材料工学、機械、電気・電子工学の技術を結集し、世界に誇るハイテクトイレを開発
株式会社LIXIL
トイレ・洗面事業部 洗面開発部 羽柴千明さん

住宅やオフィス、商業施設の建物の外装・内装、玄関や窓、トイレ、バスルーム、キッチンと、みなさんもきっとどこかで接したことのある株式会社LIXILの商品。こうした身の回りに当然のようにある商品は、メーカーが使う人の気持ちになって企画し、様々な分野の知識や技術を使って開発されたものです。長年トイレの商品開発や商品企画を担当してきた羽柴千明さんに、トイレの企画の視点や開発を中心に、お話を伺いました。
おススメ本は『マイケル・ポーターの競争戦略』
企業の持続的な成功に不可欠な競争戦略の基本を学べます。商品企画を志す技術者の人におすすめです。
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第1回 温水洗浄便座やセンサー付、抗菌加工された日本のトイレ

株式会社LIXILは、窓・玄関ドア・エクステリア・タイルといった内装・外装用の建材、トイレ・浴室・システムキッチンなどの水回り設備、カーテンなどインテリア製品など、戸建住宅・マンション・オフィス・商業施設などに使われる幅広い商品を製造・販売するメーカーです。
トイレや水栓金具といった水回り製品は、かつてはどこでも、手でレバーを操作したり、蛇口をひねったりして、水が流れるというシステムでした。ところが現在の日本の水回り製品は、世界の中で最も高機能化しており、家庭のトイレにも暖房便座があって、シャワーが出てお尻を洗ってくれるようになりました。さらに、便座を離れるとセンサーが反応して自動で水が流れたり、蛇口の下に手をかざすと自動で水が出たりするものも増えています。
こうしたトイレや水栓金具のより快適で便利な商品の開発は、電気・電子系デバイスや制御系の人と機械系の人がタッグを組んで行っています。
また、便器などの衛生陶器は、試作品を何度も作ってテストを繰り返しながら汚物がきれいに流れる形を開発しますが、最近ではコンピュータで流体解析をして汚物の流れに最適な形を設計したりしています。
陶器の釉薬に銀イオンを混ぜる抗菌加工技術
トイレの開発は、昔は汚物をどうしたらきれいに流すことができるかというメカニカルな部分を主に追究してきました。汚れというのは何でできているのかを研究する中で、便が付着した汚れだけでなく細菌が汚れを作っていることがわかりました。
1980年代に抗菌作用のある靴下など抗菌製品が市場に出回ると、当社でも、それを衛生陶器の汚れの防止に活かせるのではないかと考えて、抗菌作用のあるトイレの開発に取り組みました。抗菌作用がある素材といっても、銀、銅など様々です。その中でお客様が買える値段、安定した性能を出せる素材、様々な条件を考えた上で、いくつか候補を挙げて試作や実験、評価を繰り返しました。そして1993年、陶器の釉薬に銀イオンを混ぜて高温で焼成する抗菌加工技術を世界で初めて開発しました。
興味がわいたら

『マイケル・ポーターの競争戦略』
ジョアン・マグレッタ 櫻井祐子:訳(早川書房)
マイケル・ポーターは、政府や企業の戦略アドバイザーを務め、競争戦略手法を提唱した経営学者。企業の持続的な成功に不可欠な競争戦略の基本を学べます。商品企画を志す技術者の人におすすめです。
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