スーパーマリオブラザースやポケモンGOなどのゲームは、なぜ人を夢中にさせるのか

~日本のモノづくりの推進力になる「ゲームニクス」はキミの発想力も変える

サイトウ・アキヒロ先生

亜細亜大学 都市創造学部 教授/藤田保健衛生大学 客員教授 

第5回 スーパーマリオブラザーズ開発者が明かす、マリオの面白さの秘密

マニュアルを使わずに、どのようにしてユーザーにゲームのルールを押し付けがましくなく伝えているのか。「スーパーマリオブラザーズ」を使って説明しましょう。スーパーマリオの基本アクションは、「敵をよけながら横に移動する」「ジャンプする」「ブロックを叩いてアイテムを入手する」の3つです。

 

最初の画面で、マリオは場面の左端にいます。もし真ん中にいたら、左に進んでしまう人がいるかもしれない。そうすると、それ以上動けないので、イラッとしますよね。ですから、自然に右向きに操作を誘うために、マリオは左端に置きましました。

 

そして進んでいくと、何(クリボー)か出て来る。最初は敵か味方かもわからないので、マリオはあっさり死んでしまいます。そこで「これは敵をよけながら右に移動するんだな」ということが、だいたい2秒でわかります。そして、2人目のマリオになると、今度は恐る恐る進みます。その先にクエスチョンが光っています。そこでボタンを押してみると、マリオがジャンプします。そしてここで「チャリン」とコインの音が聞こえます。「お、何かいい音だ。悪くはないな」とわかります。

 

そして、今度はブロックも叩いてみようということで、叩いてみると、ボコッボコッと動きますが、何も起きません。「動かないなら、ブロックは関係ないんだな」と思うとこの後叩いてもらえなくなってしまうので、ここでは何も変化はないけれど、ちょこっと動かしておくことが重要です。

 

そして次のクエスチョンを叩くと、今度はキノコが勝手に落ちてきて、近寄ってきます。これをジャンプで避けようとしても、天井が低いからマリオがすぐに落ちて、どうしてもキノコに当たってしまうのです。すると、意外にもマリオが大きくなります。そして、天井のブロックが壊せるようになり、パワーアップしたことがわかります。こうして、「クエスチョンから出てくるキノコでパワーアップするんだな」ということを覚えます。このように、ゲームが始まって15秒くらいで、基本的なルールを伝えるように作ってあるのです。

 

「発見する喜び」もゲームの重要なポイントです。スーパーマリオには、難しい仕掛けの前には必ず抜け道を用意しています。アクションの苦手な人でも先に進むことができて、マリオの面白さを知ってもらおう、もっと先へ行きたいという意欲を刺激しよう、という仕組みです。ただ、抜け道から逃げるのは「下手感」が出てしまいます。そこで、抜け道を発見したという喜びと、抜け道にたくさんあるコインをいっぱい取っていることで、「自分はダメ感」を少なくするのです。こうすることで、ユーザーのメンタルな部分に配慮しているのです。

 

また、ちまちまとブロックを壊したりしながらアイテムを取るだけではなくて気持ちのいいゲームなのですよ、ということを知ってもらうために、一直線のステージも用意しました。

 

「段階的に難しくなっていく」のもポイントです。例えば、最後は、階段をタイミングよくジャンプして旗竿の一番上に行きます。1段ずつきれいにジャンプしながらポーンと飛ぶのは難しいので、一つ手前に練習ステージを作ってあります。これは結構あからさまですが、誘導と練習のための場所を作ってあげることで、上達感が味わえます。そしてゴールに行きます。このように、マリオの画面に出て来るものには全部理由があって、しかるべき場所においてあるのです。

 

1-1面には、スーパーキノコ、ファイアフラワー、スーパースター、1UPキノコというスーパーマリオブラザーズに出てくる特殊なアイテムが全部出てきます。

ゲームデザインをする時、たいてい、いいものは先に先に置き、次に何か面白いものが出てくるかなと興味をつなぐようにしたくなるのですが、マリオは最初に全部出しました。とにかくマリオでは最初に面白いものを全部体験してもらおうということにしたのです。

 

このように、初心者でも遊べるし、マニアでも楽しめるような「敷居が低くて奥が深い」モノづくりや、自ら進んで長時間熱中してしまうような仕掛けが任天堂には蓄積されていきました。

 

サイトウ・アキヒロ先生プロフィール

亜細亜大学都市創造学部教授/藤田保健衛生大学客員教授

 

日本を代表するゲームクリエイター、インタラクティブメディアディレクター。前の任天堂社長の故 岩田聡氏とともに、ファミコンの黎明期から30年以上にもわたって、数多くのゲームディレクションに携る。現在は、ゲーム開発におけるインターフェースのノウハウである「ゲームニクス理論」を提唱、家電やロボット、リハビリ機器や教育分野で、ゲームニクスの応用を実践している。

  

著書に、『ビジネスを変える「ゲームニクス」』(日経BP)、『ニンテンドーDSが売れる理由―ゲームニクスでインターフェースが変わる』(秀和システム)、『ゲームニクスとは何か―日本発、世界基準のものづくり法則』(幻冬舎新書)など。

 

こちらは『ビジネスを変える「ゲームニクス」』(日経BP社)

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サイトウ先生おススメの本

危機にこそぼくらは甦る 新書版 ぼくらの真実

青山繁晴(扶桑社)

学力は世界トップレベルなのに、自信は世界最低レベルの日本の子どもたち。日本の学校は、祖国を愛する心や、日本人としての哲学や精神を教えてくれません。真に世界に羽ばたく強い心を育むために読んでほしい本です。

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『失敗から学ぶユーザインタフェース 世界はBADUI(バッド・ユーアイ)であふれている』

中村聡史(技術評論社)

購入方法がわかりにくくて行列ができる自動券売機、服を着たままシャワーを浴びてしまう切り替えハンドル、何を入力したらわからず途方にくれてしまうウェブサービスなど、日常のBADなユーザインタフェースを取り上げて、その問題点を指摘する書籍です。具体的な解決策は記載されていませんが、ゲームニクスを用いればすべて解決できますので、私の本と合わせて読めばかなりの頭の訓練になります。

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『別冊太陽217 明治の細密工芸』

山下裕二(平凡社)

並河靖之や濤川惣助の七宝工芸、正阿弥勝義の金工、超絶技巧の刺繍、芸術品を超えた細工陶器、現代玩具よりも精緻な自在置物。明治の無名な技術者の究極の工芸品は、世界のどの工芸も追いつけない果に達しています。現代人が忘れてしまった半端ない日本人の手わざの凄さと、何事も突き詰めていく求道精神を感じてください。

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