この仕事をするならこんな学問が必要だ<鉄鋼業界編>

新素材が登場しようとも、鉄のニーズは不動。特長のある鉄鋼材料を生み出す面白さあり

新日鐡住金株式会社

基礎研究所 経営企画部 新素材事業本部(在籍)佐藤公隆さん

 

第3回 材料系の人材が多いが、土木系の人材も意外に多い ~鉄を作るだけの会社じゃない

製鉄会社に必要とされる学問について話しましょう。製鉄会社の仕事を支えるのは、学問・学科的に言うと、工学系の材料工学や材料化学の人材が多くを占め、私のように鉄の成分研究をする者には無機系化学系の人材がベースになります。

 

2014年の新入社員諸君のリストを見ると、物質化学、材料物理科学、材料・材料工学、物質創成、マテリアル科学…と並び、やはり材料、物質、マテリアルの出身者が多いようです。それに機械工学、電気電子工学、プロセス・化学工学系の出身者が続きます。

 

しかし採用時に、あまり専門学科にこだわらない傾向があります。入社後の社内教育研修があるからです。新入社員の出身は、上記のほかには、総合デザイン工学、環境エネルギー工学、ナノシステム、都市環境工学、電気エネルギーシステムとバラエティに富んでいるようですし、歴代の経営陣にもけっこうユニークな出身者は多くいます。旧新日鉄最後の社長は、農学出身(農業経済)でした。その人の場合はおそらく事務系での採用だったからでしょうけれど、経営陣には応用物理出身者もいます。バイオ、植物等の分野以外はたいていの人材が入ってきていると考えていいでしょう。近年は、生産工程の合理化・IT化が進み、コンピュータ関連の人材群も増えています。

 

 

トルコ、ジブラルタル海峡では現場で指揮も

 

意外に多いのは建築土木系出身者の人材です。これには理由があります。当社の場合、製鉄会社でありながら、製鉄会社サイドの立場から、大きな土木建築工事での現場の指揮・マネジメントにかかわることがけっこうあるからです。明石海峡大橋の全体の指揮官を務めたのは、土木建築出身の私の同期でした。意外に知られていないことですが、土木や大きなビル建築現場に設計段階からかかわり、鉄鋼の構造物を作る製鉄会社の立場で、全体をまとめる指揮・マネジメントの仕事をしているんです。同様のことはトンネル掘削でも行います。

 

最近の話題としては、福島県の沖合で行われている洋上発電のプロジェクトも、新日鉄住金がメインで進めています。いずれにしても鉄の技術を生かすという立場で、全体のマネジメントにまでかかわるということですね。

 

海外のプロジェクトでは、トルコのイスタンブールに近いジブラルタル海峡にかかる2本の橋にも新日鉄住金の鉄を使っていて、やはり日本のゼネコンと共同で、指揮・マネジメントまで行っています。鉄を作るだけの会社じゃないんですね。

 

この業界に興味を持ったら

『金属材料の最前線 ―近未来を拓くキー・テクノロジー』

東北大学金属材料研究所(講談社ブルーバックス)

材料科学の研究は、実用研究としての側面と基礎研究としての側面を併せ持ち、地球上に存在する人類に役立つ多くのものが何らかの材料でつくられているため、社会的にも学問的にもその果たすべき役割は極めて大きく、21世紀のエネルギー問題や環境問題を解決するためにも大きな期待が寄せられている。本書では、最先端の研究成果とその研究の意義をベースにして、今これらの分野で注目されている課題に力点をおき、これらの材料の性質、構造、特徴、主な使い道、研究の課題などを説明しながら、社会にどのように役立っているか、今後どのように社会に役立つかを、わかりやすく解説したもの。

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『金属のキホン ―イチバンやさしい理工系シリーズ』

田中和明(ソフトバンククリエイティブ)

著者は、鉄をつくる現場を知り尽くしており、できる限りわかりやすく、金属の魅力を具体的な製品から解説している。

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『カラ-図解 鉄と鉄鋼がわかる本』

新日鐵住金編(日本実業出版社)

鉄づくりのそれぞれの工程の専門家が、オールカラーの図と写真を豊富に盛り込みながら鉄ができるまでを紹介。

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『鉄の歴史と化学』

田口勇(裳華房)

著者は、新日鐵に在籍した化学系研究者であるが、後年国立歴史民俗博物館教授に転じ、活躍された。鉄に関係した啓蒙的著述も多い。

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