ニューリーダーからの1冊

ユダヤ学、宗教学が専門の勝又悦子先生(同志社大)がおススメ

『イタリア遺聞』

塩野七生(新潮文庫刊)

地中海世界の歴史にまつわる、仰天エピソードを紹介。歴史資料のすきまから、いかに人の息吹をひろうかがわかります。

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幾多の困難を乗り越えてきた「ユダヤ」の真実を明らかに

勝又悦子先生 同志社大学

<専門分野:ユダヤ学、宗教学>

ホロコースト、パレスティナ戦争……迫害や差別の歴史を経験したユダヤ教とユダヤ教徒は、なぜ、歴史のなかに消失してしまわなかったのか? ユダヤ教が生み出した膨大な書物とそこに記憶された膨大な伝承をひも解き、思想、歴史、文化、経済などから研究を行う。

 

 先生

勝又悦子(かつまたえつこ) 

専門分野:ユダヤ学、宗教学

同志社大学 神学部 准教授 

1965年山口県生まれ 県立山口高校出身

 


 研究

ユダヤ学とは、ユダヤ教、ユダヤ教徒について、思想、歴史、文化、経済などさまざまな研究を行う分野です。世界では主要な大学には置かれている研究科ですが、日本ではなじみがないかと思います。旧約聖書の民からキリスト教が分離して以降のユダヤ教とは、迫害、ホロコースト、パレスティナ紛争という文脈では見聞きしますが、今のユダヤ教が、どのような思考をし、実践をしているのかを研究します。

 

2000年にわたり異教の国家の中に寄生せざるをえなかったユダヤ教が、迫害、差別を受けつつなぜ歴史の中に消失してしまわなかったのか。その秘密の一つが、ユダヤ教が生みだした膨大な書物とそこに記憶された膨大な伝承だと思います。

 

人文科学というのは、即効性もないし、実践性もありません。しかし、ユダヤ教が、伝承、伝統というカタチにならないものを、記憶に叩き込むという手段にうったえることによって、逆にだれからも壊されることなく、彼らを支える基盤となり、ユダヤ教を生き残らせたように、カタチにはならない学問や文化が、人間を支えていくことができると思います。

 


この道に入ったきっかけ

大学の歴史学の授業で、「ユダヤ人差別はキリスト教徒が生んだ」と聞き、このときから、ユダヤ教の存在が気になりだしました。アブラハムのユダヤ教の解釈を読んでみると、ずいぶんふざけた「聖書解釈」もあって、しょっ中、「なんじゃこりゃ」と思わせられたことが、研究のきっかけです。

 


大学・大学院時代

学部時代は、サークルのバドミントンに力を入れていました。修士と博士のとき、イスラエルに留学しました。エルサレムのヘブライ大学で博士論文を書く際に、指導教官になっていただきたかった先生に、なかなか承諾してもらえず、何度も足を運んで、やっと「絶対、投げ出さないな、絶対、投げ出さないな?」「はい」という問答の末、了解してもらったのは一番の思い出です。以後、この指導教官への言葉を裏切らないようにという一心で、論文を書き上げました。

 

イスラエルで、人気の女性シンガーが、テレビで女性啓発CMのようなもので、「夢を決してあきらめるな、そして、そのための努力を決して怠るな」と訴えていたのに、心動かされました。イスラエルでは他にもいろいろなところで、多大な影響を受けています。

 


おススメ

『イタリア遺聞』

塩野七生(新潮文庫刊)

地中海世界の歴史にまつわる、仰天エピソードを紹介。歴史資料のすきまから、いかに人の息吹をひろうかがわかります。

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『日出処の天子』

山岸凉子(メディアファクトリー)

厩戸王子(聖徳太子)が主人公のマンガ。とにかく好き!

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先生の専門分野に触れる本

『生きるユダヤ教―カタチにならないものの強さ』

勝又悦子・勝又直也(教文館)

困難な歴史を生き延びてきたユダヤ教の生き抜く力を、様々なテキスト、人物像を通して具体的に読み解きます。

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『ユダヤ学のすべて』

沼野充義(新書館)

ユダヤ学の関心をひくトピックが集めてあります。

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『屋根の上のバイオリン弾き』

1964年のアメリカのミュージカル。映画化もされています。ロシア近代のユダヤ社会が伺えます。