君がいる俳句のセカイ

第6回 スペシャルインタビュー

「エヴァンゲリオン」が登場する俳句の授業って?

~高校時代、大学時代のディープな趣味も研究につながっている

青木亮人先生 愛媛大学  教育学部  国語教育専攻

vol.2 パンクに傾倒した高校時代。大学ではマニアな趣味人に出会う

中学時代は帰宅部、高校時代は軽音楽部

佐藤さん:ご出身は北海道の小樽ということですが、どんな中学校、高校時代を過ごしていらっしゃいましたか。

 

木先生:授業や学校生活はごく普通に過ごしていました。ガリ勉でもなく、体育会系で目立つわけでもなかったです。部活は中学3年間は将棋部でした。なぜかというと、学校唯一の100%帰宅部だったから(笑)。学校が終わってからは小説や映画、音楽、マニアックな雑誌を読んだりと、趣味に時間を使っていました。友達とも遊びましたよ。当時はファミコンがすごく流行ったので、学校では不良と言われている人たちと一緒に狭い部屋の中でひたすらファミコンをやったりしていました…まあ、完全インドア派ですね(笑)。

 

ゼミの様子
ゼミの様子

佐藤さん:学校以外の時間が楽しそうですね。

 

青木先生:高校もあまり活動をしていない軽音楽部でした。年度初めに音楽好きが集まってバンドの真似事をやるのですが、ほぼ帰宅部。その頃はセックス・ピストルズという昔のパンク・バンドが好きで、母親がビートルズ好きというのもあり、洋楽ロックやポップスを家のレコードやラジオなどでよく聞いていました。高校はアルバイトができたので、それでギターを買って、同級生でピストルズを知っている人と一緒にスタジオで演奏したりして、悦に入っていました。

 

高校は自由な校風で私服だったので、パンクファッションみたいな格好をしていたので、周りからは不良と思われたかもしれませんね。髪も金髪やモスグリーンにしてみましたが…今から振り返ると似合ってなかったですね(笑)。

 

大学では文学部へ。でも・・・

佐藤さん:全く想像できない……。そして、大学に進まれるわけですが、学部を決めたきっかけは?

 

青木先生:歴史や文学が好きだったので、文学部を選びました。特に小説などの文学が好きだったので、深く考えずに文学をもっと学問的に深く読んでみたいという理由で国文科に行きました。今から考えると、両親はよく許してくれたなあと思いますね。

 

佐藤さん:大学では真面目な学生でしたか。

 

青木先生:全然ダメ。授業に行かずに単位を落とし、留年しました(笑)。好きな小説の授業には行ったんですが、それ以外の時間はほぼ自分の趣味につぎこんでしまった。東京や関西の大学は各地から人が集まるので、マニアな趣味人に出会える確率が高い。そういうコアな仲間が集まると、話題が完全にディープな趣味の話ばかりになり、それが世界の全てになる。「この前出た『FFS(ファイブスターストーリー)』最新刊、すごいな」「確かに…そういえば、エイフェックス・ツイン(Aphex Twin)の新譜もすごいぞ」といった感じで、もう普通の人とは話ができない(笑)。その点では趣味に磨きがかかったと言えますね。

 

大学でもバンドサークルに入りましたが、音痴なのでボーカルはダメ、リズム感もないのでドラムもベースもダメ。一番浮ついたところでやれるギターしかできないなあ…ということで、高校の時からしていたギターを引き続きやりました。

 

佐藤さん:消去法でギターやる人はじめて聞きました(笑)。

 

青木先生:そのギターも合ってなかったんですけどね(笑)。結局、最後はギターを置いて俳句研究の方に……。

 

佐藤さん:ロックだ(笑)。

 

興味がわいたら

『ゼロ年代の論点』

円堂都司昭(SB新書)

1990年代に大ヒットしたアニメ「エヴァンゲリオン」に端を発した「セカイ系」が、2000年代以降のサブカルチャーに及ぼした影響力を読み解く。

アニメやゲームといった、一見「研究」から遠いと思われるサブカルチャーを分析した好著。自分の感想や解釈を優先させずに、アニメ史や時代の風潮、作品の影響関係などを、できるだけ実際の資料や発言、過去の作品等に接しながら客観的に「研究」しようとした点が知的で、面白い。

1990-2000年代アニメやゲームなどの限られたジャンルの流れや知識を知ることができるが、それより重要なのは、例えサブカルチャーといえども歴史の文脈や経緯があり、一朝一夕に出来たものではないということ、そして普段は何気なく観ていたり、「面白い/面白くない」「合う/合わない」と個人的な趣味で判断したりしていたジャンルの作品でも、制作者や作品にはかなりの細かい意味や可能性、魅力などがあり、それは(自分自身が)面白いかどうかとは違う価値観で成り立っていた歴史があり、作品があることを知的に感じ取ることができる。これは自分自身や近しい人々についても同様で、私の研究する文学研究についても同じことがいえる。そういうことを、アニメという具体的なジャンルで考察したこの本を手がかりに、想像することができる。

[出版社のサイトへ]

『ろくでなしの歌』

福田和也(KADOKAWA メディアファクトリー)

ドストエフスキー、川端康成、バルザック、三島由紀夫といった世界の文豪の生き方や作品を通じて、学校ではまず教わらない「文学」の危ない魅力を玄人が読み解く。

[出版社のサイトへ]

『日本の詩歌』30巻 俳句集 

(中公文庫)

近代~戦後期までの代表俳人の作品を収めた好アンソロジー集。絶版だが、アマゾンや古書店で200円ほどで売られている。

[出版社のサイトへ]

『夏のおわりのト短調』

大島弓子(白泉社)

少女マンガの傑作。思春期の淡い恋愛を描きつつ、他人のわからなさや人生の不条理を垣間見せる。少年ジャンプ系と違う、純文学のようなマンガの世界を味わいたい人にオススメ。

[出版社のサイトへ]

『近代能楽集』

三島由紀夫(新潮文庫刊)

古典能を現代演劇にリメイクした戦後小説。普通の小説と異なり、演劇の脚本のように書かれている。三島の天才ぶりが発揮された近現代最高峰の脚本小説で、本物の「文学」を知りたい人にオススメ。

[出版社のサイトへ]

『魔法少女まどか☆マギカ』(アニメ版)

新房昭之監督・シャフト制作

2000年以降のアニメ界が達成した傑作。バランスのとれたエンターテイメントでありながら、「正義・友情・努力」と真反対の人生の厄介さや難しさを根本に据えた物語で、生きることの複雑さを知りたい人にオススメ。