スーパーマリオブラザースやポケモンGOなどのゲームは、なぜ人を夢中にさせるのか

~日本のモノづくりの推進力になる「ゲームニクス」はキミの発想力も変える

サイトウ・アキヒロ先生

亜細亜大学 都市創造学部 教授/藤田保健衛生大学 客員教授 

第9回 生徒との質疑応答 その1 ゲームニクスをモチベーションを上げるのに使えますか

ムトウくん:僕はいろいろなサイトを作っています。ロボットを作るのを見せるサイトを作る時に、組み立ての途中を動画で見せようと思ったのですが、説明を入れながら動画を作っていったら、長くて途中で集中力が切れてしまうんです。ゲームニクスの観点からどんなふうにすればいいのか、教えてください。

 

サイトウ先:画面の下に時間経過を示すバーをつけておき、「ここらへんが面白いよ」というところをマークしておいて、そこにマウスを置くとそこまでパッと進めるとか、逆にユーザーがここが面白いと思ったところでバーをクリックするとピンが立って後から見返すことができたりというように、履歴を残すという方法もあるかもしれないですね。

 

今、新しい人工知能の開発をしていて、一緒にプログラムのアーキテクチャー(構造)を作っている人は、僕が3Dのゲームを作っていた時に、メインプログラムを作った一人です。彼はその後、ドワンゴという会社に行って「ニコニコ動画」を立ち上げました。

 

ニコニコ動画って、動画の画面に見ている人のコメントがテキストでいっぱい流れますよね。ニコニコ動画が出た10年以上前、当時まだ通信量があまり確保できなかった時代に、動画を見ながらリアルタイムでテキストを流すというのは、すごい仕組みだと思います。動画には工夫次第で、そういう面白い可能性もできますよ。

 

ニシヤマくん:僕は将来ロボット研究者になりたいと思っています。人と接して会話するようなロボットを作りたいと思っているのですが、そういうロボットに夢中になってもらうためにはどんな仕掛けが必要でしょうか。

 

サイトウ先生:人と接するためには、感情が必要ですよね。このためには、感情マップというものを作る必要があります。実は、先ほどお話しした新しいAIの次に考えているのが、感情を持ったエンジンというものです。そのために感情マップというものも作り終えました。

 

感情には、外に表われる表層の感情と内側の感情があります。そして、感情自体を8種類に分けて、表層の感情と内側の感情との関係を見ました。あとはこれを落とし込んで、ボット(bot)というコンピュータが人間に応答する仕組みを作りたいと思っています。興味があれば、ニシヤマくんも一緒にプロジェクトを進められればいいですね。

 

今、ある大学でロボットを作っている人たちから、そのロボットのソフトウェアの部分を作りませんかというオーダーも来ています。大学や研究所の工学系人たちは、とにかくモーターやハードウェアの方に興味が行ってしまうので、ニシヤマくんが関心を持ったような、ソフトウェアの感情とか、今あるロボットの動きに対してどういうソフトウェアを組み合わせるとロボットがより滑らかに動くかとかいうことをやっている人は少ないです。日本はいかにソフトウェアに遅れているか、大切に思っていないかというところはありますね。だから、皆さんには「ソフトウェアも悪くないな」と思ってもらえればいいなと思います。

 

コクボくん:ゲームニクスの理論が社会に浸透したら、その理論を利用して企業は結構儲かると思うのですが、使っている側の社会の変化というものをどのように考えますか。

 

サイトウ先生:ゲームニクスは、いかに相手にわかりやすく気持ちよく伝えるかということなので、そこに人とのコミュニケーションという普遍的な関係が存在している以上は、社会の変化に伴って大きく変わるということはないと思います。ただ「人を夢中にさせる」という点で、ゲームの作り方は変わるでしょう。

 

ゲーム業界には『K・G・Nの法則』、つまり『こんなの(K)ゲーム(G)じゃない(N)』というものがあります。スマホのゲームが出てきた時は、「こんなのゲームじゃない」とみんなが言ったのですよ。タッチセンサーで触ってやるゲームも、ネットワークでつながってプレイするものも、今は当たり前ですが、出始めはそう言われました。要は、ゲームというのは最先端のエンタテインメントで、技術が進歩したり環境が変わったりすると、遊び方やデザインは変わります。でもコミュニケーションのコアとなる部分は人間の感性ですから、ゲームニクスそのものは変わりません。

