この仕事をするならこんな学問が必要だ <自動車業界>

自動車産業から学ぶ、ものづくりの技術

〜装置・部品・材料メーカーが持つノウハウが日本の技術を支える

株式会社ニッキ元社員

松尾宏さん

 

第5回 ものづくりに必要な、生産現場の人材と高度な熟練工

最後に、ものづくりに携わる全ての人に重要だと思うことについてお話ししましょう。

 

自動車産業は、何層もの協力企業からなっていますが、下の層へ行けばいくほど、オールラウンドの知識が求められます。

 

トップに位置する自動車メーカーの技術職は自分が担当する高度な研究をしていればよいのですが、自動車メーカーでは、子会社や協力企業への出向や転職も少なくありません。するとそこでは、オールラウンドの知識が求められるようになります。

 

したがって、ものづくりに携わる人は、当初大企業に就職できたとしても、機械工学全般の知識を持っていることが大切です。

 

機械の精度を上回る優れた熟練工も

 

また、自動車メーカーでは、車を試作するスタッフや、生産が決まった後は工場で組み立て作業を担うスタッフも欠くことはできません。試作にあたっては、手作業で車を作ることのできる高い技術力が求められます。

 

機械では精度は機械の精度以上には絶対になりませんが、人間の手で行えば、精度はいくらでも上がります。レンズを磨いたり金属を最後に平板に仕上げたりするのは、現在でも優れた熟練工に及びません。どんなにICT化が進んでも、こうした熟練工の技術は永遠に必要であるということを、覚えておいていただきたいと思います。

 

おわり

 

松尾さんミニインタビュー

◆高校生が、この業界の技術や業務に関して課題研究や学習をするとして、高校生でも問えるようなテーマを挙げてください。

 

(1)摩擦:機械は摩擦との闘いです。摩擦の低減、摩擦を増やす、摩擦により運動エネルギーを熱エネルギーもしくは電気エネルギーに転換させる。これを理解するために、糸車を作ってみましょう。そうすればその苦労がわかります。

 

(2)振動:振動は機械的な振動がメインですが、基本的には音、電磁波(電波、光、X線等)地震波等、同じ考えです。特に注意するのが共振。固有振動ですので、物の破壊につながります。人が目で見える現象はそれぞれ違いますが、自然現象は単純です。

 

振動に関する実験をしてみましょう。何種類かバネを用意し、重りを吊るし揺すってみる。または、輪ゴムを使用して同じことをやってみる。重りが重いとゆっくり揺れて、軽いと早く揺れる。質量がわかっているものの周期を測り比較すると、未知の物の質量がわかる。実は、宇宙ステーションで健康管理で行っている体重測定方法です。

 

◆大学での専攻は何でしたでしょうか。それは、されてきた業務とどのように関連していますか。

 

大学は工学部機械工学科で、卒業論文は、マツダのガソリンエンジンを運転し、吸入空気の量を変化させ、外乱が性能に与える影響を調査しました。担当教授からは、卒論作成時に、「キャブレターはエンジンの女房役である。エンジンはただの鋳鉄の塊で、最高性能は受け持つが、道路を走る時はキャブレターの性能に依存する」という言葉をもらいました。

 

おススメ本

『理科年表』

国立天文台:編(丸善出版)

天文、気象、物理、化学、地学、生物、環境について収録。毎年更新され創刊より90冊目になります。新元素「ニホニウム」発見や人工知能が囲碁でプロ棋士に圧勝といった、その年の最新トピックスもわかります。

[出版社のサイトへ]

『元素図鑑 宇宙は92この元素でできている』

エイドリアン・ディングル 若林文高:監 池内恵:訳(主婦の友社)

周期表をベースにして物質を理解し、将来、ステンレス鋼や真鍮、金製品が何と何の合金なのか、製造業で禁止物質は何かといった事柄を理解する手助けになると思います。

[出版社のサイトへ]

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