ニューリーダーからの1冊

原子核物理学、ハドロン物理学が専門の平野哲文先生(上智大)がおススメ
「本書に収められている『滞独日記』は、ノーベル物理学賞受賞者の研究人生の実態を表す、今でいうブログのようなものです。」
『量子力学と私』朝永振一郎(岩波文庫)
ノーベル物理学賞を受賞した朝永振一郎が、量子力学の歴史や素粒子の世界をやさしく語るエッセー&日記。
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宇宙の始まりにあった超高温物質はサラサラしている!? その不思議さに惹かれて
平野哲文先生 上智大学
<専門分野:原子核物理学、ハドロン物理学>
現代素粒子物理学によると、物質の最小単位とされるクォークは、宇宙の始まりに陽子や中性子の中に閉じ込められる前に宇宙全体を満たしたとされている。これを「クォーク・グルーオン・プラズマ」状態という。こんな素粒子の超ミクロのスケールで起こっている不思議を研究している。
先生
平野哲文(ひらのてつふみ)
専門分野:原子核物理学、ハドロン物理学
上智大学 理工学部 機能創造理工学科 教授
1972年神奈川県生まれ 桐蔭学園高校出身
研究

高校物理の教科書の最後の方で「原子核」や「素粒子」という言葉が出てきますが、それらのミクロな世界で起こっていること、逆に宇宙のような大きなスケールで起こっていることの理解を深めるのが私たちの研究です。
私は、宇宙の始まりにあったとされる素粒子でできた超高温物質「クォーク・グルーオン・プラズマ」の性質を調べています。この物質は太陽中心よりも10万倍も熱い物質で、地球上では加速器という巨大実験装置を使って創ることができますが、実際にはあまりに熱く、ほんの一瞬しか現れないので直接調べることは不可能です。そのため、創られた物質の痕跡を理論的に調べることで物質の性質を引き出そうとしています。
これまでの研究で、「クォーク・グルーオン・プラズマ」はすべての物質の中でもっともサラサラと流れる物質だということを見つけました。その不思議さに惹かれてこの研究を続けています。
基礎物理学の分野は、ほとんど直接的に身近な生活に関わることはありません。しかし、19世紀後半の電磁気学や20世紀初頭の量子力学のような基礎学問がなければ、現代の生活が成り立たないのは明らかです。大事なことは、人類が持つ知的好奇心にしたがって、あらゆる学問分野の裾野を広げておくこと。最初から役に立つはずと思ったものだけ研究していては人類の先は見えているでしょう。
この道に入ったきっかけ
高校時代の友人の影響で、それまでの工学的な興味から宇宙や素粒子といった理学的なものに興味を持ちました。小さいころから、壊れたものはなんでも直す父親の影響もあって、物の動く仕組みや原理にもともと興味があったのかもしれません。
中高時代
ずっと部活動の野球づくしの生活でした。どちらかといえば理系の成績がよくメーカーの開発などで働くのだろうとぼんやり思っていました。高校時代の友人とは、飛行機が飛ぶ原理、鏡はなぜ左右を入れ替えることができるのに上下を入れ替えないか、宇宙の始まりはどうなっていたのか、などをよく話していました。
先生の専門分野に触れる本