 

ただ、ゲーム業界と言うのは、ツールが変わったりコンピュータのハードウェアが変わったりすれば、そのたびに全部リセットしてゼロからやり直さなければならず、それまでの経験が活かせないので、クリエイトする側はかなり過酷な世界だと思います。

 

タカクワくん:人を夢中にさせるためにゲームニクスを使ったらいいということですが、自分のモチベーションを上げるためにどういうふうにゲームニクスを自分に使ったらいいですか。

 

サイトウ先生自分にゲームニクスをどう使うかというのは、自分がいかに楽しむかということだと思います。僕に才能が一つあるとすれば、どんな課題、どんな仕事でも面白いところを見つけられるところなんですよ。こんなの自分には全然向いていないという仕事であっても、「ここは自分的には面白くできそうだ」というところを膨らませて、そこに夢中になれるんです。そうすると発注側も楽しめる面白いものができるので、次の仕事につながりますね。

 

ムクノキくん:ゲームだったらすぐに循環して楽しくやれるのですが、勉強はなかなか思ったような結果が得られなくて。そういう時にいい循環が得られるようにするためにはどうしたらいいのでしょうか。

 

サイトウ先生:それはたぶん、皆さんのせいではなくて教科書の作りがよくないからだと思います(笑)。私に教科書を作らせてもらったら、結構面白くなると思います。

 

で、どうすればいいか。君なりに決められた順番や枠組みでやることをやめてみてはどうでしょう。想定されたことの中でやりくりするのではなくて、いかに想定外のことが自分に起きるようにするか、みたいなことを自分で考えてみるといいと思います。

 

サイトウ・アキヒロ先生プロフィール

亜細亜大学都市創造学部教授/藤田保健衛生大学客員教授

 

日本を代表するゲームクリエイター、インタラクティブメディアディレクター。前の任天堂社長の故 岩田聡氏とともに、ファミコンの黎明期から30年以上にもわたって、数多くのゲームディレクションに携る。現在は、ゲーム開発におけるインターフェースのノウハウである「ゲームニクス理論」を提唱、家電やロボット、リハビリ機器や教育分野で、ゲームニクスの応用を実践している。

  

著書に、『ビジネスを変える「ゲームニクス」』(日経BP)、『ニンテンドーDSが売れる理由―ゲームニクスでインターフェースが変わる』(秀和システム)、『ゲームニクスとは何か―日本発、世界基準のものづくり法則』(幻冬舎新書)など。

 

こちらは『ビジネスを変える「ゲームニクス」』(日経BP社)

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サイトウ先生おススメの本

危機にこそぼくらは甦る 新書版 ぼくらの真実

青山繁晴(扶桑社)

学力は世界トップレベルなのに、自信は世界最低レベルの日本の子どもたち。日本の学校は、祖国を愛する心や、日本人としての哲学や精神を教えてくれません。真に世界に羽ばたく強い心を育むために読んでほしい本です。

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『失敗から学ぶユーザインタフェース 世界はBADUI(バッド・ユーアイ)であふれている』

中村聡史(技術評論社)

購入方法がわかりにくくて行列ができる自動券売機、服を着たままシャワーを浴びてしまう切り替えハンドル、何を入力したらわからず途方にくれてしまうウェブサービスなど、日常のBADなユーザインタフェースを取り上げて、その問題点を指摘する書籍です。具体的な解決策は記載されていませんが、ゲームニクスを用いればすべて解決できますので、私の本と合わせて読めばかなりの頭の訓練になります。

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『別冊太陽217 明治の細密工芸』

山下裕二(平凡社)

並河靖之や濤川惣助の七宝工芸、正阿弥勝義の金工、超絶技巧の刺繍、芸術品を超えた細工陶器、現代玩具よりも精緻な自在置物。明治の無名な技術者の究極の工芸品は、世界のどの工芸も追いつけない果に達しています。現代人が忘れてしまった半端ない日本人の手わざの凄さと、何事も突き詰めていく求道精神を感じてください。

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