グループウェア

いっしょに食べるからこそ食事は楽しい!「時差共食」を提案するグループウェア研究

野口康人先生 聖徳大学 短期大学部 総合文化学科

 

独りで食事をする「孤食者」が増えています。野口先生は、場所や時差を越えて同じタイミングで食事をできるように、コンピュータネットワークを活用したグループウェア研究に取り組んでいます。距離的に遠く離れた人、離別経験を経て独りぼっちになってしまった人を癒す、どんな方法があるのでしょうか。


遠隔地の人と、同じペースで食べ、コミュニケーションを活性化!

近年、独りぼっちでさびしく食事をする「孤食者」は珍しくありません。単身赴任、遠隔地の大学進学者のアパート暮らし、配偶者をなくしたお年寄りなどなど…。これに対して、家族や親しい人といっしょに食事をすることを「共食(きょうしょく)」といいます。食事は、栄養補給だけでなく、だれかと仲良くなれる、楽しい感情が持てる、または生活リズムを健康に保てるなど、様々な社会的な効果があります。

 

そこでこれらの問題解決のために、私は、遠く離れた場所に住む人同士がいっしょに食べる「遠隔共食」を提案しています。その方法とは、インターネットを利用して、共食相手が食事をするビデオメッセージを再生し、その映像を見ながら離れた場所や時差を乗り越えて一緒に食べるという「時差共食」というやり方です。

 

 

しかし単にビデオを再生するだけでは、いっしょに食べているという感覚はなかなか得られにくいと思います。そこで私は、ビデオの人と共食者本人の食事の進み具合を同調させることを考えてみました。

 

ビデオの中の人と食事の進み具合を同調させている
ビデオの中の人と食事の進み具合を同調させている

 

そのために食事中の2人の食事残量をセンサで計測しつづけます。2人が同じ速度で食べている場合は、ビデオを通常の再生速度で、ビデオの人の食事が遅れているようなら高速再生し、一方逆に食事が進みすぎているようなら低速再生に切り替えるという方法を開発しました。再生速度を変えている場合でも、違和感のないようにビデオの中から話しかける人の声だけは、通常の速度で再生しています。

 

死別した人といっしょに食事する、未来の共食

そしてこの時差共食の行動を分析してみました。その結果、食事の進み具合を同調させることによって、ビデオに話しかける共食者の1人の会話が弾み、コミュニケーションが活性化されることを見出したのです。

 

このビデオメッセージの再生速度を調整するような方法では、まだどうしても違和感がぬぐえないと感じる人はいるだろうと思います。時差共食が普及するには、越えなければならないハードルはあるようです。

 

しかしここでちょっと未来に想像力を巡らせてみてください。例えば将来、宇宙定住が当たり前になったら、遠い宇宙の親しい人との共食はどうしたいいでしょう。かけがえのない人と死別を経験した人は、その人との楽しかった共食経験を取り戻すことができるのかもしれません。アニメキャラとのバーチャルな共食経験をするシーンを考えてみるのも、けっこう面白いと思います。人の心を癒す方法の一つとして、時差共食は大きな意味を持つだろうと思っています。

 

野口先生ミニインタビュー

◆高校時代は、どんなことに熱中していましたか。

 

高校生の頃、ちょうどインターネットや携帯電話が普及してきた頃だったため、今の高校生がSNSに夢中になるように、インターネットを通したチャットやお絵かきサイトに夢中になっていました。匿名でやり取りできること、遠隔地にいる人と親しくなれることが非常に新鮮でした。当時インターネット自体が従量課金で限られた時間しか使えなかったため、余計にのめり込んだのかもしれません。「ネチケット」という言葉も出始めて、顔も知らないチャット相手のレスに一喜一憂していたことを覚えています。今思えば遠隔コミュニケーションに興味を抱いた大きなきっかけだったと思います。

 

興味がわいたら

『甘々と稲妻』

雨隠ギド(アフタヌーンKC)

妻を亡くした高校教師・犬塚公平とその娘・つむぎが、親の多忙により一人で食事をとりがちな孤食の女子高生・飯田小鳥と、とあるキッカケから一緒に料理を作り、食卓を囲むことで「共食」の楽しさや喜びを味わう姿を描いた、あったか食卓ドラマ。普段何気なく行なっている「一緒にご飯を食べる」という行為が我々にとってかけがいのないものだとあらためて気づかせてくれます。グループウェアは人のあらゆるコミュニケーション行動を支援するためのものなので、人間の様々な行動に研究のヒントが隠されています。

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『図書館の魔女』

高田大介(講談社文庫)

ファンタジー作品で、この世界とは違った図書館を舞台として面白い世界観が広がっています。「ことば」について改めて考えてみる良い機会が得られます。普段から図書館を利用している人、興味がある人にオススメ。

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『図書館の主』

篠原ウミハル(芳文社コミックス)

近寄りがたいけど有能な児童図書館員とその周りの人々を描いた作品。展開されるドラマが面白く、時に感動の涙を誘うような心が温まるストーリーも。「図書館司書」の仕事の一端を知ることができます。

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『夜明けの図書館』

埜納タオ(ジュールコミックス)

市立図書館で働く新米図書館員の奮闘記。図書館司書が利用者の様々な悩みや調べごとに悪戦苦闘しながら解決していくストーリー。『図書館の主』とともに「頼りになる図書館」像が見えてきます。

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図書館にまつわる作品を3冊挙げました。私の研究の専門はグループウェアですが、広く捉えると図書館情報学の学問分野を学んできました。図書館情報学は大雑把にいうと図書館をモデルとして情報学を捉える学問です。図書館の存在意義は全学問分野に通じます。大学や大学院で自分の研究を進める際、自分で求める文献や情報を探すことは当たり前ですが、その時に心強い味方になってくれるのが図書館です。また、必要な情報を探すための知識や方法は、研究を進める場合だけでなく、どの職業に就いても必ず役に立ちます。高校生のみなさんには、今のうちに、図書館を有効に活用する方法についてぜひ興味を持って欲しいです。

 

『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX』(アニメ)

原作:士郎正宗

もはや近未来SFの王道ともいえる作品となったが、今でも色褪せないワクワクするリアルな未来を垣間見ることができます。この先の未来を知りたい、考えたいと思える人にオススメです。

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グループウェアでリードする大学・研究者