計算社会科学/ソフトコンピューティング

グローバル化で、あなたも闇社会とつながっている!地球規模のブラック企業をつきとめる数理モデル化の研究

水野貴之先生 国立情報学研究所 情報社会相関研究系

/総合研究大学院大学 複合科学研究科 情報学専攻

最先端の数学を取り入れたコンピュータ計算の方法である、ソフトコンピューティングを用いて、経済の問題に挑みます。国立情報学研究所の水野先生は、数理モデル化という情報学のテクニックを使って、私たちの手元にある製品が、地球の裏社会に巣食うブラック企業・コミュニティとつながっていることを、暴き出します。グローバルな悪とは何か。闇社会の汚れた手に加担しないために、情報学を駆使したどんな解決策があるのでしょう。 


知らず知らず地球の裏側の悪い企業と我々はつながっている!?

現在世界中で進行しているグローバリゼーションは素晴らしいことです。いろんな国の人と友だちになれますし、日本では作れないものを他国から手に入れることができます。しかしよいことばかりでしょうか。私の手元にあるスマホなどの原料の多くは、紛争で揺れる地域から採掘されます。石油製品の原料の石油は中東諸国で、スマホに使われる希少金属レアメタルはアフリカ諸国でしか採れません。こうした原料を供給する製品の上流には、いろいろ困った問題があります。小さな子どもが考えられない労働条件で不当に働かされています。規制の緩い途上国で、人権侵害、環境汚染、紛争に加担し、巨大な利権を得るブラック企業・コミュニティが存在します。

 

一方、メーカーである製品工程の下流の人々は、安い仕入先には問題があると薄々知っていても、地球規模の闇には目をつぶってでも、できるだけ原料を安く買おうとします。つまり、皆が利潤を追い求めることで、地球の裏側の悪い企業と我々は数珠のようにつながっていると考えられるのです。

 

地球の裏側の悪い企業と我々はつながっている!?
地球の裏側の悪い企業と我々はつながっている!?

 

私は、グローバリゼーションの何が問題なのか、数理モデル化という最新の情報学テクニックを用いて、追跡しました。その結果、先進諸国と、原料供給の上流とをつなぐ世界のグローバルネットワークを描き出しました。

 

数理モデル化という情報学のテクニックを使って、描き出された世界巨大ネットワーク!
数理モデル化という情報学のテクニックを使って、描き出された世界巨大ネットワーク!

 

さらに世界中のありとあらゆる事件・ニュースを収集し、具体的にネットワークのどこで人権侵害、環境汚染、紛争への加担が行われているか、徹底的な洗い出しをしました。その結果、ほんとうに真っ黒なブラックコミュニティを発見しました。

 

ネットワーク分析で、悪い企業からの原料の流れを洗い出せ

さらに、これらの企業と我々とを知らず知らずのうちにつないでいる媒介者を探しだしました。それは、金属の製造業であれば、これを精錬する少数の精錬所だということがわかりました。これらの精錬所のずっと上流には悪い企業が存在し、これらの精錬所からG8(主要8か国首脳会議)の国々の製造業に原料が流れていたのです。

 

無責任な採掘業と商社をつなぐのは、少数の精錬所。商社の先には、G8の製造業につながる
無責任な採掘業と商社をつなぐのは、少数の精錬所。商社の先には、G8の製造業につながる

 

 

ここまで明らかになった以上、解決策には何をすればよいのでしょう。精錬所から原料を買わなければ済む問題ではありません。そもそも原料は問題のある地域でしか採掘できません。そんなやり方では、ブラックコミュニティは裏に隠れてしまうだけです。そうではなく、「ブラックコミュニティを形成する無責任な採掘業者を責任を持って是正せよ」と、媒介する少数の精錬所に要求することがまず1つです。

 

もう1つの重要なことは、ブラックコミュニティを知らず知らずでもつながっている我々先進諸国自身の責任を、どのように果たすべきかです。そのためには、ネットワーク分析を通じて、採掘業から製造業まで取引履歴のすべてを洗い出すことです。それでつながりが明らかになったG8の国々の責任ある企業は、必要に応じて上流の不当労働や環境汚染などの改善のための金銭的な支援を行うべきでしょう。そのような情報処理技術を駆使した解決法で、世界を変えていくことが必要と思われます。

