ニューリーダーからの1冊

有機金属化学、触媒化学、有機合成化学が専門の西林仁昭先生(東京大)がおススメ
『坂の上の雲』司馬遼太郎(文春文庫)
決して戦争を賛美するものではないが、明治以降の近代日本を確立するに際して、明治人がいかなる意識を持ち、日本のために行動したかを学んでほしい。
[出版社のサイトへ]
ノーベル賞受賞者とも対等に向き合える化学の世界で、新合成法の開発に取り組む
西林仁昭先生 東京大学
<専門分野:エネルギー化学、エネルギー資源、触媒化学、有機金属化学、有機合成化学>
ノーベル化学賞の福井謙一博士の在籍した京大工学研究科を出て、現在、新しい省エネプロセスの次世代型窒素固定法の開発を行う。これが可能になれば、莫大なエネルギーを使う従来の窒素固定法に代わり、省エネに多大の貢献をすることが期待される。
先生

西林仁昭(にしばやしよしあき)
専門分野:エネルギー化学、エネルギー資源、触媒化学、有機金属化学、有機合成化学
東京大学 工学部 システム創成学科/工学系研究科 システム創成学専攻 教授
1968年大阪府生まれ 大阪府立四條畷高校出身
研究
空気中の窒素ガスからアンモニアを合成するのには、高温高圧の反応条件が必要で、従来の方法ではエネルギーが大量に消費されます。現在使用されている工業的な窒素固定法では、人類が地球上で消費しているエネルギーの少なくとも数%以上が費やされているのです。そこで、多消費型の従来の窒素固定法に代わる、省エネプロセスの次世代型窒素固定法の開発を行っています。私が取り組んでいる新しい窒素固定法が開発できれば、省エネに多大なる貢献をすることができると確信しています。
化学の分野では競争相手は国内にとどまらず、世界になります。最近中国の化学者の台頭が著しく、日本の基幹産業の一つであるといえる化学の最先端を担う研究の遅れが懸念されます。現在はまだ大きなレベルの差がありますが、日本の無策の現状が続けば、近い将来、中国をはじめとする他国に遅れをとることになりかねません。国策として対応を講ずることを政府に訴えると共に、日本の化学者のより一層の活躍を期待したいと思います。

この道に入ったきっかけ
大学院の研究室在籍時に、研究室の主宰者であった植村榮教授から「科学、特に化学の世界では相手がノーベル賞受賞者であっても対等に議論できる」、「世界的に無名の化学者でも興味深い成果を達成すれば、公平に評価して貰える」等の研究のおもしろさを教えてもらったことがきっかけ。

中高時代
中高生時代ともに野球部所属。とくに高校時代は、甲子園をめざし、大阪の強豪私立高校を予選で撃破することを目標としていました。また歴史が好きで、どのような人物が時代に即して歴史上に表れ実際の歴史が作られていったか興味はつきませんでした。歴史を学んだ経験が、研究を行う際にも生かされていると思います。
大学時代
ノーベル化学賞受賞者の福井謙一先生は、大学・大学院時代の同じ学科の先輩。ノーベル賞のメダルのレプリカが建物の入り口に飾ってあり、いつか自分もという気持ちになっていました。
おすすめの本、番組

『坂の上の雲』
司馬遼太郎(文春文庫)
決して戦争を賛美するものではないが、明治以降の近代日本を確立するに際して、明治人がいかなる意識を持ち、日本のために行動したかを学んでほしい。
[出版社のサイトへ]
『コズミックフロント』
NHK BSプレミアムで放送されている宇宙番組。科学に興味を持つ人なら一度は考える最先端の宇宙に関する研究を紹介してくれます。また、科学者についても紹介してくれるので、科学者になることを志す中高生に刺激になるでしょう。
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