18歳から始まる選挙のためにも

 政治学

Part3 民主主義を考える

〜皆が政治参加し、望ましい社会を構築するために

谷口尚子先生 慶應義塾大学 システムデザイン・マネジメント研究科

第8回:自分の利益を反映させるためにも、政治に参加しよう

民主主義のフリーライド(タダ乗り)を少なくし、投票率を向上させるためには、投票すれば利益が得られるようにする必要があります。

 

投票参加を「R=P×B-C+D」という数式で表現したものがあります。Rはreward、有権者が投票参加から得る利益です。Pはprobability、自分の票が結果に影響する確率です。Bはbenefitで、政党間期待効用差を指します。

 

例えばある選挙区に、有名で人気のある現職と無名の新人が立候補しているとしたら、有権者は前者が当選する可能性が高いと考え、「自分が投票しても結果は変わりそうにないから、棄権しよう」と思うかもしれません。逆にどちらが勝つかわからない接戦の選挙では、「自分の1票が結果を左右するかも」と思い、投票意欲が高まる可能性があります。また、政策が大きく異なる政党の候補者が2人立候補している場合、どちらが当選するかによって政治は大きく変わるので、投票意欲が高まりそうです。しかし政策に差がないと、どちらが勝っても政治はあまり変わらないので、投票意欲が上がらないかもしれませんね。これが、政党間期待効用差の影響です。

 

そして、Cはcostです。投票には必ず「面倒」というコストがかかります。投票所に行かなくてはいけませんし、政治のことを考えなければいけません。そしてP×B-Cだと大抵の場合に投票利益はマイナスになってしまうので、D、すなわちDuty(市民としての義務)またはDemocracy、すなわち民主主義を守る長期的な利益を感じることが大切になってきます。

 

 

また、自分の利益を反映させるためにも、政治に参加すべきです。

 

投票率を年代別にみると、これまで若い人の投票率が最低でした。ところが新たに選挙権を得た18歳・19歳の投票率は20代より上で、30代と同等でした。18歳のときは、高校でシチズンシップ教育を受けたから投票に行くけれど、卒業したら投票に行かなくなるということのないようにしたいですね。

  

 

というのも、投票に行かないと、若い世代にとって「負のスパイラル」が生じます。民主主義では、選挙で多くの票を得て多くの議席を得た党が政権をとりますから、政府は、選挙で投票してくれるお得意さま、すなわち投票率が高い60代・70代向けの政策をますますとるようになります。若い人が投票に行かなければ、若い人の利益が反映されなくなり、若い人はさらに政治に背を向けてしまいます。それが「負のスパイラル」なのです。

 

民主制では、多様な有権者の間で考え方や利害の対立があることを前提として、その間で選挙を通じて競争したり、議会での議論を通じて合意形成をしていくことになります。例えば世代間にも利害対立があり、前の世代が先送りした「負の遺産」で、後の世代が苦しむこともあります。今の若者も後ろの世代に押し付けていくかもしれません。しかし、そのように立場が違う者の間で争ってばかりいると社会が成り立たないため、調和も重要です。この競争と調和の着地点の模索が民主主義だと思います。

 

現在、次世代の政治的な権利を考えるために、子どもがいる人にはその分多く票を付与するとか、平均余命で重みを付け、これから長く生きる人の票をより重んじるといった制度も検討されています。そういう多様な議論と試みを続けながら、民主主義の社会をみんなで作っていく。ですから、若者も政治に関心を持って選挙に行くことが大事です。

 

そして、大学で政治学を学ぶということは、このように「みんなで共に生きられる社会をどうしたら作れるか?」ということを深く考え、その仕組みを作っていくことに繋がるのです。

 

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