中卒のカリスマの「ネガポジ就活術」
~貧困、50回の転職を乗り越え、若者の就職支援NPOを設立
黒沢一樹さん NPO法人若者就職支援協会 理事長
第3回 就職できないで困っている若者に答える「ネガポジ就活術」とは

NPO法人若者就職支援協会では、就職に悩む若者に、メンタル面から具体的な就活方法などをアドバイスします。彼らの多くを就職まで導くことに成功した私の手法は、「ネガポジ就活術」という方法です。それは、ネガティブなモノの見方こそポジティブな見方である、という逆転の思考法です。これを用いた就職相談の事例を紹介しましょう。
某私立大学のA子さんは、4年の夏、切羽詰った状態で私のところに相談に来ました。A子さんは、子どもの頃から憧れだった文房具メーカーで仕事をしたと思い、20社以上受けたんですが、内定を一社ももらえていませんでした。会社にエントリーする際に書くシートを見ても、文具が好きだという彼女の情熱は伝わり、内容的に問題は見当たりません。
そこで面談時に、ネガポジ流のカウンセリングを始めました。A子さんに「文房具の嫌いなところはありませんか」と尋ねたのです。最初はなんでそんなこと質問するの? という戸惑った顔でしたが、やがて試験の時シャーペンの芯が出なかった自分の嫌な体験を思いだしました。「仕事でも冷静でいられないのは嫌」という自分の発見があったんです。2度目の面談の時、やっていて楽しい仕事は、お客様との距離が近く喜ばれる仕事ということに、彼女は気づきました。相談を重ねるたびに、文房具メーカーに縛られる必要はないことがわかるようになり、A子さんは就活の幅が広がりました。
某私大の男性Bさんは、理系を生かしエコ関係の仕事がしたいと思い就活をしていましたが、やはり内定が全然もらえませんでした。彼にもネガポジ流のカウンセリングを始めました。Bさんの絶対やりたくない仕事は、肉体的にキツイ仕事や、飲食業などを含め親御さんが悲しむ仕事でした。
私は一度、親御さんと話し合いすることを勧めました。二度目の面談時、親御さんはやはり世間体を気にして安定した仕事を望んでいることがわかりました。親とBさん自身の思いを含めて考えると、肉体労働や非正規雇用だけは絶対イヤだが、それ以外であればやっていけそうという感触を得ました。エコの仕事にこだわっていたBさんですが、今では業界を限定する必要はないと思うようになり、肉体労働はイヤでも、体を動かすこと自体は嫌いでなく、営業職にまで就活先の視野が広がってきました。
このように物事がうまくいかないときは、逆から発想することによって解決策を導き出せるということです。
興味がわいたら

『最悪から学ぶ 世渡りの強化書』
黒沢一樹(日本経済新聞社)
父親が4人、最悪の貧困、継父からの虐待に苦しんだ幼少期…。中卒でブラック企業、ホスト、調理師などの職を転々とした(転職50回! )少年から青年期…。さらには原因不明の病気や自殺未遂…。私の「最悪な」体験をもとに、「ネガティブ要素をポジティブに転化させる思考法」=「ネガポジ・メソッド」を考え出しました。私の生い立ちを紹介し、「ネガポジ」メソッドとは何か、前向きに生きるためにはどうすればいいかなどを、わかりやすく解説した一冊です。
・過去の自分とどうやって対峙すればいいのか?
・コンプレックスを活かすにはどうすればいいのか?
・失敗体験をプラスの経験へ変えるにはどんな方法があるのか?
といったことを考え、人生の選択肢を大きく広げるための観点が書かれています。
以下は、高校生に特に読んでほしい箇所です。
・最悪でなければ、それで幸せ P34
・「かんちがいスイッチ」を押せ P35
・ビジョンに酔うな P72
・依存の話 P144
・普通は怖い言葉 P154
・「無関心ゾーン」にチャンスがある P163
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『ドキュメント高校中退―いま、貧困がうまれる場所』
青砥恭(ちくま新書)
「高校中退」を語らずして貧困問題を語ることはできません。中退者を追跡調査した書で、日本の貧困の闇が事例を交えて書かれています。
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