タイムトラベルは可能か

~その実現に向けて研究する大学も紹介

今井元先生 元日本女子大学 理学部

第2回 時空間を超えるにはどれだけのエネルギーが必要か

タイムトラベルには、過去に行くものと、未来へ行くものがあります。小説や映画ではいずれの場合も搭乗した人物がその時点(現在)での年齢を維持したままで、時間旅行するものがほとんどです。

 

時間旅行をする場合、どこまで過去を遡れるか、また、どこまで未来へ行けるかが疑問になります。過去に遡る場合ですが、宇宙誕生のおよそ130億年前まででしょう。それより以前は宇宙が存在しないからです。ですが、最近の議論ではマルチバース(複数の宇宙)という概念が出ています。これによると宇宙は1つではなく、多数あるということですが、タイムマシンでそれらの宇宙間を旅行できるとなると遡る時間の制約はなくなるかもしれません。

 

未来へ行く方ですが、宇宙が消滅するまでと考えるのが妥当でしょう。それとも、地球が滅亡するまででしょうか。最初のタイムマシンの小説では80万年後としていましたが、この数値は地球の滅亡(およそ50億年と言われています)に至らないので、設定としては良いかと思います。もっとも、文化人類学では一つの文明は長続きしない(ある説では1000年)と言われていますので、80万年では人類の文明はすっかり変わっているでしょう。

 

タイムマシンで過去に遡ることを、映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』を例として考えてみます。この映画ではデロリアンという自動車型タイムマシンを博士が発明します。時間旅行をするために最初は核エネルギーを使い、マシンの速度を上げて時空間を旅します。映画ではマシンが超高速になった時に異変が生じるということになっています。では、時空間を超えるということを以下の仮説で考えてみます。

 


 

時空間を考えると、下図のように現在から過去へとその時空間が離散的に進んでいるとします。その空間が現在を起点に過去に遡るとそれぞれの時空間が光速:3×108m/sで離れていくと考えます。その過去の時空間に到達するためには光速を超える速度が必要になります。アインシュタインの特殊相対性理論では光速を超えることは不可能ですので、過去を遡ることは不可能になります。これでは面白くありませんので、もし光速を超えることができるとしたら、どのくらいのエネルギーが必要かを計算します。物質の静止エネルギーは特殊相対性理論から(質量) × (光速) 2です。核燃料がこの映画の場合には、たかだか1kgとしますと、そのエネルギーは約1017ジュールとなります。タイムマシンの質量を1tとして、そのエネルギーがすべて運動エネルギー:1/2(質量) × (速度) 2になるとすると、速度は約107m/sとなり、光速を超えることができません。もっと核燃料が必要ですね。

 

注)図中の丸はある時点での時空間を表しています。赤丸を現在とし、未来から過去への流れを示しています。実線は確定している時空間で、破線はこれから確定する時空間を示します。過去の方向ではたとえば数時間前、数日前の事象が現在から遠ざかっています。

 

では、未来へ行くことはどうなるでしょうか。『バック・トゥ・ザ・フューチャー』では、最初は行けるという設定でしたが、3作目のラストシーンでは、未来はこれから君たちが作るのだから白紙だとしております。その考えに立つと、過去の時空間では事象が確定していますが、未来は未確定、つまり何も定まっていないとなります。これでは未来への旅は無意味となるかもしれません。未来へのタイムマシンは、現在の時空間は光速で移動していますので、時間を止める、時間の進みを遅くする(光速に近い速度で移動する)ことになります。この方法を用いると過去、現在、未来と自由に行き来ができそうです。

 

連載つづく・・・

 

今井先生 プロフィール

今井元先生 元日本女子大学理学部/元富士通

 

香川県立丸亀高等学校卒、東京大学工学部電気工学科卒、東京大学大学院工学系研究科電子工学専攻修了。株式会社富士通研究所を経て日本女子大学理学部教授、現在名誉教授。

 

専門は、半導体工学、特にⅢ-Ⅴ族化合物半導体を用いた半導体レーザダイオード(LD)。LDは通電することでレーザ発信して単色光を発する小さい素子です。光ファイバー通信用光源には赤外光、DVDには青色光、ポインターには赤色光が使われます。科学の研究者にならなかったら、音楽家とか医者とか夢はたくさんありました。子供のころは花火が大好きで花火師になりたいと思っていました。