が世界の有様を事実として明晰に記述できるとしても、では事実と思えないようなことを僕たちはどんなふうに語れるのか、という問題です。

 

つまり、言語で語られうる世界の外にある、「神」の問題と言うことができます。ウィトゲンシュタインの『論考』での解答はこうです。

 

言語は事実を記述するための道具なのだから、そもそも事実として記述できない神・信仰・倫理について語ることにはムリがある。しかし語ることはできなくても、たとえ語ることが無意味だとしても、神という言葉を使って心の底から言いたくなるものはある、そしてそれついて我々は沈黙すべきだと。

 

それを示す彼の有名な言葉が、「語りえないことについて、人は沈黙しなければならない」というものです。要するに解ける問題と解けない問題とぎりぎりのところ切り分けて、議論しました。しかし、そのために彼の哲学としては、ある種の矛盾を抱えることになります。『論考』を完成した直後から、この重要だが解けない部分について彼は悩み、それが後期の哲学の再開につながったと考えられます。

 

興味がわいたら Bookguide

『ウィトゲンシュタイン〈1〉〈2〉―天才の責務』

レイ・モンク 岡田雅勝:訳(みすず書房)

 

天才哲学者の奇行のエピソードも含め、ウィトゲンシュタインの人生に興味を持つ人に最適の書。著者はウィトゲンシュタインの死後まもなく生まれた哲学研究者だが、ウィトゲンシュタインに関する最も信頼できる伝記。上巻〈1〉は世紀末のウイーンの大富豪の家に生まれ、工学の勉強をしながら『論理哲学論考」を完成。片田舎の教師を経て、ケンブリッジ大学で再び哲学研究を始めるまでを描く。ケンブリッジ大学でウィトゲンシュタインを出迎えた近代経済学の祖、ケインズは知人に宛て「さて、神が到着した」と感動的な手紙を書き綴っている。下巻の〈2〉は2作目の著作「哲学探究」を完成させその死まで後半生を描く。

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(本オーサービジットは2015年2月に実施されました)