ニューリーダーからの1冊

量子ビーム科学が専門の福田祐仁先生(量子科学技術研究開発機構)がおススメ
『原子爆弾―その理論と歴史』
山田克哉(講談社ブルーバックス)
タイトルは怖いですが、中身はしっかりしていて、核分裂発見のドラマとそれが人類に与えた意義がよくわかるすばらしい本と思います。
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切らずに治す粒子線ガン治療の低価格化をめざして、革新的な手法開発に挑む
福田祐仁先生 量子科学技術研究開発機構
<専門分野:量子ビーム科学、高エネルギー密度科学>
「手術をせずに治すガン治療」はどれほど多くの人々に望まれていることだろう。この「切らずに治す粒子線ガン治療」として期待されているものに、量子ビームという高エネルギーの粒子線を出す「レーザー駆動イオン加速」という方法がある。福田先生は、この方法で革新的な手法を世界ではじめて実証した!
先生
福田祐仁(ふくだゆうじ)
専門分野:量子ビーム科学、高エネルギー密度科学
国立研究開発法人 量子科学技術研究開発機構 関西光科学研究所 光量子科学研究部 高強度レーザー科学研究グループ 上席研究員
1968年東京都生まれ 大阪府立北野高校出身
研究
「切らずに治す」がん治療法として「粒子線治療」が注目されていますが、現在の粒子線がん治療器は高周波加速手法という電磁波を用いた方法を利用するため、どうしても装置が大型化し建設コスト(100~300億円)や運用コストが大きくなり、治療コストも高くなり(300万円)ます。そこで、装置の小型化を実現するために、「レーザー駆動粒子加速」という手法が注目され、世界各国で研究開発が活発となっています。
しかし、がん治療に使うためには、粒子線エネルギーの向上などが課題となっています。私は、日本国内を含む世界中の多くの研究者と異なる視点で研究、これまでの約10倍高いエネルギーまでイオンを加速することができる革新的な手法を世界で初めて実証しました。
この私たちが発見した”革新的レーザー駆動イオン加速手法”を用いることで、これまでは不可能であった「がん治療に使える粒子線」の発生が可能となります。それを用いた治療装置が実現した場合には、従来の1/10の建設コストや治療費を実現することができるでしょう。実は、高エネルギーの粒子線は、宇宙線として宇宙空間にたくさん存在します。私たちの研究は、高エネルギー宇宙線の生成メカニズムの探索にもつながる夢の多い研究です。

この道に入ったきっかけ
指導教授が、大学院への進学をすすめてくれましたが、「私の性格が楽天的だから」というのがその理由。楽天的な性格が研究者には必要なのだそうです。大学院での指導教官は非権威的な先生で、「研究を楽しんでください」「人のやっていることはやらないでください」ということを言われ、楽しく研究することができました。
中高時代
テニス部に所属し、テニスに集中しすぎていたせいで、高校での成績はイマイチでした。(大学でもテニスに熱中しすぎて留年してしまったほどです。)
将来は、理学部に行きたいと漠然と考えていました。相対論や量子論に関するブルーバックスの本を読んでいました。塾の化学の先生の授業がハイレベルでおもしろく、化学科に進むきっかけになりました。
趣味・休日は?
ワインに凝っていて、日本ソムリエ教会の「シニアワインエキスパート」の資格を取得しました。また、スキューバダイビングは、ダイブマスターの資格を取りました。様々なことに触れることで専門バカにならないよう気をつけています。
最近読んだ本
おすすめの本
先生の専門分野に触れる本

『非線形現象 ―時空間に繰り広げられるドラマ』
森義仁、中田聡 吉川研一:監修(産業図書)
身のまわりの現象の見方が変わります。