この仕事をするならこんな学問が必要だ<IT業界/金融・決済サービス>

ネット上の膨大なデータを分析し新しい価値を創造 〜IT、数学、統計学を駆使するデータサイエンティストの活躍

株式会社メタップス

データインテリジェンス統括部 マネージャー データサイエンティスト

有井勝之さん

データインテリジェンス統括部 データサイエンティスト

西口真央さん

 

インターネットにアクセスしていると、画面に様々な広告が表示されます。それが「自分が興味を持っているものだった」「昨日検索したことに関連するものだった」。そんな経験はありませんか。これは、そのWebサイトやアプリケーションのユーザのアクセス履歴から得られる膨大な情報を分析し、どんな広告をどこに出せばよいかといったマーケティング戦略に反映された結果なのです。そして、このような膨大な情報を分析するのが、データサイエンティストという仕事です。その仕事と将来の可能性について、株式会社メタップスの有井勝之さんと西口真央さんに伺いました。

おススメ本は『確率思考の戦略論 USJでも実証された数学マーケティングの力』

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第1回 顧客企業の膨大なデータを分析し、経営をサポート

左から、西口さん、有井さん
左から、西口さん、有井さん

——まず、メタップスさんは何をするIT企業ですか。

 

有井さん:企業の経営を改善するためのアドバイスをすることを経営コンサルティングと言いますが、メタップスは、コンサルティングの中でも、Webサイトやスマートフォンのアプリケーション事業を展開する会社が持つデータをお預かりし、それを解析して、商品やサービスをもっと売れるようにしたり、利用者を増やしたりするためのご提案をすることをメインの仕事としてきました。

 

2011年ごろからスマートフォンが普及しはじめ、多くの人がスマートフォンでゲームやSNS、インターネットなど様々なことをするようになりました。その結果、スマートフォンの利用履歴など、様々な大量のデータが蓄積されていきました。こうしたデータを「ビッグデータ」と言います。

 

その頃、当社はスマートフォンで、ゲームなど様々なアプリケーションを使っている人が、いつ、どこでどのように使っているかを追跡(トラッキングと言います)できるシステムを開発しました。

 

そして、アプリケーションでビジネスをしている企業にこのシステムを導入していただき、そのトラッキング歴を分析して、次にどのようにすれば、ビジネスがよりうまくのか、その方法をコンサルティングするようになりました。

 

現在は、アプリケーションだけでなく、インターネットで楽しむゲームやショッピングといったビジネスも含めたコンサルティングをしています。例えば、何歳くらいの男性、あるいは女性で、何時頃ゲームをする人かといったユーザのグループ分け、このグループの人ならここにお金を使うだろうというポイント、広告効果などを分析し、ユーザごとに最適なタイミングでお知らせを送る、クーポンを配信するなどといった改善点やその手法を提案して、その企業からコンサルティング料をいただいています。現在は、2016年12月に株式会社メタップスリンクスという会社を設立し、この事業を継承しました。

 

——コンサルティング以外の事業も展開されていますね。

 

有井さん:ファイナンス、マーケティング、コンシューマーの3つの事業を展開しており、各事業に属する会社は、メタップスのグループ会社として活動しています。

 

ファイナンスとは、金融や、企業が資金を調達したり資金を運用したりすることですが、私たちがファイナンス事業と呼んでいるのは、お金の決済に関する事業です。「ペイデザイン株式会社」は、ビジネスを行う企業に最適な決済の方法を提案し、決済を代行する会社です。支払い方法には、クレジットカード、銀行振り込み、携帯電話の料金と一緒に支払うなど、様々な方法がありますよね。ユーザにとっては、アプリケーション内課金のゲームをしたのかインターネット通販で物を買ったのかなど、何をしたかや生活リズムによって、便利な支払い方法は異なりますので、各企業のサービスを利用するユーザに合う決済方法をご提案しています。

 

マーケティングも、本来は、市場調査や広告・宣伝、流通ルートの開発、販売戦略など幅広い仕事を指します。当グループでは、すでにご紹介した「株式会社メタップスリンクス」以外に、「株式会社デジタルサイエンスラボ」という会社があり、スマートフォンのアプリケーションに特化して企業のマーケティングをサポートしています。ユーザのアプリケーションの使い方を解析して、どんな広告を表示するとよいかをご提案しています。

 

