ニューリーダーからの1冊

臨床免疫学、細胞生物学が専門の石井優先生(大阪大)がおススメ
『カラマーゾフの兄弟』
ドストエフスキー 原卓也:訳(新潮文庫刊)
ストーリー展開や内容の濃さなどあらゆる点で不朽の名作であり、教養として読んでおいたほうがよいと思います。
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難しい骨の観察技術の開発に成功。骨を破壊する難病の画期的な治療法を開発
石井優先生 大阪大学
<専門分野:臨床免疫学、細胞生物学>
骨の中を生きたまま観察できる技術の開発を世界に先駆けて成功。その技術を駆使し、骨が破壊される「関節リウマチ」の治療につながる画期的な治療法も生み出した。「人間の価値は(長さ=専門分野の学識)×(幅=雑学)=面積で決まる」という信念のもと、学生時代を過ごしたという。勉強だけでもダメなのだ。
先生

石井優(いしいまさる)
専門分野:臨床免疫学、細胞生物学
大阪大学 免疫学フロンティア研究センター(医学部 医学科) 教授
1973年大阪府生まれ
私立大阪星光学院高校出身
研究
「関節リウマチ」という病気は、関節の骨が次第に溶けて、関節が壊れ動かなくなる病気です。何とか、患者さんの骨の破壊を止めたい、そう思って、日々研究をしています。
実験動物を生かしたまま、臓器や細胞を特殊な顕微鏡を用いて観察する「生体イメージング」という技術がありますが、骨は体の中でも最も硬く、観察のための光を透過させることが不可能であると考えられていました。しかし、私は約2年間工夫を重ね、骨の中を生きたまま観察できる技術を世界に先駆けて開発しました。これを用いて、破骨細胞の生きた動きを観察することに成功し、破骨細胞の移動を制御する因子を同定(2009年の「Nature」誌に掲載)。破骨細胞を骨に近付けなくすることで、骨破壊を防ぐ画期的な治療法を開発しました。
私の研究室では、破骨細胞に限らず、炎症やがんなどの様々な生命現象を生体イメージングで解析する研究を行っています。実際に可視化できるようになって、生命科学は大きく進歩しています。現在、イメージング研究は大きなブームとなっていますが、私の研究室からも、常に新しい流れを作って行きたいと考えています。

この道に入ったきっかけ
理系の研究者になりたいと思っていましたが、両親や先生の意見に沿って医学部に進学し、実習が始まるとやっぱり医者もいいなと思いました。卒業して内科医としてしばらく勤務した後に、大学に戻って研究し、その後また臨床に戻って外国留学し、それからまた研究に戻りました。医者の研究者の場合は、こんなふうに臨床現場と研究を行ったり来たりすることで、いろんなアイデアがわいてくるのでよいと思います。
最近の関心
基礎研究者が年々減ってきています。特に、医師の資格をもって研究する人が激減しています。最近の日本全体を覆う停滞ムードを変化させる可能性のあるものは、やはり新しい研究成果であると思っています。こういうときだからこそ、守りに入らずに、研究の世界にチャレンジしてもらいたいです。
高校時代
高校生のときに、東欧革命があり、ソ連が崩壊しました。衝撃でした。歴史は止まったものではない、自分でもなにか変えることができると思いました。
大学時代
「人間の価値は(長さ=専門分野の学識)×(幅=雑学)=面積で決まる」との信念のもと、人間の幅を稼げるのは学生時代だけだと考えて、大学の勉強以外のことを勉強することに力を注ぎました。その1つが海外旅行。往復の航空券だけ買って、バックパッカーとして1ヶ月間ほどヨーロッパを放浪しました。また別の機会にはパリの学生宿に1ヶ月滞在して、パリジャンの気分に浸ったりしていました。ドイツの研究所に「サマースチューデント(夏期だけ学生として受け入れてくれる制度)」として1ヶ月半ほど滞在して、ドイツの基礎研究を体験したこともあります。また、読書、音楽、絵画鑑賞、ワインの勉強など、趣味を極めました。
趣味・休日は?
最近クロスバイクを買ったので、これで近くを走りまわっています。また、ひまがあれば大阪城の周りをジョギングをしています。出張にもジョギングシューズを持参しています。趣味は、ワイン。平均するとほぼ1日1本くらい飲んでいます。どこの産地の何のブドウでできたワインか、当てられる自信はあります。
おすすめの本、映画

『ニュー・シネマ・パラダイス』
監督: ジュゼッペ・トルナトーレ。成長物語で感動的。主人公が住み慣れた田舎から都会へ出て行くときに、主人公の先生がかける激励の言葉「おまえの声はもう聞きたくない。だれかからおまえの名声が聞けるようになりたい」が秀逸。DVD専用の「ディレクターズカット版」ではなく「劇場公開版」がおすすめ。