ニューリーダーからの1冊

光化学が専門の由井樹人先生(新潟大)がおススメ
「科学者として誠意をつくすこと、自然科学という複雑な事象をわかりやすく正確に伝えるということを、逆の意味で考えさせられました。筆者は有名な偽論文事件である「ソーカル事件」のアラン・ソーカル。」
『「知」の欺瞞』
アラン・ソーカル、ジャン・ブリクモン(岩波現代文庫)
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新エネルギー開発で脚光、地道な光合成の研究が表舞台へ
由井樹人先生 新潟大学
<専門分野:化学(特に光化学)>
植物が行っている光合成を、人工的に再現しさらに高機能にする試み。人工光合成で光を用いてCO2をエネルギーや他の有用な化学物質に変換できれば、エネルギー、資源、環境という最近クローズアップされている大問題は一挙に解決できる。再生可能エネルギーの有望研究のひとつだ。
先生
由井樹人(ゆいたつと)
専門分野:化学(特に光化学)
新潟大学 工学部 機能材料工学科 准教授
1972年東京都生まれ 東京都立荻窪高校出身
研究

地球上で最も行われる化学合成は、植物が行う「光合成」。太陽の光を使い、水と二酸化炭素から糖などのエネルギーを合成する反応ですが、私は、それを人工的に再現し、さらに高機能にしようという「人工光合成」の研究を行っています。
人工光合成により光を用いてCO2をエネルギーや他の有用な化学物質に変換できれば「エネルギー」「資源」「環境」これらの問題を一挙に解決できる可能性があります。この研究の契機は、約40年前に発表された日本人の研究です。私も学生時代からこの研究分野に携わっています。昨今の社会情勢を受けて世界規模で研究が活発化しており、米国ではSolar Fuelsと名乗って大規模な研究投資がなされています。
福島の原発事故以降、人工光合成を含む新エネルギーの開発が注目されており、一種のブームとなっています。しかし、これらの研究はずっと以前から多くの研究者が地道に研究してきた成果の一部です。ブームや短期的な成果に惑わされることなく、本当に重要なことを見極める必要が、研究者だけなく社会全体にもあると思います。

この道に入ったきっかけ
共働きの親に代わって、日中は同居していた祖父母に面倒を見てもらっておりました。特に1910年生まれの祖母は、近代科学とその成果が日本に入って来たのを幼少の頃に目の当たりにし、科学に強い関心を抱いたようです。当時の女性は社会的地位が低いため学問をすることはなかなか困難でしたが、化学の勉強に励んだ祖母が様々な科学の本を読み聞かせてくれました。このような環境でしたので、自然に科学と化学が好きになっていました。
中高時代
漠然とした不安の中でダラダラと生活しておりました。スポーツも苦手でしたし、自分が将来何になりたいのか?何ができるのか?それすら考えることができませんでした。今思い返すと非常にもったいない日々を過ごしていました。
大学時代
大学2年の夏休みに2ヶ月かけてアメリカを独りで放浪しました。単身での海外生活は大きな自信となりましたし、外国の方と話をすることに慣れたのが大きな成果でした。他には肉体労働系のアルバイトとジャズの演奏に大半の時間を割いており、毎日3時間程度の睡眠時間でした。今思えばよく体を壊さなかったと思います。
趣味・休日は?
料理が趣味で、実験感覚でレパートリーを広げています。研究とちがい、すぐに成果出て評価が聞けるのが嬉しいです。時には辛辣な評価も下されますが……。
最近読んだ本

『「知」の欺瞞 ―ポストモダン思想における科学の濫用』
アラン・ソーカル、ジャン・ブリクモン
田崎晴明、大野克嗣、堀茂樹:訳(岩波現代文庫)
科学者として誠意をつくすこと、自然科学という複雑な事象をわかりやすく正確に伝えるということを、逆の意味で考えさせられました。筆者は、有名な偽論文事件である「ソーカル事件」のアラン・ソーカル。「ソーカル事件」でネット検索すれば概要はわかると思います。
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