この仕事をするならこんな学問が必要だ

<精密化学製品・機器>

最先端の医療画像を提供するX線撮影システムや医療IoTを実現 〜写真フィルムやデジタルカメラで培った材料工学や画像工学などを基礎に

富士フイルム株式会社

R&D統括本部 メディカルシステム開発センター

鍋田敏之さん

 

第3回 様々なノイズの除去と格闘しながら、医療現場での使い勝手の良さを追究

カセッテDR
カセッテDR

前回紹介した「DR(Digital Radiography)」というX線撮影のデジタル画像化システムは、X線撮影をするときに体に密着させる側の装置の「カセッテDR」という製品に搭載されています。そして「カセッテDR」は、X線を発する装置と併せて「CALNEO AQRO」という製品として発売されています。

 

かつては、X線撮影をするときには、X線を発するデバイスと身体を透過したX線を検出する装置をコードでつなぐ必要がありました。しかし、現在、X線検査は、レントゲン室だけでなく、病室など院内の様々な場所で行うようになっています。そのため、X線の照射装置と受光部とのデータ通信を無線で行えるように開発しました。

 

カセッテDRを患者さんの身体の下に挿入し、上からX線を照射して撮影する
カセッテDRを患者さんの身体の下に挿入し、上からX線を照射して撮影する

正確にX線による信号だけを検出する技術

 

カセッテDRに内蔵されている前述のTFTパネルには、照射開始後の微量のX線で反応するスイッチ素子が埋め込こまれており、そのスイッチがONになると、全ての受光素子が反応して画像を蓄積してくれるというシステムです。言葉で言うと簡単ですが、微量のX線とノイズを見分けて、正確にX線に対してのみONにするという信号処理技術の開発がとても大変でした。

 

例えば撮影するときに少しでも揺れると、エレキノイズや衝撃ノイズが入りますし、横でMRIやCTの撮影をしていると、磁場のノイズが入ります。こうした中、X線による信号だけを検出する技術を開発したのです。このとき必要なのが、どの信号がX線の信号かを見極めるためのソフトウェア技術です。これには、まずアナログで入ってきた情報をデジタルに変換する必要があり、デジタル回路だけでなくアナログ回路の知識も必要です。

 

外からの衝撃に強く、電磁波の影響を受けない素材や形状に

 

また、電子レンジの筐体は、内部の電磁波が外に出ない素材で作られていますが、カセッテDRでは逆に、外からの衝撃や電磁波の影響を受けないようにするために、素材や形状の検討を含めて、ボディの設計をしました。また、形状も角張っておらず、手に取りやすく、ベッドに寝ている患者さんの身体の下にも入れやすくしました。救急の現場で使う際には血液や吐瀉物がかかることもありますので、そのまま水洗いしても大丈夫なくらいの防水設計を施し、体重が重い方の下に入れても壊れないように、350kgまでの過重に耐えられる設計を施しました。その反面持ち運びしやすいように、カセッテDR自体の重さはとても軽量です。

 

さらにもう1つの課題が、厚さ15mmのボディに、TFTの素子、電子回路、無線通信のアンテナ、画像を保存するメモリなど様々なデバイスを入れ込むことでした。パソコンやスマートフォンも同じですが、狭いスペースに様々なデバイスを入れると熱くなりますので、放熱の技術も必要です。

 

このシステム開発には、前述のフラットパネルディテクターの技術に加えて通信、電磁波、放熱など様々な分野が関わっており、カセッテDRのボディそのものにも、機械材料、材料力学などの技術が詰まっています。

 

この業界/職種に関連する技術分野として「医用画像処理」を学べる大学

興味がわいたら

『クリエイティブ・マインドセット 想像力・好奇心・勇気が目覚める驚異の思考法』

デイビッド・ケリー、トム・ケリー 千葉敏生:訳(日経BP社)

発見・発明は、しっかりと準備し心構えがあるものだけが遭遇するセレンディピティーであると解いた良本。「天才的ひらめきが訪れるのは、単に挑戦する回数が多いだけ。もっと成功したいなら、もっと失敗する心の準備が必要だ」といった失敗のパラドックスの思考は、開発者に勇気を与える。

また、「何かをやってみる」という考え方を一貫して説いており、最終的に創造の飛躍を遂げるためには、とにかく始める必要があり、決して傍観者にならないことだ、という説は、研究開発やサイエンスに携わる者の原点といえる考え方である。

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『エッセンシャル思考 最少の時間で成果を最大にする』

グレッグ・マキューン 高橋璃子:訳(かんき出版)

情報の本質を掴み取る、ノイズの中からシグナルを探す、情報の本質を掴み取り、そこに集中する。こうした手法を解説。コミュニケーション能力、効率よくアウトプットを出すコツがつかめる良本。

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『イノベーションのジレンマ 技術革新が巨大企業を滅ぼすとき』

クレイトン・クリステンセン 玉田俊平太:監修、伊豆原弓:訳(翔泳社)

企業は競争相手より優れた製品を供給し続けるべく、性能改良にリソース割くあまりオーバースペックの製品開発をせざるを得ない状況に陥る。他方、最初は一見性能で負けているイノベーションや破壊的製品を軽視してしまい、結果既存企業が潰れていく。そうした失敗をロジカルに説明。性能改良といったリニア思考ではなく、イノベーション・エクスポネンシャル思考の重要性が理解できる良書。

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『考える技術・書く技術―問題解決力を伸ばすピラミッド原則』

バーバラ・ミント 山崎康司:訳(ダイヤモンド社)

論理的な説明、体系的な整理の重要性とその方法を記載した良本。ピラミッドの構造のように問題解決を上位から理解し、ポイントをしっかり腹におとしてから課題解決に取り組むといった、効率的な問題解決手段とわかりやすいプレゼンスキルを獲得できる。

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