ニューリーダーからの1冊

ケミカルバイオロジーが専門の掛谷秀昭先生(京都大)のおススメ

 

『くすりをつくる研究者の仕事』

京都大学大学院薬学研究科:編(化学同人)

薬のタネ探しから私たちに届くまでを、京都大学の先生たちがわかりやすく紹介。

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がん・感染症・心不全などに有効な薬の“タネ”の発見から創薬へ

掛谷秀昭先生 京都大学

<専門分野:ケミカルバイオロジー、創薬科学、天然物化学>

「創薬ケミカルバイオロジー」という新しい学問分野で、がん、感染症、心疾患などの病気に対する次世代化学療法の開発を目指して、創薬科学研究を行う。薬のもとになる“タネ”を求めて、合成化合物に加えて、広く天然資源(微生物、薬用植物、漢方・生薬、海洋無脊椎動物、機能性食品など)の有効利用を行っている。

 先生

掛谷秀昭(かけやひであき) 

専門分野:ケミカルバイオロジー、創薬科学、天然物化学

京都大学 薬学部 薬科学科、薬学科/薬学研究科 医薬創成情報科学専攻 教授

1965年岡山生まれ 岡山県立井原高校出身

 


 研究

ケミカルバイオロジーとは、化学や化合物をツールとして生物学の謎を解明する学問です。その中で私たちは「創薬ケミカルバイオロジー」の分野で、がん、感染症、心疾患などに対する次世代化学療法の開発を目指した研究を行っています。それには新しい有用な生物活性物質(薬の“タネ”)の発見・開発が成功のカギを握っています。

 

薬のタネの探索は合成化合物だけでなく、広く天然資源(微生物、薬用植物、漢方・生薬、海洋無脊髄動物、機能性食品など)も活用しています。例えば、がんに対する薬剤開発では微生物が生産する有用な化合物やショウガ科ウコンの主成分であるクルクミンに着目し研究を展開しています。また、天然資源からの探索研究に加えて、異なる微生物の複合培養やゲノム情報科学を駆使した現代版・天然物化学研究の確立を目指しています。

 

新しい有用な生物活性物質の発見・開発には、セレンディピティー(serendipity:思わぬものを偶然発見する能力)が重要です。そのためには、日々、様々な面で自分自身を磨きあげることが大切です。世界でだれも見出したことがない化合物の化学構造や薬理活性に出会った時の感動は筆舌に尽くしがたいものがあります。私たちの薬の“タネ”から完成した薬が、1日でも早く、患者さんに届く日を期待しています。

 


中高時代

中・高時代ともに、幸運にも多くの個性あふれる先生方に出会うことができました。高校卒業後の1年間は、寮生活を送りながら予備校(河合塾・広島校)に通い、志をともにする仲間とともに、目いっぱい受験勉強に励んでいました。(当時、もう2度と受験勉強をしたくないと思うほど、猛烈に勉強しました。)そこで、多くの個性あふれる名物講師にも出会い、学問の楽しさのようなものを感じたものです。 

 


おすすめの本

『がん遺伝子に挑む』

野田洋子、野田亮(東京化学同人)

まるで自分自身が、がん遺伝子の発見現場にいるかのように、徹夜で上下巻を一気に読破しました。

 

『見えない巨人―微生物』

別府輝彦(ベレ出版)

別府先生の独創的な視点からの微生物学の醍醐味を味わえます。

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『オンリーワンに生きる―野依良治教授・ノーベル賞への道』

読売新聞中部社会部(中央公論新社)

野依良治先生(2001年ノーベル化学賞)の「オンリーワン」研究者人生に感動します。

 

『栄光なき天才たち』

伊藤智義(集英社コミック文庫)

科学・スポーツなど幅広いジャンルにおける天才たちの知られざるエピソードを盛り込んでいる人物伝記です。

 


先生の専門分野に触れる本

『くすりをつくる研究者の仕事』

京都大学大学院薬学研究科:編(化学同人)

薬のタネ探しから私たちに届くまで、わかりやすく紹介されています。

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『入門ケミカルバイオロジー』

入門ケミカルバイオロジー編集委員会(オーム社)

学際研究領域である「ケミカルバイオロジー」がわかりやすく紹介されています。

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