ニューリーダーからの1冊

有機合成化学が専門の吉田拡人先生(広島大)がおすすめ
『化学者たちの感動の瞬間 興奮に満ちた51の発見物語』
有機合成化学協会:編(化学同人)
中高生には難しい内容かもしれませんが、日本を代表する有機化学者の輝かしい発見秘話が述べられています。
[出版社のサイトへ]
斬新な手法で有機化合物を作り出す ~2010年ノーベル化学賞はこの分野
吉田拡人先生 広島大学
<専門分野:有機合成化学>
医薬品、液晶、香料、染料など、「人類生活の質(QOL)向上に欠かせない機能を持った物質」の多くは、「有機化合物」だ。日本人研究者がノーベル化学賞の受賞が立て続き、この分野の研究はめざましい。吉田先生は、「アライン」という活性分子に着目し、化合物をより効率よく簡便に合成するための手法(反応)の開発を行っている。
先生
吉田拡人(よしだひろと)
専門分野:有機合成化学
広島大学 工学部 第三類(化学・バイオ・プロセス系)
/工学研究院 物質化学工学部門 准教授
1973年福岡県生まれ 福岡県立福岡高校出身
研究
医薬品、液晶、香料、染料など、「人類生活の質(QOL)向上に欠かせない機能を持った物質」の多くは、「有機化合物」です。これら有機化合物をより効率よく簡便に合成するための手法(反応)の開発に重点を置き研究をしています。鈴木章先生、根岸栄一先生がノーベル化学賞を受賞されたように、近年の有機合成化学の発展はめざましいものがありますが、「ほしいもの(分子)」を何でも自在につくれるかというと決してそうではありません。既存の手法では困難であった分子合成を可能にする斬新な反応の開発が求められています。
私は「アライン」という活性分子に着目しています。反応系や触媒を綿密に設計できさえすれば、新たな反応開発につなげることが可能と考えます。
「モノづくりは純粋に楽しい」の一言に尽きます。先人が手にすることがなかったオリジナルな分子や反応を今まさに自分の手で作り上げる達成感があります。

この道に入ったきっかけ
高校2年になるにあたって、理系・文系の選択をしなければなりませんでした。そこではじめて大学の学部で何が学べるかを真剣に調べ、第一印象で「化学」と決めた気がします。はじめから化学者を指向していたわけではなく、きっかけはそのようにささいなものでした。
中学時代
中学1年の担任の先生には影響を受けたと思います。社会担当でしたが、科学雑誌の『ニュートン』を読みながら給食を食べる、今思えば少し変わった先生でした。その『ニュートン』を知ったのが、私が自然科学に対する興味を持つようになったきっかけだったと思います。
大学時代
大学時代の恩師は、4年生で研究室配属されて指導を仰いだ直属の先生です。博士課程への進学を強くすすめてくださったのもこの先生で、現在の私があるのは先生によるところが大です。研究者としての姿勢にも強く影響を受けています。
趣味・休日は?
お笑いは大好きでよく見ています。私の子供時代からのヒーローはドリフターズで、特に最近その偉大さを再認識しています。また、野球も好きでホークスの勝敗に一喜一憂しています。
先生の専門分野に触れる本

『化学者たちの感動の瞬間 興奮に満ちた51の発見物語』
有機合成化学協会:編(化学同人)
中高生には難しい内容かもしれませんが、日本を代表する有機化学者の輝かしい発見秘話が述べられています。
[出版社のサイトへ]
Molecules that changed the world
K. C. Nicolaou、Tamsyn Montagnon (Wiley-VCH)
洋書。世界を変えた分子たちというタイトルになりますが、人々の生活を大きく変えた有機化合物が化学者と共に紹介されています。日本人化学者の名前もあります。