論理学・分析哲学・言語哲学

20世紀の大哲学者ウィトゲンシュタインの「哲学と一致させた人生」の謎に迫る

六甲学院中学・高等学校オーサービジット

『ウィトゲンシュタインはこう考えた』を読む

鬼界彰夫先生 筑波大学 人文・文化学群 比較文化学類 現代思想コース/人文社会科学研究科 哲学・思想専攻

 

高校生との対話、高校生の声〜大学の計算機科学などの学科ではウィトゲンシュタインを教えますか

Q:20世紀の言語哲学とコンピュータがこんなにも密接につながることが驚きです。今、大学の計算機科学などの学科ではウィトゲンシュタインを教えるんですか。

 

A鬼界先生:教えます。本来、計算機科学をきっちりやるには、『論考』の概念を知らないことには話にならないからです。今の科学基礎論の学会では、計算機科学者、論理学者、ウィトゲンシュタイン研究者が一緒になってシンポジウムを行ったりもします。しかし、近年教えない大学が増えてしまっています。それは残念ですし、日本の計算機科学や、IT(情報技術)にとってはあまり良いことではないかもしれません。

 

Q:ウィトゲンシュタインの考えなどの上にあるコンピュータと今の最新のコンピュータとの違いはなんですか。

 

A鬼界先生:基本的変わらないと思います。違いがあるとすればそれは、記憶容量と計算スピードが格段に上がったことだけです。今のコンピュータは、1秒間に数億回もの計算をするから、すごいことをやっているように見えるだけなんです。ただ、参考までに言うと、近年の人工知能の考え方を支えているプログラムは機械学習です。ここで出てくる深層学習の考え方は、人間の脳細胞のネットワークをモデルにしていますので、こちらは、新しい動きですが、それもこれまでの考え方の上に乗っていることには変わりはありません。

 

Q:コンピュータに心が宿るようになるでしょうか。

 

A鬼界先生:人の心をどう捉えるか、ですね。ある種の素振りを感情プログラムとして入れると、適切なときに泣いたりできるようになるのでしょう。それは心のシミュレーションと言ってよいかと思います。

 

 

左から  松本周くん、平野結士くん、鬼界彰夫先生、安田航一朗くん
左から  松本周くん、平野結士くん、鬼界彰夫先生、安田航一朗くん

オーサービジットに参加して

安田航一朗くん

まず哲学者に対する考えが変わりました。「哲学」という学問は、普通の人間の生活や思考とは隔絶されたもので、我々には到底理解できないことだと決めつけていました。確かに、哲学は難しいです。しかし、そこには、一人の人間の人生を通したドラマがあるということも忘れてはならないとわかりました。また僕はいろんな国の言語に興味があるので、「言語哲学は我々の言語生活にどんな影響があるんですか」と質問をぶつけました。その質問は、なぜそもそも我々の使う言語が、美しくこんなにも鮮明に世界を記述・描写できるのかという問いに変わっていきました。言語と世界で起こっているできごとの論理形式が類似しているので描写できるという、鬼界先生の言語哲学としての答えは、とても面白いと思いました。

 

松本周くん

僕は鬼界先生の本をすべて読み切る自信がなかったので、ウィトゲンシュタイン前期の『哲学論考』の「言語をめぐる思考」について考え続けることにしました。その理解が深まったと思います。また、オーサービジットの講義で、ウィトゲンシュタインの前期から後期の中間の期間があったことを知り、そこから後期のウィトゲンシュタインの思考について、もっともっと知りたいと思うようになりました。本当に貴重な機会になったと思います。

 

平野結士くん

今回哲学に関する本に初めて挑みましたが、先生の話は面白く、その読み方を知る、最高の機会になりました。

 

六甲学院中学・高校生によるブックガイド

『世界の文字の図典』

世界の文字研究会編(吉川弘文館)

この本とは、小学生の頃に出会いました。この本がなぜか小学校の図書館にあって、単純にそこで説明されている文字がとてもきれいだったので、図書館に行けばいつもそれを開いて読んでいました。その内容は、題名の通り世界の文字について書かれているのですが、それぞれの文字の関連性がはっきりと分かることも出来るというのが素晴らしいと思います。

 

私の学校には、卒業生からいただいた文字の書かれたパピルス(?) があって、そこに書かれている文字が何で、どういう意味の文章なのかという問題に今取り組んでいるので、この本は欠かせません。そして、この本は英語だけを外国語だと考えていた私の固定観念をぶち壊したものすごい本だと思ったので、この本をお勧めしたいと思います。分厚くて、一見難しそうですが、気が向いたときに読んでみるのがいいかもしれません。是非手にとって、人類が作り出した「美」を感じてください。(安田航一朗くん 中3)

 

『大学で大人気の先生が語る〈恋愛〉と〈結婚〉の人間学』

佐藤剛史(岩波ジュニア新書)

一見恋愛という言葉が入っている時点で人からどん引きされるような題名なので、異性に興味がある人が好みそうな内容の本だと思われるかもしれない。しかし、この本に異性とどんな方法で交際すればいいかといった青少年の心をくすぐるような内容は書かれてない。

 

結婚のメリットとデメリットを比較してどちらがいいかとか、相手の男性の経済力の問題などを例に挙げて、結婚についてどのようなとらえ方をすればいいか述べるなど、どのように異性と真剣に向き合い、人生をより有意義にしていくかについて書かれている。人生をどう生きればいいかと悩んでいる人に、これからの人生に大きく関わるであろう異性に対してどう向き合えばいいのか書かれたこの本をお勧めしたい。(平野結士くん 高1)

 

『暗号解読』上・下

サイモン・シン(新潮文庫)

「暗号について学ぶ」には二つの側面があると思います。一つ目は「どのようなプロセスで暗号が作成されるのか」、また「どのようにすればその暗号を解読できるか」というような数学的な面です。二つ目は「暗号はどのような発展をとげてきたか」や「ある暗号の開発者、また解読者はどのような生涯を送ったのか」というような歴史的な面です。

 

僕は以前読んだ、暗号について扱っている別の本では数学的な面しか扱っておらず、この本では数学的な面だけでなく、歴史的な面でもこんなに面白いのかと思いました。暗号の歴史はあまりにも豊かで、この本に書かれていることがすべてではありませんが、暗号の進化や暗号が歴史に及ぼした影響についてしっかりと論じられて、とても読み応えがあります。

 

よく本屋にある「難しい箇所をうまい具合にごまかして、読んでいる人にわかった気分にさせる」本の類ではありません。ですからこの本は「暗号について勉強してみよう!」という人には恰好の入門書だと思います。(松本周くん 高1)

 

(本オーサービジットは2015年2月に実施されました)