 

水野先生ミニインタビュー

◆先生は研究テーマをどのように見つけたのかを教えてください。

 

2015年の新春に、ISISにより日本人2名が拘束されました。テロリストの手にはナイフ、そして彼は「8500km離れているけど、そばにいる」ようなこと言いました。そのとき、私の持っているスキルで、世界が平和になる方向に何かできることはないかを考えました。なぜ、彼らは、そばにいるのでしょうか。世界は6人の隣人で繋がっているというが、紛争地と我々も6人で繋がっているのでしょうか。そうであれば、紛争地で採掘された鉱物を我々は買い、我々のお金は人を殺す資金源なのでしょうか。人工知能や複雑ネットワーク科学は、複雑な関係性を解くことができるツールです。これらを応用すれば、問題が解決できると考えました。

 

◆指導してきた学生は、どんな仕事をされていますか。

 

金融機関やIT企業、また、海外の大学院に留学した卒業生がいます。金融業界は情報が溢れており、新規の情報ほど価値があり、大学で学んだデータ処理のスキルが発揮できます。また、IT企業では、どのようにデータを加工すれば社会が欲する商品になるのかを考え、商品を生み出す仕事をしているそうです。留学した卒業生は、データサイエンスの研究者として一線で活躍しています。

 

◆高校時代は、どんなことに熱中していましたか。

 

とにかく大量にテレビゲームとパソコンゲームをしていた記憶があります。あまりにやっていたので、お正月にゲームソフトの福袋を買って、全てクリア済みのソフトだったことがあります。ただ、物理や数学もパズルゲームのようだったので、同じくずっとしていました。

 

◆先生のHP

水野研究室 http://research.nii.ac.jp/~mizuno/

水野先生のツイッター https://twitter.com/takamizuno

 

水野先生おススメ BOOK etc.

日経ビジネス、Youtube(TED Talks)、BBC、CNN

グローバルリーダーが何を考えているのか、グローバルリーダーが描く夢はなんなのか、世界で今何が起きているのかを掴むことが何よりも大切だと考えています。このようなグローバルな世界で、自分は何ができるのか、自分が何を成し遂げたいのかを日々考えながら、これらの情報に触れることを大事であると思います。これらの情報は、基本的には客観性も持って書かれていますが、グローバル問題は二面性を持っており、立場が変われば主張は180度変わり、どちらがよいとは言えません。このような客観性を、これらの情報から学ぶことも重要です。

 

科学雑誌Newton

最新の科学技術に触れることができ、人類の未来にワクワクすることができます。空想ではなく、実現可能な人類の夢を考えたい方にオススメです。

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RPG(テレビゲーム等)

コツコツと一歩ずつキャラクタを育て、困難なイベントをクリアし、最後に世界を救うという体験を、膨大にあるRPGを大量にこなすことにより獲得することができます。将来、泥臭く研究を行い、その成果をもとに国際機関等に提言を行い、世界を良い方向に変えていこうと思う方にオススメです。

 

週刊少年ジャンプ

毎週飽きさせないワクワクするシナリオを、友情・努力・勝利という、誰が考えてもクリーンな正論で構築する考え方が学べます。

 

『学校では教えない「社会人のための現代史」』

池上彰(文春文庫)

世界で何が起きているのか、グローバル問題を知ることができる。グローバル社会で活躍したい方にオススメです。

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RPG(テレビゲーム等)や「週刊少年ジャンプ」は、主人公の行動を追体験するように読むことでしょう。一方で、教科書に出てくる過去の出来事は、追体験というよりも、ある種、他人事のように、情報として記憶するのみでしょう。将来、教科書に出てくるような事を、自身が実践してみようと思うのであれば、どのように実践すればよいのか、過去に実践した人々の行動を追体験しておく必要があります。例えば、『学校では教えない「社会人のための現代史」』を、自分だったら、このとき、どのような決断をするのであろうかと考えながら読み進めることが重要です。

 

計算社会科学/ソフトコンピューティングでリードする大学・研究者