スーパーマリオブラザースやポケモンGOなどのゲームは、なぜ人を夢中にさせるのか

~日本のモノづくりの推進力になる「ゲームニクス」はキミの発想力も変える

サイトウ・アキヒロ先生

亜細亜大学 都市創造学部 教授/藤田保健衛生大学 客員教授 

第3回 ユーザー代表がソフトを審査、80点以上で発売

『スーパーマリオラブ』という、ゲームをチェックする審査機構には、皆さんのようなユーザーの代表が200人登録されていて、その人たちがモニターとして、完成したゲームソフトを一足先にチェックします。

 

この200人の中には、中学生からかなりの年齢の方までいます。男の人も女の人もいます。ゲーム初心者やほとんどゲームをやらないという人から、朝から晩までゲームをやっているゲームマニアもいます。さらに、アメリカとヨーロッパにもあって、ここにはいろいろな人種や宗教の人が登録されています。その中から20人くらいが無作為に選ばれて、ゲームで遊んでもらい、点数を付けてもらいます。

そして、100点満点で80点以上でないと発売しないことにしました。任天堂以外のソフト制作会社に対しても審査は行いました。80点以上取れないと、1年間で2億円をかけて作ったソフトでも売ることができないのです。

 

ゲーム作りの統括責任者にとっては、ものすごいプレッシャーでした。自分の下で一生懸命に付き合って作ってくれた何十人のクリエイターが、1年間頑張って来た結果が世に出せなくなるのですから。

 

任天堂の社長だった岩田さんも、当時はプロデューサーとしてゲーム開発に関わっていましたが、彼でも特別扱いはしてもらえません。あのスーパーマリオの生みの親の宮本茂さんがディレクションしたゲームですら、80点以上でないと発売しないのです。過去の実績はまったく関係ないのです。

 

ちなみに、これがマリオクラブの採点表です。私がディレクションをしたゲームのものです。

 

どんなにゲームが面白くても、ゲームの内容の最高点は20点です。他は、いわゆる遊びやすさとして、ボタンを押した時の反応や操作に迷わないといった操作性が20点。見た目の良さが10点、音の気持ちよさが10点、お客の満足感が40点、総合で100点です。私がディレクションをしたこのゲームは、高得点の90点以上を取ったので無事に発売されることになりました。

 

私はコマーシャル業界では結構もてはやされていました。第1回に言っていったことを思い出してください。「俺は最高だよ、俺のセンスがわからないお前のほうがバカ」みたいな気分でいたのです。

 

でもマリオクラブでは、誰が評価してくれるかわかりません。全然ゲームに興味のない人にも「これなら面白い!」と言ってもらわないといけないのです。そうなると、「俺は最高」とは言っていられない。1年間一生懸命考えたアイデアでも、それが実際に万人に通用しなければまったく意味がないのです。

 

何か面白いゲームのアイデアを考えたら、それは本当に面白いのか、それが全世界に通用する面白さなのか、初心者でもゲームマニアもちゃんと満足できるのか、常にその視点でモノを見なければいけないのです。自分の思い込みだけで創り出すのでなく、この面白さを伝えるにはどうしたらいいのか、ということをお客さんの目線で考えなければなりませんでした。

 

サイトウ・アキヒロ先生プロフィール

亜細亜大学都市創造学部教授/藤田保健衛生大学客員教授

 

日本を代表するゲームクリエイター、インタラクティブメディアディレクター。前の任天堂社長の故 岩田聡氏とともに、ファミコンの黎明期から30年以上にもわたって、数多くのゲームディレクションに携る。現在は、ゲーム開発におけるインターフェースのノウハウである「ゲームニクス理論」を提唱、家電やロボット、リハビリ機器や教育分野で、ゲームニクスの応用を実践している。

  

著書に、『ビジネスを変える「ゲームニクス」』(日経BP)、『ニンテンドーDSが売れる理由―ゲームニクスでインターフェースが変わる』(秀和システム)、『ゲームニクスとは何か―日本発、世界基準のものづくり法則』(幻冬舎新書)など。

 

こちらは『ビジネスを変える「ゲームニクス」』(日経BP社)

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サイトウ先生おススメの本

危機にこそぼくらは甦る 新書版 ぼくらの真実

青山繁晴(扶桑社)

学力は世界トップレベルなのに、自信は世界最低レベルの日本の子どもたち。日本の学校は、祖国を愛する心や、日本人としての哲学や精神を教えてくれません。真に世界に羽ばたく強い心を育むために読んでほしい本です。

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『失敗から学ぶユーザインタフェース 世界はBADUI(バッド・ユーアイ)であふれている』

中村聡史(技術評論社)

購入方法がわかりにくくて行列ができる自動券売機、服を着たままシャワーを浴びてしまう切り替えハンドル、何を入力したらわからず途方にくれてしまうウェブサービスなど、日常のBADなユーザインタフェースを取り上げて、その問題点を指摘する書籍です。具体的な解決策は記載されていませんが、ゲームニクスを用いればすべて解決できますので、私の本と合わせて読めばかなりの頭の訓練になります。

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『別冊太陽217 明治の細密工芸』

山下裕二(平凡社)

並河靖之や濤川惣助の七宝工芸、正阿弥勝義の金工、超絶技巧の刺繍、芸術品を超えた細工陶器、現代玩具よりも精緻な自在置物。明治の無名な技術者の究極の工芸品は、世界のどの工芸も追いつけない果に達しています。現代人が忘れてしまった半端ない日本人の手わざの凄さと、何事も突き詰めていく求道精神を感じてください。

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