ニューリーダーからの1冊

宇宙で使う材料、生体に代わる材料。斬新な発想で材料研究に挑む
中野貴由先生 大阪大学
<専門分野:生体材料学、結晶塑性学>
航空宇宙材料と生体材料という、どちらも過酷な環境下で用いられる新規材料を開発中。かたや航空宇宙材料は、ふつうの材料と異なり温度が高くなるにつれ材料強度が強くなるような、まったく新しい材料開発を強いられる。かたや生体材料では、例えば骨にとって代わる材料が求められる。いずれも斬新な発想の転換を要求される新しいわくわくするような学問分野だ。
先生
中野貴由(なかのたかよし)
専門分野:生体材料学、結晶塑性学
大阪大学 工学部 応用理工学科 教授
1967年岡山生まれ 岡山県立倉敷天城高校出身

研究
世の中の技術革新をになう原点は、新しい材料(金属、セラミック、高分子など)の発見や開発にあります。
私は、航空宇宙材料と生体材料という、いずれも過酷な環境下で長時間機能が発揮できる材料の開発研究や、必要な機能の発現するメカニズムの解明を行っています。航空宇宙材料では通常の材料と異なり、温度が高くなるにしたがって材料強度が強くなるような新材料の開発をしています。

生体材料では、特に生体骨代替のための材料の開発や、生体骨そのもののミクロ組織の解明を行っています。
両者の共通項は材料の持つ「異方性(方向によって特性が異なること)」で、それに注目した、今までとは全く異なる視点での研究を行っています。

この道に入ったきっかけ
初期の研究は航空宇宙材料に集中し、単純に宇宙へのあこがれのようなものからスタートしました。その中で、わずかにしか含有されない「異方性材料」が材料の特性を大きく左右することを発見したことで、異方性材料に注目しました。発想の斬新な転換です。一方で、物が多く溢れる中、究極に必要とされている材料は何かと考えた場合、「生命」、「文化」に関わる材料と考えました。「異方性材料」への興味のもと、今では生命科学にかかわる材料分野の研究に注力しています。

中高時代
将来は、身近な父親(電力会社勤務)と同じような仕事につきたいと考えていました。趣味は、小学生から続けていたボーイスカウトの影響もあって、野外での活動。
大学時代
野外活動や動植物が大好きだったのでバードウオッチングのサークルへ入部。学部時代のテントと釣竿だけを持って行った、最後の清流といわれた四万十川生活や、沖縄(本島、宮古島、石垣島、西表島)で過ごした1カ月はとくに充実していました。
大学では、数式だけでエレガントに説明できる熱力学の森田善一郎教授(故人)には強く惹かれました。「鉄は国家なり」を理論的に講義される先生でした。結局、私自身はその研究分野には進みませんでしたが・・・。
おすすめの本
先生の専門分野に触れる本

『バイオマテリアル : その基礎と先端研究への展開』
岡野光男:監修、田畑泰彦、塙隆夫:編著(東京化学同人)
生体内に利用されているバイオマテリアル全般に対して、金属・セラミックス・高分子から細胞、再生医療まで網羅。大学の教科書。
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