コンシューマーとは消費者のことで、コンシューマー事業では、「株式会社ビカム」という会社があり、消費者に直接アプローチする事業を行っています。「株式会社ビカム」が運営するWebサイトでは、契約していただいた通販サイトの商品を、カテゴリ別やブランド別に横断して検索することができます。ほかにGoogleやYahoo!など多くの広告が掲載されるようなWebサイトに最適な広告を配信するための大量な商品データベースを作るなどのサポートを行っています。

 

「Film Story」は、スマートフォンでユーザが写真や動画を組み合わせることで映像を作成し、音楽もつけることができるアプリケーションです。有料版もありますが、広告表示がされるなどの条件で、無料版を利用でき、この広告を出す企業を募集して、収入を得ています。

 

インタビュー

データサイエンティスト 有井勝之さん インタビュー

(データインテリジェンス統括部 マネージャー )

データサイエンティスト 西口真央さん インタビュー

(データインテリジェンス統括部) 

興味がわいたら

『確率思考の戦略論 USJでも実証された数学マーケティングの力』

森岡毅、今西聖貴(KADOKAWA)

人間の日々の意思決定行動を数式で表現し、説明しているだけでなく、ビジネスにおける意思決定でどのように活用されているのかを具体例をもとに紹介しています。また、物事を確率的に捉えているあたりが本質的でもあり、うまく整理されています。数式もいくつか出てきますが、ビジネス的な意味合いをつけて説明しているのでとてもわかりやすくなっています。数学が実社会にどのように役立っているのかをイメージできる点がとてもよいです。

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『王様達のヴァイキング』

さだやす、深見真(小学館ビッグコミックス)

40代のエンジェル投資家と18歳の天才ハッカーが、サイバーセキュリティを舞台に活躍する物語。現在、あらゆるものが当たり前のようにネットに繋がり、とても便利な世の中になりました。その一方で、サイバー攻撃の脅威もすごい勢いで増大しています。この漫画を通して、テクノロジーの可能性と脅威の両面を考えるきっかけになればと思います。また、弊社と近い業界、いわゆるITベンチャーで働く人たちもよく登場してきます。新卒で大手企業の内定を蹴って起業し、数年後に20億円で売却したエピソードや、数人で起業してSNSを作りどんどん会社が大きくなっていく話は高校生にとっても刺激的だと思います。

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『疲れない脳をつくる生活習慣』

石川善樹(プレジデント社)

毎日、全力かつ絶好調で過ごすためのマインドフルネス入門書。パフォーマンス良く受験勉強をするための心得的な本。

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『インベスターZ』

三田紀房(講談社モーニングKC)

中高一貫校の各学年の成績トップ6人のみが参加する投資部が舞台の漫画。学校の資産である3000億円を運用し、様々な投資に挑戦します。お金とはなにか、投資とはなにかを楽しく学ぶことができます。

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『「大発見」の思考法』

山中伸弥、益川敏英(文春新書)

考え続けることの重要性を教えてくれる本。真似できるところ(すべきところ)がたくさんあります。

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『未来に先回りする思考法』

佐藤航陽(ディスカヴァー・トゥエンティワン)

弊社CEOの著書。イノベーションはどのようにして起こるのか、テクノロジーは何を解決するものかなど、未来を予想するためのヒントが書かれています。これからの未来を共に作っていく高校生たちにもぜひ読んでほしい本です。

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『あさきゆめみし』

大和和紀(講談社KCデラックス)

源氏物語の勉強になることはもちろん、1000年たっても基本的に人間の本質は変わっていないんだなぁと考えさせられます。人をより科学的に理解したいと思ったきっかけの本です。(有井さん)

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『「フカシギの数え方」おねえさんといっしょ!みんなで数えてみよう!』

https://www.youtube.com/watch?v=Q4gTV4r0zRs (MiraikanChannel)

10分くらいの動画です。スーパーコンピュータで25万年もかかる数え上げの問題も、最先端のアルゴリズムを使えばたった数秒で数え上げることができることを伝えています。アルゴリズムに興味を持つきっかけになればと思い推薦します。

 

『TED』

https://www.ted.com/

様々な分野の人の英語によるプレゼンテーションは、英語の勉強に最適。教養としても幅広く学べるのでテーマは絞らず、幅広く。基本的に話が上手なので、何を聞いても面白いです。 

『まおゆう魔王勇者』

燈野ままれ(KADOKAWA)

魔王と勇者が手を組み、より豊かな社会の創造を目指すファンタジー小説。社会や経済の仕組みや歴史を学ぶことができます。そして魔王がかわいい。

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