スーパーマリオブラザースやポケモンGOなどのゲームは、なぜ人を夢中にさせるのか

~日本のモノづくりの推進力になる「ゲームニクス」はキミの発想力も変える

サイトウ・アキヒロ先生

亜細亜大学 都市創造学部 教授/藤田保健衛生大学 客員教授 

第2回 ゲームはなぜ、アメリカでは衰退し、日本ではヒットしたか

テレビゲームというのは、日本から世界に広がっていった日本発のメディアです。昨年のリオオリンピックの閉会式で、安倍首相がマリオになって登場しましたよね。世界にとって、日本のイメージはゲームです。一昔前は、日本と言えばトヨタ、ソニーでしたが、今は任天堂、マリオ、ドラえもんというのが日本を代表しているのです。 

日本が種を作って、産業として確立して、それが花開き、世界に広まっていったのです。ゲーム産業は今でも拡大しています。映画産業の5倍くらいの市場規模と言われています。

これは初期のファミコンです。皆さんのお父さんたちは、子どもの頃、ゲームをファミコンから始めた人がほとんどだと思います。ゲームは日本発のメディアと言いましたが、実はもともとはアメリカで創造されたのです。ある程度の市場もアメリカで確立していて、いわばアメリカの文化だったのです。ところが、ある時から日本の文化に替わってしまったのですね。それはなぜなのかをお話しします。

 

これは世界で初めて出たカセット交換式ゲームのAtariVCS(Video Computer System)です。これを作った人は、5年で大富豪になりました。あまりにも売れたので、当時のアメリカでは50種類くらいのゲーム機が出ています。任天堂からファミコンが出るのが1983年ですから、その6年前のことです。

当時出たゲーム機の中で注目してもらいたいのが下図です。右上がマイクロビジョンという携帯ゲーム機です。ゲームボーイが任天堂から出るのが1989年ですが、その10年前にすでにアメリカで携帯ゲーム機が出ているのです。左下はWiiのような体験型ゲームで、ハンドルを回したり、画面に向かって打ったりできます。右下が3Dゲーム機です。日本の3Dゲームと言えば、1994年発売のソニーのプレイステーションですから、アメリカではその12年以上前に3Dの時代に突入していたのです。すごいですよね。

では、なぜそのアメリカでゲームが衰退してしまったのか。その原因は、ソフトの市場が「クソゲー」だらけ、つまり粗悪なゲームが大量に出回ってしまったことにありました。

 

1977年発売のAtariVCSは、当時のアメリカの3家庭に1台は持っていたという、ものすごい大ヒット商品だったのに、その市場が1983年にあっさりと崩壊してしまいます。一方、日本では1983年に任天堂からファミコンが発売され、ファミコンブームがやってきました。なぜファミコンがヒットしたかと言えば、ソフトを重視したからです。そして、任天堂が独自のゲーム開発ノウハウを構築していった。それがまさに「ゲームニクス」なのです。任天堂の開発チームでは、なぜアメリカでゲーム産業が死滅したのか、その原因をきちんと研究していました。

 

Atariのゲーム機には、いろいろな会社がゲームを提供していたのですが、Atari社はゲームの内容にはまったくタッチしていませんでした。任天堂が考えたのは、ゲームの質を保証して世の中に出そうということでした。そして、『スーパーマリオクラブ』というゲームをチェックする組織、いわば審査機構を会社の中に作ったのです。

 

サイトウ・アキヒロ先生プロフィール

亜細亜大学都市創造学部教授/藤田保健衛生大学客員教授

 

日本を代表するゲームクリエイター、インタラクティブメディアディレクター。前の任天堂社長の故 岩田聡氏とともに、ファミコンの黎明期から30年以上にもわたって、数多くのゲームディレクションに携る。現在は、ゲーム開発におけるインターフェースのノウハウである「ゲームニクス理論」を提唱、家電やロボット、リハビリ機器や教育分野で、ゲームニクスの応用を実践している。

  

著書に、『ビジネスを変える「ゲームニクス」』(日経BP)、『ニンテンドーDSが売れる理由―ゲームニクスでインターフェースが変わる』(秀和システム)、『ゲームニクスとは何か―日本発、世界基準のものづくり法則』(幻冬舎新書)など。

 

こちらは『ビジネスを変える「ゲームニクス」』(日経BP社)

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サイトウ先生おススメの本

危機にこそぼくらは甦る 新書版 ぼくらの真実

青山繁晴(扶桑社)

学力は世界トップレベルなのに、自信は世界最低レベルの日本の子どもたち。日本の学校は、祖国を愛する心や、日本人としての哲学や精神を教えてくれません。真に世界に羽ばたく強い心を育むために読んでほしい本です。

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『失敗から学ぶユーザインタフェース 世界はBADUI(バッド・ユーアイ)であふれている』

中村聡史(技術評論社)

購入方法がわかりにくくて行列ができる自動券売機、服を着たままシャワーを浴びてしまう切り替えハンドル、何を入力したらわからず途方にくれてしまうウェブサービスなど、日常のBADなユーザインタフェースを取り上げて、その問題点を指摘する書籍です。具体的な解決策は記載されていませんが、ゲームニクスを用いればすべて解決できますので、私の本と合わせて読めばかなりの頭の訓練になります。

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『別冊太陽217 明治の細密工芸』

山下裕二(平凡社)

並河靖之や濤川惣助の七宝工芸、正阿弥勝義の金工、超絶技巧の刺繍、芸術品を超えた細工陶器、現代玩具よりも精緻な自在置物。明治の無名な技術者の究極の工芸品は、世界のどの工芸も追いつけない果に達しています。現代人が忘れてしまった半端ない日本人の手わざの凄さと、何事も突き詰めていく求道精神を感じてください。

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