この仕事をするならこんな学問が必要だ<医薬品業界編>

遺伝子治療薬、抗体医薬品など、最先端創薬の開発研究が目白押し!薬学に加え情報処理の知識も求められる

アステラス・アムジェン・バイオファーマ株式会社

薬事部 小池敏さん

 

第3回 新しい創薬ビジネスの創出には、遺伝情報の分析に詳しいバイオインフォマティクス系人材が欠かせない

製薬会社の仕事の流れを、もう少し細かく見ていくことにしましょう。それは以下のような流れになります。

 

研究企画→基礎研究→スクリーニング→非臨床試験(動物実験)→臨床試験(治験)→承認→製造・販売

 

「研究企画」は製薬のプロセス全体を統括し、新規物質の探索・最適化に関わります。基礎研究は新規物質の創成を行います。ちなみに全体を統括する「研究企画」部門の人材は、製薬会社の特許による独占販売で利益を確保する知財部門に進むなど、製薬会社の1つの有力なキャリアの流れになっています。

 

従来、「基礎研究」は、次のステップの化合物をふるいにかけ、薬効あるものをきっちり取り出す「スクリーニング」部門ともども、製薬の主たる人材であり、薬理系化学の人材が中心でした。しかし、最近、製薬の中枢を担うこうした仕事には、遺伝情報の分析に詳しいバイオインフォマティクスの情報系人材が欠かせなくなっています。それはかなり大きな変化だと思います。

 

その次の「動物実験」は、目標とする薬の効果の有無を確認するために行われます。初期のスクリーニングテストで選ばれた化学物質について、動物を使った前臨床試験と呼ばれる動物実験が行われるのです。特に重要な動物実験は、有害な作用の程度を調べる毒性試験です。毒性試験は致死量だけでなく、有害な作用の種類、催奇性の有無や生殖器官への毒性、発がん性、薬物依存性などについても様々な角度から検討されます。ですので、動物実験系の一般毒性研究には、農学系バイオの人材が必要になります。

 

薬の開発業務の中でも特に時間を要するのは臨床試験(治験)のステージです。これに必要な人材については、次にお話ししましょう。さらに製薬会社の使命として、承認された医薬品を患者および医師に安定して届けるという「製造・販売」も重要です。この期間、再評価制度というものが設けられ、薬の有効性および安全性に関して再評価を行います。

 

販売の仕事の中で、実際に薬が市場に出てからどのような患者に投薬されているか、有害な作用は出ていないか、などのデータを収集するといった薬の最適化に関する仕事も行っています。必要な人材は、理論薬理学のような、基本的に医薬に対する知識はもちろんですが、ここでも、バイオインフォマティクスや臨床統計学などの情報処理関係の知識が多く求められるようになってきました。

 

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