HCI(ヒューマン・コンピュータ・インタラクション)、グループウエア

あふれる身の回りの問題を情報技術で解決したいと常に考える

福島拓先生インタビュー

大阪工業大学 情報科学部 情報メディア学科

◆先生のご研究について教えてください。

言語や文化、知識などが原因となって存在する、人々の間にある様々なバリア(障壁)を越えるための情報システムの研究開発をしています。私の研究では、情報学分野やその関連分野で開発された様々な技術と、心理学や社会学などの他の分野との知見を融合して、より人が目的を達成しやすい情報システムを目指しています。

 

具体的には、様々な分野の知見を合わせて、「本当の目的」を達成できる情報システムの研究開発をしています。その際、複数の人が協力して新しい価値を創造するための支援を行う、協調作業支援の分野の知見を生かしています。

 

例えば、多言語間対話を支援するときには機械翻訳を使うのが一般的です。機械翻訳のアプローチとしては「相手に伝えたいことを正しく翻訳する」ことで多言語間対話を支援しています。しかし、伝えたいことが自分の中であいまいで、言葉にすることが難しい場合もあります。このようにして作成された文章は同じ言語でも正しく伝わらない場合もありますが、機械翻訳は文章の翻訳のみを対象としているため、意思を正しく伝える支援を行うことは困難です。

 

つまり、「相手に伝えたいことを正しく伝える」ことが対話において本当の目的であることが見えて来ます。この内容を実現するために、今回紹介した研究では、機械翻訳のように自由に文章で伝えるのではなく、あらかじめ正しく伝達できる翻訳文の対や画像を用意しています。結果的に、正しく伝達できる情報のみに使用できる内容を限定することで、正確な意思伝達を実現しています。翻訳文の対や画像は、様々な立場の人に協調作業を行ってもらうことで正確性を担保しています。

 

ただし、このしくみを全ての分野に合わせるのは非常にコストがかかるため、どのような分野の内容であっても翻訳が可能な機械翻訳のアプローチも重要です。私のアプローチでも、伝える内容がシステム内に存在しなかったときのために補助的に機械翻訳を使用しています。対象に合わせてケースバイケースでアプローチを考え、使用する技術や知見を変えていくということを研究では行っています。

 

◆この分野に関心を持った高校生がより深く知るための、具体的なアドバイスをいただけますか。

 

私の研究室で行っている研究の多くは、散策支援、整理整頓支援、インターネット依存症改善支援など、身の回りにある課題を解決する研究となっています。身の回りには大小様々な問題があふれていますが、それらに対して、「情報技術を活用すれば解決できないかな」と常に考えています。 

 

みなさんも、まずは、自分の身の回りにどんな問題があるかを探してみてください。自分や家族、友達や近所の人などが困っていることはありませんか。その問題は、情報技術を使えば解決できませんか。すぐには思いつかないかもしれませんが、たまに思い出して考えてみると、いいアイデアが浮かぶかもしれません。

 

情報システムのいいところは、PCがあれば様々なものを作り出すことができる点です。また、Webには核技術についての詳しい解説も多くあります。大学生にならないと作ることができないというものでもありませんので、アイデアが浮かべば、ぜひ作ってみましょう。

 

◆研究室での学生指導はどのようにされていますか。

 

研究対象について深く観察し、常に考えることを指導しています。学生は、教員の方が知識があり、教員の言ったことが常に正しいと考えがちです。それは必ずしも間違いではないのですが、学生の方がいいアイデアを出せる場合も多くあります。このため、研究対象をよく観察して、どうすればいいかを自分の頭で考えてもらうようにしています。その考えた内容をもとに、いっしょに研究をブラッシュアップするようにしています。

また、人はすぐに忘れる生き物ですので、どんな些細なことでも、すぐにメモを取るようにということは常に言っています。

 

◆先生のHP

http://taku.fukushima.jp/lab/

 

興味がわいたら

『スタンフォードの自分を変える教室』

ケリー・マクゴニガル 神崎朗子:訳(大和書房)

主に心理学分野の内容を取り扱った書籍ですが、人の行動を変えるために必要な意思とはどのようなものかがわかりやすく記載されています。例えば、目標を立てる際に「1日に○時間勉強をする」よりも、「今日と同じだけ勉強をする」とした方が、無理なく継続できる目標になるなど、具体的な例をユーモアを交えて書かれています。

 

人に使ってもらうシステムは人を動かすための仕組みが必要になることも多いため、このような知見はとても重要になります。人に使ってもらうシステムを作るエンジニアの人は読んでみると面白いアイデアが出てくるかもしれません。もちろん、本来の想定読者である、自分の行動を変えたい人にもお勧めです。

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『失敗から学ぶユーザインタフェース』

中村聡史(技術評論社)

情報システムは、目的を達成できることが重要視され、ユーザインタフェースは軽視されてしまうこともあります。しかし、情報システムは人に使ってもらうものですので、人間の思考プロセスに合わせたユーザインタフェースを作ることは非常に重要です。この書籍では実際に存在する失敗例を見ることで、どのように改善すればいいかがわかりやすく説明されています。人に使ってもらうシステムを作るエンジニアを目指している人にお勧めします。

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『AIの遺電子』

山田胡瓜(秋田書店)

人間に似たロボットであるヒューマノイドが登場するSF漫画です。人工知能が発展し、社会に溶け込んだ近未来において起こりえる問題が描かれています。

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先生の研究を知る

[HCI(ヒューマン・コンピュータ・インタラクション)、グループウエア]

外国人患者と医師との意思疎通を助ける、人間と協働する翻訳システム

福島拓先生 大阪工業大学 情報科学部 情報メディア学科