ニューリーダーからの1冊

植物生理学が専門の皆川純先生(総合研究大学院大)がおススメ
『星を継ぐもの』
ジェイムズ・P・ホーガン(創元推理文庫)
太陽系の歴史がひっくり返るSF小説ですが、私はこれを読んで生物学の力を学びました。
エネルギー問題を背景に期待上昇。「光のアンテナ」に着目した植物光合成研究。
皆川純先生 総合研究大学院大学
<専門分野:光合成(植物生理学)>
植物が光合成を行うための「光のアンテナ」に着目。より効率的に光を集めるための開発をめざしている。基礎研究が主だが、結果として、より速く育つ植物、砂漠でも育つ植物、バイオディーゼルを産生する植物の開発など、実用的研究に科学的根拠を与える有望研究となる。
先生
皆川純(みながわじゅん)
専門分野:光合成(植物生理学)
総合研究大学院大学 生命科学研究科 基礎生物学専攻/
基礎生物学研究所 教授
1964年東京都生まれ 神奈川県立光陵高校出身
研究

私は、光合成を行う装置が環境に適応をする仕組みを、「単細胞緑藻」を使って研究しています。やっとタンパク質や色素などの登場人物の顔ぶれがわかった程度で、その登場人物が何を演じているのかを明らかにするのが私の課題です。植物は、光合成を行うために「光のアンテナ」を持っています。光のアンテナの大きさの調節や、光のアンテナの光を集めるモードと光を捨てるモードのスイッチの仕組みを解き明かすこと、さらには、より効率的に光を集めるための技術を開発することに挑戦しています。
私たちの研究は、基礎研究と言って、人類の生命に対する理解を深め、知の地平線を広げるために行われています。ただその結果、例えば光合成の研究などは、より速く大きく育つ植物、暗い場所や砂漠などでも育つ植物、人類が今必要としているエネルギー物質、例えば水素やバイオディーゼルなどを生産する植物などを開発しようとするときに、研究の方向性やアプローチに科学的な根拠を与えることを期待されています。次世代エネルギーが話題となる今、光合成研究にかけられる願いのようなものを肌で感じるようになりました。
この道に入ったきっかけ
大学院生の時は、細菌の呼吸の研究をしていました。ちょうどそのころミヘル、ダイゼンホーファー、フーバーという3人の研究者が、光合成細菌の光合成装置の心臓部の構造を決定しノーベル賞を受賞しました。呼吸と光合成は似たところもある反応なのですが、この3人の研究を知れば知るほど、光合成はそこまでわかっているのかと驚きました。また、光合成は光で反応を厳密にコントロールできるユニークな研究対象であることもわかり、魅力を感じました。
そこで、大学院を卒業した時点でアメリカに留学し、アメリカの大学で光合成の研究を始めることにしたのです。そのときの研究室のクロフツ教授に勧められたのが、当時遺伝子操作が可能になり話題となっていた単細胞緑藻クラミドモナスでした。私は、クラミドモナスを使った光合成の分子遺伝学研究を始めました。
中高時代
小学生のころから科学者になりたいと思っていました。世界を股にかけるような仕事、それでいて金儲け的なものではない、自分がこの世に生を受けた意味を感じられるようなやりがいのある仕事をしたいと思っていました。
大学時代
ピアノのサークルに入り、ピアノをたくさん弾いていました。また、ふとしたことでコンピュータを買い、プログラムを組めるようになりました。プログラムが自分の意のままに動くことに快感を覚えたこともあり、やがてプログラミングのアルバイトをするようになります。昼は実験、夜は市販のワープロソフトやホテルの予約管理システムの開発などに携わった時期もありました。コンピュータ関係で生活していけたと今でも思っています。
趣味・休日は?
趣味はガーデニング。ブドウの木の世話をしたり、ハーブを育てて食事に使ったり。
おすすめの本、映画

『ご冗談でしょう、ファインマンさん』
R.P.ファインマン 大貫昌子:訳(岩波現代文庫)
ノーベル賞を受賞した科学者が、どんなに人間味を持った人物だったのか、どんな人生を送ったのかがよくわかります。
[出版社のサイトへ]
『バベットの晩餐会』映画
ガブリエル・アクセル監督作品。人に感動が伝わる瞬間を味わうことができます。幸せとはどういうものか、一つのかたちがわかります。
先生の専門分野に触れる
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