スーパーマリオブラザースやポケモンGOなどのゲームは、なぜ人を夢中にさせるのか

~日本のモノづくりの推進力になる「ゲームニクス」はキミの発想力も変える

サイトウ・アキヒロ先生

亜細亜大学 都市創造学部 教授/藤田保健衛生大学 客員教授 

第4回 身の回りにもゲームに学ぶべくものはたくさんある!

お客さんの目線でゲームを考えていると、ゲーム以外でもお客さん目線、つまりユーザーインターフェース(UI)ということが気になってきます。例えば、先日、大阪の天満橋に用事があったので、初めて乗る電車の路線図を見たら、天満橋が2つあるのです。で、不安になって途中の駅で降りてもう1回路線図で確かめたら、同じ駅だということがわかりました。要は電車の種類や行き先で分かれていたわけですが、これではわかりにくいですよね。

 

こんな例もあります。駅の券売機でおばあさんが1000円札を入れているのですが、何回やってもお札が戻ってきてしまう。実は券売機が故障して、駅員がこちらに向かっている最中だったのです。 

よく見ると上のところに「しばらくお待ちください」と書いてありますが、これではほとんど気が付かない。点滅させるとか、文字を流すとか、読んでほしいものをきちんとわかってもらう工夫がまったくない。もし、先ほどのマリオクラブでこんなのを見せたら、点数は低いでしょうね。常にお客様目線で、やろうとしていることを押しつけがましくなく気づいてもらう工夫を緻密に作っていく努力しているのが、ゲーム業界なのです。

 

任天堂がマリオクラブを作った時は、何をもって良いゲームとするのかということは、わかっていませんでした。でも、お客様と真剣に対話していく中で気づいたのは、ゲームの面白さはもちろん重要ですが、それとほぼ同じくらい操作性も重要だということでした。操作に迷ってしまうと、ゲームの面白さに到達する前にやめてしまうということがわかったのです。ですから、マリオクラブでは、ゲーム性(ゲームの面白さ)と操作性は同じ配点になったのです。

 

だから、ゲームに熱中になるというのは、ゲームという魔物がそこにいるのではなくて、ユーザーを気持ちよく操作に誘うノウハウの上に乗っているということなのです。こうして任天堂の中では、世界中の人が夢中になるノウハウというものがどんどんと溜まっていきました。それをまとめたのがゲームニクスです。だから、一言でいえば、ゲームニクスとは人を夢中にさせるノウハウを理論体系化したものです。

 

いいゲームは本来の遊び以外にストレスがない

ゲームというのはユーザーにストレスを与えることが前提です。敵を倒せ、次にこうしろ、次はこれだ、戦え、逃げろ…とずっと課題が出続けているのがゲームで、ユーザーには常にストレスがかかっている状態です。

 

ですので、ゲーム本来の遊び以外のところでストレスを与えてはいけません。「どこを押したらいいかわからない」、「右を向いたままで動かない」、「どこが出口なのかこの絵ではわからない」といったことがあったら、イライラしますよね。思うように動かないのに、こっちを狙え、高得点を採れ、あっちと戦えと言われたら、もう「やりたくない」となってしまいます。

 

逆にいいゲームは、操作をしていることを忘れるくらいまで、ユーザーインターフェースが高度に発達しています。コントロールしている感覚を、限りなくゼロにしているのですね。ですから、ゲームニクスというのは非常に優れたインターフェースの方法論でもあるのです。

 

ゲームニクス理論の5原則

ゲームニクス理論には、大きく5つ原則があります。

1つ目は、直感的で快適なインターフェースをどのように作るかということ。画面を見ただけで操作が理解できるような構成と演出を考えます。ボタンの色や大きさや配置、出現のパターンなど、細かくそのノウハウがあります。

 

2つ目が、マニュアルを見なくてもユーザーに操作を理解してもらうためのノウハウ。

 

3つ目が、はまる演出です。テンポとリズムをゲームの中にどう持ち込むか。また、発見する喜びを感じ意欲を持続させ、思わず夢中にさせるノウハウもあります。

 

4つ目が段階的な学習効果です。ユーザーに自分で目標をどう設定させるか。押しつけがましくなく、これは自分が決めたのだ、と思わせる自己決定感が大事です。楽しく長時間ゲームを続けてもらうためのノウハウになります。

 

5つ目がリアルとバーチャルを連携すること。これを導入すると利便性とか面白さが高まります。妖怪ウォッチのメダルとか、ポケモンGOがこの典型例です。

 

サイトウ・アキヒロ先生プロフィール

亜細亜大学都市創造学部教授/藤田保健衛生大学客員教授

 

日本を代表するゲームクリエイター、インタラクティブメディアディレクター。前の任天堂社長の故 岩田聡氏とともに、ファミコンの黎明期から30年以上にもわたって、数多くのゲームディレクションに携る。現在は、ゲーム開発におけるインターフェースのノウハウである「ゲームニクス理論」を提唱、家電やロボット、リハビリ機器や教育分野で、ゲームニクスの応用を実践している。

  

著書に、『ビジネスを変える「ゲームニクス」』(日経BP)、『ニンテンドーDSが売れる理由―ゲームニクスでインターフェースが変わる』(秀和システム)、『ゲームニクスとは何か―日本発、世界基準のものづくり法則』(幻冬舎新書)など。

 

こちらは『ビジネスを変える「ゲームニクス」』(日経BP社)

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サイトウ先生おススメの本

危機にこそぼくらは甦る 新書版 ぼくらの真実

青山繁晴(扶桑社)

学力は世界トップレベルなのに、自信は世界最低レベルの日本の子どもたち。日本の学校は、祖国を愛する心や、日本人としての哲学や精神を教えてくれません。真に世界に羽ばたく強い心を育むために読んでほしい本です。

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『失敗から学ぶユーザインタフェース 世界はBADUI(バッド・ユーアイ)であふれている』

中村聡史(技術評論社)

購入方法がわかりにくくて行列ができる自動券売機、服を着たままシャワーを浴びてしまう切り替えハンドル、何を入力したらわからず途方にくれてしまうウェブサービスなど、日常のBADなユーザインタフェースを取り上げて、その問題点を指摘する書籍です。具体的な解決策は記載されていませんが、ゲームニクスを用いればすべて解決できますので、私の本と合わせて読めばかなりの頭の訓練になります。

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『別冊太陽217 明治の細密工芸』

山下裕二(平凡社)

並河靖之や濤川惣助の七宝工芸、正阿弥勝義の金工、超絶技巧の刺繍、芸術品を超えた細工陶器、現代玩具よりも精緻な自在置物。明治の無名な技術者の究極の工芸品は、世界のどの工芸も追いつけない果に達しています。現代人が忘れてしまった半端ない日本人の手わざの凄さと、何事も突き詰めていく求道精神を感じてください。

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