ニューリーダーからの1冊

金属工学が専門の御手洗容子先生(物質・材料研究機構)がおススメ
『トコトンやさしい形状記憶合金の本』
形状記憶合金協会:編著(日刊工業新聞社)
形状を記憶する、ちょっと変わった金属についてわかりやすく解説している読み物です。御手洗先生も高温形状記憶合金について執筆しています。
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より高温に耐えられる形状記憶合金で技術開発に貢献
御手洗容子先生 独立行政法人 物質・材料研究機構
<専門分野:金属工学>
形状記憶合金の難点は、100度以上の高温では使えないこと。例えば発電所や航空機の材料に記憶合金を使うとなると、高温でも形が元通りになるものが必要となる。御手洗先生のグループは、300度付近で、何回繰り返しても100%の回復をする形状記憶合金を作製することに成功した。また、500度で動作する合金に着目、450度で変形後、ゆがみを生じず80%まで回復する形状記憶合金を見出すことに成功した!
先生
御手洗容子(みたらいようこ)
専門分野:金属工学
独立行政法人 物質・材料研究機構 構造材料研究拠点 副拠点長、エネルギー構造材料分野 分野コーディネータ、耐熱材料設計グループ グループリーダー
1966年東京都生まれ 千葉県立船橋高校出身

研究
ジェットエンジンなど高温で使われる金属材料の力学特性(どれだけの力に耐えられるかを示す強度)の研究から、高温で使える金属材料の開発を行っています。また、温度を変えることによって形が元に戻る形状記憶合金の開発も行っています。
形状記憶合金としては、ニッケルとチタンを混ぜ合わせた合金が有名ですが、100度以上の高温では形状記憶合金として使えません。形状記憶合金を発電所や飛行機のエンジンなど高い温度で動作するシステムに使おうとすると、高温で動作する形状記憶合金が必要となります。
私はこれまで注目されなかった500度以上で動作するいくつかの合金に着目し、実際に形状記憶効果が現れるか実験を重ねています。金属材料は高温では簡単に変形し、永久的に残る歪みが入ってしまうため、いかに永久歪みを抑えるかがポイントとなります。そこで、今までの高温材料研究の経験をいかして、高温強度を向上させる試みを行っています。それによって、300度付近で、何回繰り返しても100%の回復をする形状記憶合金を作製することに成功しました。また、今までほとんど形状回復できなかった450℃で変形後、80%もの回復を示す材料を見いだしました。これを100%にするべく、新たな方法を検討中です。

この道に入ったきっかけ
中学生までは文学少女でしたが、高校に入ってSFを読みあさるうちに、未来の科学技術やそれによってもたらされる未知の世界にあこがれました。ロバート・A・ハインラインの『夏への扉』を読んで理系に転向しました。大学入学時は、ロボットを作りたくて機械工学に進学を希望していましたが、残念ながら機械工学科は落ちてしまい、材料工学に進学しました。入学当初は、いずれ機械工学に転科しようと思っていましたが、成績がそれほどよくなかったので、あきらめて材料工学を学びつづけました。はじめはこんな状態でしたが、そのうち材料工学のおもしろさに気づき、研究者をめざすようになりました。
中高時代
中学時代は考古学・歴史、高校時代はSFに興味がありました。高校時代は小説を書いて同人誌を作っていたので、大学で科学を勉強してSF作家になりたいとも思っていました。またロボットアニメが好きだったのでロボットを作ってみたいとも思いました。(どちらもかないませんでしたが。)
大学時代
学科では卒業後、材料メーカーで仕事をする人が多かったので自分もそうだと思っていました。大学では、日本刀を伝統的な方法で作る!と豪語した先生の影響で、砂鉄から鋼を作る「たたら製鉄」をやりました。また、夏休みに鍛冶職人のところに行き、自分たちで作った鋼を使って伝統的な日本刀作りを簡易にした方法で包丁作りも経験しました。
おすすめ
「遊戯王(カードゲーム/アニメ)」
カードの組み合わせでいろいろな技を繰り出せる、頭を使うおもしろいカードゲームです。はまると戦略を考えていくらでも時間を使ってしまうので受験前にはお薦めしません。
先生の専門分野に触れる本

『トコトンやさしい形状記憶合金の本』
形状記憶合金協会:編著(日刊工業新聞社)
形状を記憶する、ちょっと変わった金属についてわかりやすく解説している読み物です。御手洗先生も高温形状記憶合金について執筆しています。
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