科学技術政策、情報学/人工知能

超スマート社会実現に向け、力を入れ始めた国の人工知能研究政策

栗原潔さん 文部科学省 研究振興局 参事官(情報担当) 

第3回 超スマート社会とは?~国内最大級の人工知能(AI)研究拠点を創設

国を挙げての超スマート社会の実現へ

そうした厳しい状況を受け、日本は大きな方向転換を求められています。内閣府CSTI(総合科学技術イノベーション・会議)は、第5期科学技術振興計画を出し、2015年閣議決定され、政官一丸となって取り組みを始めました。そこで国挙げての超スマート社会の実現が掲げられました。

 

超スマート社会とは何でしょう。人工知能、IoTセンサのネットワーク、ロボティクスなどを中核とした次世代の社会システムにより、社会の様々なニーズにきめ細やかに対応で. き、あらゆる人が質の高いサービスを受けられ活き活きと生活できる社会のことです。IT技術でより効率の良い社会をめざしたのがスマート社会ですが、超スマート社会では、これをさらに発展させ、ネットワークの高度化、ビッグデータの高度な活用、革新的な人工知能技術の発展等により、サイバー空間と現実空間の融合が進展し、より豊かな社会となることをめざします。

 

これまで社会は、(1)狩猟(2)農耕(3)工業(4)情報化社会と進展しました。この4つの時代に続く、来るべき社会を「超スマート社会」と位置づけています。第5期科学技術計画ができ、国は大きく舵を切りました。遅ればせながらという感もありますが、情報技術への急激な進化こそが、世界を、また我が国の発展もドライブすると考えています。

 

 

理化学研究所に人工知能研究の拠点

 

人工知能技術が高度に発達し、人とロボットが共生し、様々な社会的なサービスを享受できる超スマート社会の実現のために、新しい中核的拠点が必要です。そのために文科省は、人工知能/ビッグデータ/IoT/サイバーセキュリティを統合した研究体制のためのAIPプロジェクトを進めてきました。2016年4月、理化学研究所に、「革新知能総合研究センター(AIPセンター)」を創設しました。このセンターには機械学習の理論をはじめとした関連分野の優秀な研究者、特に若手の卓越した研究者を集結させており、革新的な人工知能技術を開発して科学研究の進歩や実世界への応用に貢献することをめざしています。

 

 

興味がわいたら

『パーソナルコンピュータを創ってきた人々』

脇 英世(SBクリエイティブ)

私が中学生・高校生の頃に非常に好きだった雑誌連載をまとめたもので、IT業界の生ける伝説の人々の素顔とエピソードが魅力的に語られている書籍。マイクロソフトのビル・ゲイツ、ポール・アレンにはじまり、アップルのスティーブ・ジョブス、スティーブ・ウォーズニアック、ペプシから移籍したジョン・スカリー、オラクルのラリー・エリソン、LINUXのリーナス・トーバルド、ダイナブックのアラン・ケイ等。しかし、この本の素晴らしい点はこういったIT成功譚で一般的に語られる機会のあまりないドナルド・クヌース、ビアルネ・ストラウストラップ、ビル・ジョイ等の本当に世に貢献した天才たちに触れているところで、この分野のイノベーションの土壌を理解しやすく、また一つの人生の指針にもなる内容です。

[出版社のサイトへ]

『深層学習』

谷貴之(講談社サイエンティフィク)

私が本書を購入した2015年は「人工知能」なる単語を冠して様々な書籍が出版され「深層学習」がバズワードとしてもてはやされている中で、自身で実際に深層学習のコーディングもしてGPU環境で実装してみることで技術の一端を理解することができたと感じたもの。理論的に明快に簡潔に、しかし、SGD・オートエンコーダ・cNN・RNN・RBMと基本的な技術を俯瞰して親しむための(本書を含む「機械学習プロフェッショナルシリーズ」全体がそうであるが)素晴らしい書籍です。

[出版社のサイトへ]

こちらも中高生におススメ

『昭和史』

半藤一利(平凡社)

学生時代に読んで以来、何度も読み返してしまう書籍。体系的に日本史の授業で学べない昭和史に触れられるとともに学ぶべき歴史的教訓も示唆が深いですが、それ以上に、詳細な筆致から多様な人物が歴史を紡いでいく様子が感じられて、自らも貢献できるような存在になりたいと感じさせる迫力があります。

 [出版社のサイトへ]