この仕事をするならこんな学問が必要だ<IT業界/金融・決済サービス>

データサイエンティスト 有井勝之さん インタビュー

株式会社メタップス

データインテリジェンス統括部 マネージャー 

■有井さんの担当する業務は、どんな仕事でしょうか。

 

自社が保有している独自データや誰でもアクセス可能なオープンデータを利用することにより、ヒトがお金を消費するプロセスやお金を使う理由を解き明かし、タイプ毎に、どのようにすればヒトの消費行動を変えることができ、そこに新しい価値を創り出すことができるのかということに取り組んでいます。大量のデータをもとに機械学習等の手法を用いながら、見つけ出した行動変容のインサイトをいかにして実際のサービスに落としこむことができるのか、といったことを日々行なっています。

 

■有井さんが担当する業務(仕事)に、関係が深い専門知識(スキル)分野を3つ挙げてください。

 

・社会心理学

・機械学習、ニューラルネット、ディープラーニング、マイニング

・データベース・検索

基本的には、ヒトの行動を対象にしているので、なぜヒトがそのような行動をするのかということを理解するために、心理学や脳科学的なアプローチを大切にしています。また、データを扱う上で、データ解析のデータをどのように保有し、効率的に抽出するのかという観点で、データベースの理解は必要になり、それを分析する手法として、機械学習等も必須です。

 

■大学では何を学んでいましたか。そして、それは、今の仕事とこのようにつながりますか。

 

大学では物理学を専攻していました。そこでは、仮説と検証を繰り返しながら物理「現象」を理解し、解釈するという思考法を徹底的に教わったと思います。社会人になってからは、対象が「物理」から「ヒト」や「サービス」に変わっただけです。ビジネスにおいても、仮説をたて、実験し、検証、解釈するという作業の繰り返しになります。そういう意味では、やっていることは変わっていないと思います。

 

■大学時代、影響を受けた先生はいらっしゃいますか。

 

物性理論が専門の安藤恒也先生です。今は退官されています。

『研究のキーワードは「単純」で「簡単」である。これは問題自身が単純で簡単という意味ではなく、基礎的なものはなるべく単純に問題が設定でき、また簡単に説明できるはずと考えるからである。』先生のお言葉で、今でもこれは全てに通じる本筋だと思っています。

 

■高校時代は、どのように学んでいたか、何に熱中していたかを教えてください。

 

じっくりと考えることが好きだったと思います。特に、数学は、1問を1日中考えるということは良くあったと思います。物理などに出てくる公式といわれるものも、天下り的に覚えさせられるのは大嫌いだった(とても苦手だった)ので、しっかりとその背景(なぜその公式が成り立つのか)を理解するようにしていました。何をするにも、「なぜ?」を大事にしていたと思います。一つ一つ解決、理解しながら、自分が理解していないことを認識し、理解できる喜び、知らないこと、新しいことを学ぶ喜びを高校時代に経験したんだと思います。

 

人工知能の分野では、日々世界中のどこかで新しい発見があります。そういった事象を興奮しながら吸収できているのも、こういった体験があったからだと思います。

 

■高校生が、貴社の業務やそこで求められる知識など関する課題研究や学習をするとして、高校生でも取り組める課題を挙げていただけますか。

 

海外のメディアを使いながら、日々、どのような新しい人工知能関連のサービス等ができているのかをまとめてみてはどうでしょう。「何が新しいのか」「何が面白いポイントなのか」というのを意識してまとめると良いかと思います。テクノロジーの分野は残念ながら海外の方が日本よりも先を行っていることが多いので、英語の勉強を兼ねてやってみるのは良いかと思います。

 

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興味がわいたら

『確率思考の戦略論 USJでも実証された数学マーケティングの力』

森岡毅、今西聖貴(KADOKAWA)

人間の日々の意思決定行動を数式で表現し、説明しているだけでなく、ビジネスにおける意思決定でどのように活用されているのかを具体例をもとに紹介しています。また、物事を確率的に捉えているあたりが本質的でもあり、うまく整理されています。数式もいくつか出てきますが、ビジネス的な意味合いをつけて説明しているのでとてもわかりやすくなっています。数学が実社会にどのように役立っているのかをイメージできる点がとてもよいです。

[出版社のサイトへ]

『疲れない脳をつくる生活習慣』

石川善樹(プレジデント社)

毎日、全力かつ絶好調で過ごすためのマインドフルネス入門書。パフォーマンス良く受験勉強をするための心得的な本。

[出版社のサイトへ]

『「大発見」の思考法』

山中伸弥、益川敏英(文春新書)

考え続けることの重要性を教えてくれる本。真似できるところ(すべきところ)がたくさんあります。

[出版社のサイトへ]

『あさきゆめみし』

大和和紀(講談社KCデラックス)

源氏物語の勉強になることはもちろん、1000年たっても基本的に人間の本質は変わっていないんだなぁと考えさせられます。人をより科学的に理解したいと思ったきっかけの本です。

[出版社のサイトへ]

 

『TED』

https://www.ted.com/

様々な分野の人の英語によるプレゼンテーションは、英語の勉強に最適。教養としても幅広く学べるのでテーマは絞らず、幅広く。基本的に話が上手なので、何を聞いても面白いです。 

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