この仕事をするならこんな学問が必要だ <自動車業界>

自動車産業から学ぶ、ものづくりの技術

〜装置・部品・材料メーカーが持つノウハウが日本の技術を支える

株式会社ニッキ元社員

松尾宏さん

 

第2回 専門企業それぞれが持つ独自の製造技術が、ものづくり大国を実現

自動車メーカーで仕様が固まると、この段階での試作部品がそれぞれの専門メーカーに提示され、量産に向けて、性能をクリアする部品の開発が依頼されました。「ものづくり大国日本」といいますが、自動車メーカーは研究や設計、テスト等は行いますが、それをどのように作るかという製造技術は持っておらず、日本は部品業界が持つ、ものづくりの技術が非常に優れているのです。

 

かつて私が携わったキャブレターは戦前戦中、戦闘機用エンジンに採用され、その技術は戦闘機等から自動車へ転換し、戦後のモータリゼーションを支えてきました。実は戦闘機のキャブレターよりも、自動車の方が難しいと大学時代の担当教授から言われており、キャブレターメーカーは、その技術を競ってきました。エンジンの性能は、最大出力以外は、キャブレターの性能が左右していたのでした。

 

■アルミダイカストは、金型技術が鍵

 

部品業界にも、協力企業の存在を欠くことができません。ニッキの製品も、アルミダイカスト、ゴムフロート、アクテュエーター用ダイヤフラム、スプリング、ねじ類、プレス品等々多数の部品で構成されており、それぞれ専門のメーカーがいます。

 

アルミダイカストとはアルミで鋳造した製品のことですが、アルミダイカストの場合、設計部門で完成品の図面を書き、生産技術部門では製品を作るための金型用の図面を書きます。アルミダイカストは、600℃に熱したアルミを金型に流し込んで作りますが、冷えると収縮するので、収縮率を見込んで金型を作る必要があるのです。その時金型職人は、アルミ製品内に空洞ができないよう、様々な工夫をします。ここが、アルミダイカストメーカー独自のノウハウとなっています。実際に製品を作っている途中でも、金型の中の湯流れ(高温で融けた金属の流れ)をスムーズにするために、金型を改善することがあります。1つの金型から何個も製品が生まれますが、約7万個で金型を更新すると言われています。

 

このダイカスト用のアルミは、再使用のアルミを混合したり、錆びを防ぐために、船舶用塗装や無電解ニッケルメッキなどの表面処理を施します。

 

■ゴム製品は、用途に応じた種類や形状、柔軟性が大切

 

ゴム製品もノウハウの固まりです。ゴムや樹脂は添加する物質が制限されてきたため、耐油性に優れたフッ素ゴム、ニトリルゴム(NBR)が主流となってきました。ゴム製品の1つにダイヤフラムがあります。エンジンの吸入負圧を利用して作動する調整弁の1つです。この部品は、ナイロンやポリエステルの布をNBR等のゴムで挟んだ構造で、作動した時、しわが寄ることがあります。しわから破損し機能を満たさなくなることがあるため、形状やゴムの柔軟性を変えるなど対策していきます。

 

■プレス製品は、製造過程を知った上での設計が重要

 

プレス製品は、鉄板を打ち抜き、そのあと、亜鉛メッキをします。メッキ工場の多くは中小企業ですが、日本のものづくりを支える重要な仕事を担っています。

 

そして安価にメッキを行うためには、設計の力が重要です。メッキ工法の一種である亜鉛メッキの場合、小さな物は1000個位を網に入れて浸けるのですが、部品が重なり合うと、その部分にはメッキが付きません。そこで突起を作る等の工夫が必要です。

 

逆に複雑な形だと、メッキ液に浸けた時、空気の泡が残る場合があり、これを防ぐために部品を1個ずつハンガーに吊るす作業が必要になり、コストがかさむことがあります。

 

設計品質はコスト全体の80%を左右すると言われるほどで、設計者が製造現場を知ることはとても大切です。

 

おススメ本

『理科年表』

国立天文台:編(丸善出版)

天文、気象、物理、化学、地学、生物、環境について収録。毎年更新され創刊より90冊目になります。新元素「ニホニウム」発見や人工知能が囲碁でプロ棋士に圧勝といった、その年の最新トピックスもわかります。

[出版社のサイトへ]

『元素図鑑 宇宙は92この元素でできている』

エイドリアン・ディングル 若林文高:監 池内恵:訳(主婦の友社)

周期表をベースにして物質を理解し、将来、ステンレス鋼や真鍮、金製品が何と何の合金なのか、製造業で禁止物質は何かといった事柄を理解する手助けになると思います。

[出版社のサイトへ]

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