ニューリーダーからの1冊

科学・技術経営が専門の仙石慎太郎先生(東京工業大)がおススメ
『「孫子」を読む』
浅野裕一(講談社現代新書)
不朽の戦略書である「孫子」の解説本。「孫子」は近現代の科学的思考に通じる恐らく世界初の論考であり、古典として読む価値も極めて大きいと思います。
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サイエンスで勝る日本がビジネスで負けることを繰り返さないために
仙石慎太郎先生 東京工業大学
<専門分野:科学・技術経営>
日本はiPS細胞(人工多能性幹細胞)の発見などのすぐれた成果を輩出する反面、イノベーション(科学技術の活用)の面で劣勢だ。イノベーションの「種」の発見には熱心だったが「育て方」の考察に劣っていた結果である。そこで画期的な科学技術の成果を、どのようにしたら国家・産業界・社会に役立てるか。仙石先生は科学・技術経営の観点から「イノベーション」の方策について挑む。
先生

仙石慎太郎(せんごくしんたろう)
専門分野:科学・技術経営、イノベーション経営
東京工業大学 環境・社会理工学院 准教授
1973年東京都生まれ 学習院高等科出身
研究
画期的な科学・技術の成果を、どのようにしたら国家・産業界・社会のために上手にかつ迅速に役立てることができるか、いわゆる「イノベーション」の方策を研究する、きわめて実践的・学際的な研究分野です。私は数あるイノベーションの分野のうち、幹細胞・再生医療や医療ICT(情報通信技術)などのバイオ・ヘルスケア分野を研究対象としています。
幹細胞は再生医療や創薬の鍵となる科学技術です。人工知能やモバイル機器などの情報通信技術は医療の質の向上やコスト削減に向けた活用が期待されています。日本はiPS細胞(人工多能性幹細胞)の発見などの優れた科学・技術的成果を出していますが、イノベーション(科学技術の活用)では、欧米主要国はもとより、いくつかの新興国より劣勢です。そこで私は、効果的なイノベーション経営(マネジメント)の方法論やスタイルを開発することを目指しています。大学と大学研究者がイノベーションの担い手となる企業等と密に協力し、新規事業の創出を図ることも重要な目標です。日本が戦後かつてない静かな危機を迎えていると痛感する今、もっとも意識しているのは国益への貢献です。
この道に入ったきっかけ
最初に学究活動を志したのは小学校低学年の時で、好きだった昆虫採集を通じて、理科・科学に興味を持ったのがきっかけです。二度目に志したのは、企業に勤務していた時。やはり自分には大学での研究活動が向いていると思ったのです。
中高時代
水泳・水球、シミュレーションゲーム、麻雀、受験に熱中。生物の先生との出会いが、受験と生物学の道を志した最大の理由です。
大学時代
ヨット、シケ長(試験対策委員長)、塾講師のアルバイト、研究、就活に熱中。研究者としての挫折を味わい、一度は外資系コンサルティング企業へ就職。
趣味・休日は?
延喜式内社と古城巡り、祭神輿、フィットネス、SNS。最近はもっぱら育児。
おすすめの本
先生の専門分野に触れる
『日はまた昇る』東映(映画)
日本の企業社会の特徴、企業人の美徳(とそれゆえの限界)が象徴的に描出されています。
『ハゲタカ』NHK(ドラマ)
日本の企業社会や産業構造が抱えている諸課題が、専門家の監修のもとで的確・端的に扱われています。