ニューリーダーからの1冊

比較社会学が専門の有田伸先生(東京大)おすすめ
『ハマータウンの野郎ども』
ポール・ウィリス(ちくま学芸文庫)
イギリスの「不良」生徒たちの行動や価値観を生き生きと描き出しつつ、結局はそれが階級の再生産を導いてしまうことを示した教育社会学の古典です。
[出版社のサイトへ]
日本と韓国の教育・雇用の「格差」問題を、比較の視点を活かして考察、解決の糸口を探る
有田伸先生 東京大学
<専門分野:比較社会学(日本と韓国の教育・労働市場・社会階層研究)>
日本とよく似ているといわれることが多い韓国社会と日本社会を比較し、その特徴を明らかにする比較社会学者。教育や雇用に関する格差の問題など、日本と韓国で見比べることで、見えてくる社会の仕組みのちがいがあるという。
先生
有田伸(ありたしん)
専門分野:比較社会学(日本と韓国の教育・労働市場・社会階層研究)
東京大学 社会科学研究所 比較現代社会部門 教授
1969年鳥取県生まれ 鳥取県立鳥取西高校出身
研究

私は、日本とよく似ているといわれることが多い韓国社会と日本社会の比較を専門としています。そのなかでも私はとくに教育制度や労働市場、社会階層のあり方を比べていくことで、「一見似ているように見えるが、実は細部は異なる」日韓両社会の特徴を明らかにしています。
今日、「格差社会」の問題が社会的に大きな問題となっています。これはお隣の韓国社会でも同じです。しかし日本と韓国を比べると、問題となっている教育や雇用の格差のあり方は、似ている部分もありながら、それぞれ微妙に異なっています。そしてこれらの微妙な違いが、それぞれの社会の格差問題の本質を理解し、その解決策を考える上で、非常に重要な役割を果たします。日本と韓国を詳しく比較することで、それぞれの社会の特徴を発見することができる、という点は私が行っている研究の成果の一つだと思います。
このような格差の問題を扱う私の根本的な問題関心の一つは、本来、どちらが上か下かなど決まっていないはずの人々の間の「違い」が、どうして上下の序列関係を伴う「格差」へと転じてしまうのか、というものです。この問題を考えるためには、人々が社会を眺める視角と価値付けの問題に踏み込んでいく必要があります。これらの視角や価値付けは、社会ごとに少しずつ異なっており、そしてそれが、各社会の格差のあり方にも影響を与えています。このため、それぞれの社会における格差のあり方、さらにはそれを支えている人々の視角や価値付けが「当たり前のようで実は当たり前でない」と示していくことが、格差問題のより適切な解決策を考えていくことにもつながっていくものと考えています。
この道に入ったきっかけ
生まれ育った鳥取は韓国が近く、小さいころから、海岸への漂流物や普通に聞こえてくる韓国のラジオ放送などを通じて、すぐ近くに、言葉も違うまったく別の社会が存在しているということに興味を持っていました。当時感じていた「そこでは人々はどんなことを考え、どんな生活をしているのだろう?」という素朴な疑問が現在の研究につながっています。
中高時代
「海外への関心」を生かした勉強をするためにはどの分野に進めばいいか、いろいろと調べ、考えました。結局、関心を持っていた人々の考えや生活を直接対象とするためには、国際関係論や政治学、経済学よりも、社会学が適切なようだと考え、その方向に進路を定めました。
おすすめの本
先生の専門分野に触れる本